赤ちゃんの時から息子のそばに、私には見えないお友達がいたようです。壁を見て泣く、誰もいない公園の砂場にバイバイする息子の不思議行動。はじめはゾッとしていた私ですが、徐々に息子を守ってくれているように感じていました。
「あれ?うちの子、何か見えてる?」
赤ちゃんの息子を抱っこしている時、ある決まった壁に近づくと息子の泣き声が絶叫になることに気づきました。「この子…何か見えてる?」と、ふと頭をよぎりました。
「赤ちゃんには大人に見えないものが見える」と、どこかで聞いたことを思い出しました。そして成長とともに、息子の不思議な能力がどんどん明らかになっていくのです。
部屋の角を指して笑ったり泣いたり。公園で遊んだ帰り、誰もいない砂場にバイバイする不思議行動が毎日のように繰り返します。
「やっぱり何か見えているのね」と、息子のことに多少興味もありました。
いつも近くにいる友達
幼児の息子は、1人で遊んでいる時、必ず向かいに誰かがいるような仕草をします。不思議行動に慣れた私でしたが、ある日息子がブロックを空中で引っ張り合って大泣きしている姿を見た時は、鳥肌が立ち背筋が凍りそうに。なんとか平静を装い、おやつの時間に息子から
「もうひとつね」と言われると2人分用意してテーブルに出していました。
息子が4歳になり話せるようになると、見えないお友達の名前をフルネームで教えてくれました。男の子で同じ年だという、その子はいつも息子と一緒のようでした。私はその子について息子にいろいろ尋ねましたが、あまり話してくれませんでした。その子との約束だったのかもしれません。
保育園に通うようになりクラスのお友達と息子が遊んだ日は、息子の持ち物が消える騒ぎがよくありました。先生達に捜索してもらい、何度も探したはずのところに後から見つかることも。
もしかしてと思い
「信じられない話ですが…」と、私が事情を話すと園長先生は
「たまにそういう子がいます。そのお友達が息子さんにヤキモチをやいているのですね」とあっさり。保育園ではあるある話でした。
ひとりっ子の息子が楽しそうに誰か(?)と会話しお絵かきや絵本を読んで過ごしている姿を見て、私は心配になりつつも、息子が守られている気分になるのでした。
成長とともに突然のさようなら
息子が小学生になっても、お友達は家によく来ていました。ただ、その子は学校の賑やかな空間が苦手だったようです。
「お友達、学校は?」と私が聞くと、息子は
「〇〇くんは学校に行くと耳が痛くなっちゃうから、家で勉強しているんだって」と言っていました。
わが家が転居した時もお友達は一緒に移動し、平日は夕方から、土日は1日中息子と一緒に過ごすことが続きました。しかし、息子に本当の友達ができた小学2年生頃から見えないお友達が来る回数が減っていきました。
週1から月1になり、数カ月来なかったある時、久しぶりに来て
「もう会えなくなりそう」とだけ言って来なくなったそうです。私は息子に「寂しくない?」と聞くと
「また会えるから」と息子は意外にも平気そう。大きくなって、どこかで会う約束をしたのかもしれません。
子どもの能力は科学では解明できない特別なものがあると聞いたことならあったものの、まさかわが子が…とはじめはゾッとしたものです。しかし、感覚的に息子を守ってくれているような気がして、不思議な安心感に変わりました。
いつか私がその子に会える時があるなら、8年近く息子のそばにいてくれて、ひとりっ子で寂しいはずの息子が楽しく過ごせたお礼を言いたいと思います。
(ファンファン福岡公式ライター/松永つむじ)