妊娠中の母親学級や助産師外来で母乳育児のメリットを知った私。内容を知れば知るほど「母乳で育てたい!」という気持ちが強くなっていったのですが、いざ産んでみると、思うように軌道に乗らず自信喪失に。あれほど楽しみにしていた授乳が苦痛になるほどの母乳育児ノイローゼになってしまったのです…。
初めての妊娠で不安がいっぱいだった私にとって、産院でおこなわれる母親学級や助産師外来は大きな楽しみでした。妊娠中の不安を直接ぶつけて解消できる機会でもあり、出産の方向性を示す羅針盤のようなものでもあったからです。 その母親学級や助産師外来で繰り返し聞かされていたのが、母乳育児のメリットについて。私の中にも、自然と「母乳で育てたい!」という気持ちが育ち、大きくなっていきました。
でも、いざ生まれてきた息子は吸う力がとても弱く、直接おっぱいから母乳を飲むことができませんでした。たくさんのお母さんがスムーズに授乳しているのを横目に、私は一人、搾った母乳を哺乳瓶に入れて飲ませていました。 もうちょっと力がつけば、直接飲めるようになるはず! と自分を奮い立たせ、搾乳に励む毎日でした。
息子の体重も少しずつ増え、そろそろおっぱいから母乳を飲ませたいと思い始めてきた頃。明らかに息子はおっぱいを、拒否するようになってきました。 哺乳瓶からはごくごく飲むのに、私のおっぱいにはそっぽを向いてしまう息子。授乳の度に、母親としての自分を否定されたような気がして、私はとても傷つきました。 そして、毎日のように気分の落ち込みが続き、気が付けば私はノイローゼ状態になってしまいました。
なんとか母乳を飲ませたいという気持ちが募り、「おっぱいからじゃなきゃ飲ませない!」と一日哺乳瓶の使用を止めてしまうなんて強引なことをしたり、
「なんで飲まないの!」と息子に声を荒げ、大泣きしたりもしていました。 飲まないのは、おっぱいが悪いせい?!と自分を責め、一筋の希望にすがろうとマッサージに通ったりもしました。 とにかく、一日中考えるのは授乳のことばかり。
「一度母乳を諦めてしまうと、もう二度と戻れない。だから頑張るしかない。」そんな強迫観念にも似たものに追いつめられていたのです。 でも、母乳育児を終えた今、振り返ってみると当時の私は焦り過ぎていたし、「母乳のみで育てる」ということにこだわり過ぎていたのだと思います。赤ちゃんの飲みやすさや、成長の早さを考えたら、無理をしすぎずミルクに頼っても良かったのかもしれません。
もちろん、母乳育児中もそんな考えが頭をよぎらなかった訳ではありません。むしろ、頭の中では理解できていても、理想を捨てるのに気持ちの上で大きな抵抗があったのです。 産後の不安定な時期は、なかなか自分で思いを修正できないものです。 もし、産前に経験者からのリアルなアドバイスを聞いていれば…。母親学級などで、母乳育児につまずいた時の対処法を聞いていれば…。 「こんなことは良くあること」と、もう少し余裕のある母乳育児をおこなえていたかもしれませんね。
(ファンファン福岡一般ライター)