娘は幼稚園の年長さん。私は幼稚園のお迎えの帰りに、かなり豪快に転倒したことがあります。その時痛がる私を見て、娘は意外な行動をとったのです。
マンションの入り口で悲劇が
幼稚園から帰宅した時のこと。娘を先に自転車からおろし、前かごから荷物を取っていると、娘がパーッと走り、マンションに向かって行ってしまいました。
あっという間に娘の姿は見えなくなり、私は焦りました。「短時間でも目を離せば、事故が起きるかもしれない!」そう思った私は荷物を抱え、慌てて後を追ったのですが… そこで悲劇は起こりました。
右手に娘の荷物、左手に自分の荷物を抱えていた私。マンションの正面玄関で待っていた娘の姿を確認した瞬間、たった3段の階段につまづき、転んでしまったのです!
両手がふさがっていた私は、手で体を支えることができず、階段の1段目に左膝を、2段目に右膝、3段目にはアゴを打ち付けました。走った勢いのまま転んだので衝撃はすさまじく、一瞬、意識が飛ぶかと思うくらい目の前が真っ白になりました。
娘も驚いたようで
「大丈夫!?」と叫び、すぐに駆け寄って来ました。
娘のなりきりナース
私がよろよろとエレベーター前に来ると、娘は
「見せて! どこが痛いの!?」と少し強めの口調で尋ねて来ました。娘の真剣な表情に、私は何とか
「膝が痛い…」と答え、どうにか自宅へ向かいます。娘は
「ママは痛いから、私が全部やってあげる!」と言い、玄関のドアを開け、部屋の電気も付けてくれました。普段は何もしない娘が自らテキパキと動きます。
部屋に到着するなり、私はリビング横の和室に倒れこみました。
しばらくして、自分の薄い水色のジャケット を来て現れた娘。その時の私は話す余裕もなく、されるがままです。娘は両膝とアゴを確認し、すぐにキッチンへ行きました。
保冷剤を持って来た娘は、相変わらずの真剣な表情で
「がまんして!」と言いながら膝に保冷剤を当ててくれたり、枕を寝室から持って来てくれたりと頼りになります。私は感動を覚えつつも、何もできない自分が情けなくなってしまいました。
保護者の立場が逆転?
翌日は痛みが残るものの、回復した私。昨日の衣装のことを尋ねると
「だって病院の人ってああいう服、着てるでしょ?」と、どうやら医師のマネだったようです。
「可愛いやつだなぁ」なんて微笑ましく思いながら、幼稚園へ向かおうとエレベーターをおりると、娘は思いもよらない行動をとりました。
「ママ、手!」と手をつなぐことを促し、さらには昨日転倒した階段を避け、スロープを通るように指示したのです。私は驚きましたが、娘は真剣です。
「こうすれば転ばないよ」と昨日とは違った優しい口調。それはまるで年下の小さい子の面倒を見ているようでした。
帰宅時にも勝手に走ることなく、私を待っています。
「ママ、ちゃんと手をつながなきゃダメ」と指導までするようになりました。手をつなぐのは、娘のためでなく私のためになったようです…。
娘は小さな「お母さん」
私が豪快に転んだことがきっかけで、娘に少し変化がありました。今までは自分中心で、何をするにもノロノロ。私に言われて渋々行動するだけだった娘が、人を思いやる気持ちや、自分自身がしっかりする、という責任感のようなものも芽生えたように思えます。
どっちが親なのかわからないくらい過剰なお世話に恥ずかしさもありますが、今では急に走ることもなくなったので、「まあ、いいか」としばらくは娘のやり方に乗っかることにしたのでした。
(ファンファン福岡公式ライター / kaeru)