福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。49回目はジュンク堂書店福岡店(福岡市中央区)の福田雄克さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
九州大学准教授がつづった昆虫図鑑の制作裏話
「[カラー版] 昆虫学者、奇跡の図鑑を作る」丸山宗利著
―こんにちは! 今回福田さんが紹介されるのはどんな本でしょうか。
丸山宗利さんの「[カラー版] 昆虫学者、奇跡の図鑑を作る」(2022年9月幻冬舎発行、1,320円、税込み)です。著者の丸山先生は九州大学総合研究博物館の准教授を務める昆虫学者です。この本では、生きた昆虫を撮影した珍しい昆虫図鑑「学研の図鑑 LIVE(ライブ)昆虫 新版」の制作秘話を紹介しています。
―この本と出合ったきっかけは。
もともと生き物や昆虫図鑑が好きで、丸山先生のことは以前から知っていました。書店で実施していたイベントでは丸山先生はもちろん、図鑑編集を務めた牧野嘉文さんから制作に関する話をいろいろと伺っていました。イベント時に昆虫図鑑の裏側をつづった本を出版するという話を聞き、ぜひ読んでみたいと手に取ったのがきっかけです。
―実際に読んでみた感想は。
「学研の図鑑 LIVE(ライブ)昆虫 新版」には、約2,800種もの昆虫が掲載され、その全てが“生きたまま”撮影されています。1年がかりで完成した昆虫図鑑の裏側は読者の想像を超えるもので、試行錯誤された撮影方法や丸山先生の強いこだわり、ピリつく制作現場…などが事細かに記されています。虫と格闘する大人たちの奮闘はもちろん、一冊の本が出来上がるまでの過程が本当に面白いです。
―「[カラー版] 昆虫学者、奇跡の図鑑を作る」の中で、特に気に入っているページはありますか。
ハエやオオセンチコガネ(フンコロガシの仲間)など、排泄物などに集まる虫も当然掲載されているのですが、その採集・撮影方法が書かれているページですね。仕掛けるトラップは自分のソレで現地調達したり、遠出に備えて冷凍庫に保存など、ディープな世界に読み入ってしまいました。
―どんな人にオススメしたいですか。
虫に興味がない人にこそ読んでもらいたいです。あとは、1つの本ができるまでの過程が記されているため、出版や編集関係に興味がある人にもオススメです。「学研の図鑑 LIVE(ライブ)昆虫 新版」と一緒に読んでもらうと、より楽しめると思いますよ。
―最後にジュンク堂書店福岡店について教えてください。
当店は、2001年11月にオープンし、2020年8月に天神西通りへ移転しました。現在約55万冊を取り扱い、一般コミックから専門書まで幅広く取りそろえています。その他、文房具や雑貨販売のほか、各種イベントも定期的に実施しています。
―ありがとうございました! 目次を見るだけで、読書欲がわく虫のドキュメンタリー。続けて話題の7冊を紹介します。
「幸福とは何ぞや」【中央公論新社】
佐藤愛子著/1,100円(税込み)
この秋、99歳を迎える佐藤愛子さん。「すべて成るようにしか成らん。不愉快なことや怒髪天をつくようなことがあってこそ、人生は面白い」。生きるとは、老いるとは、死とは、幸福とは。読めば力が湧く、愛子先生の痛快なメッセージが詰まった一冊!
「日本の高山植物 どうやって生きているの?」【光文社】
工藤岳著/1,320円(税込み)
乾燥、強風、のちに豪雪。過酷な環境に咲くかれんな高山植物には、したたかな生存戦略がありました。日本に生息する高山植物の起源をはじめ、色とりどりの花を咲かせる仕組みやマイナス196℃にも耐えうる防寒対策など、この道30年の植物学者が“高嶺の花”の秘密と魅力を余すところなくつづった話題作です。
「勘定侍 柳生真剣勝負〈六〉欺瞞」【小学館】
上田秀人著/770円(税込み)
一夜が居候する駿河屋総衛門のもとに淡海屋七右衛門から銘品の焼き物が届き、大坂一の商人からの謎かけを受けて立った総衛門は、焼き物を手に老中・堀田加賀守の屋敷へ向かいます。将軍家光が寵愛(ちょうあい)する柳生左門を巡り、主家にも命を狙われる羽目になった一夜は、敵味方の奇策が飛び交う中、秘かに旅支度を備えます。大車輪の第6弾です!
「はじめまして『痩せパン』です。」【青春出版社】
小野由紀子著/1,606円(税込み)
“3分こねるだけ、ほったらかしでOK♪”の「瘦せパン」なら、健康にも美容にも効果大!と本書。中には食べるだけで、1カ月で5キロ痩せた人もいるそうです。というのも、瘦せパンは低GI・食物繊維が豊富、なおかつダイエットに必要な栄養素がしっかりとれるのがすごいところ。パン作り初心者や“ズボラさん”でも失敗なく作れて、食べながら痩せられる「罪悪感ゼロ」のパンのレシピ本が完成しました!
「知りたいことがぜんぶわかる!つみたてNISA&iDeCoの超基本」【学研】
酒井富士子著/1,590円(税込み)
人生100年時代を見据え、ますます長期、積立、分散投資という流れは拡大していくことが予想されます。そこで、つみたてNISAとiDeCoの基礎知識から手続きの流れ、知っている人だけが得をするテクニック、商品選びまでを徹底解説! これ一冊で、初心者でも手軽に積み立て投資を始めることができます。
「駅の名は夜明 軌道春秋Ⅱ」【双葉社】
髙田郁著/792円(税込み)
我が子を失って冷え切った夫婦、イジメに遭い転校を決意した少女、離ればなれになった家族の再生を願う少年、妻の介護に疲れ死に場所を求めて旅に出る老夫婦、絶縁した父の余命を聞き故郷に戻る青年…鉄道を舞台にした感動の家族ドラマの最新作。時代小説の名手が贈る、苦難の時代に家族の絆に寄り添う9つの物語が収録されています。
「農家が教える 竹やぶ減らし」【農文協】
農文協編/1,760円(税込み)
各地で竹林が荒廃、拡大し、全国の竹林面積は約42万haになったと本書。獣害の温床にもなるため放置できません。幼竹を使ったメンマ(幼竹1本が1万8000円に)、ラクに根絶できる「竹の1m切り」成功のポイント、竹の暴走を防ぐ周囲1~2mの間引き、竹炭、竹パウダー、竹燃料、白子タケノコなど、竹林の整備・活用術が紹介されています。
いかがでしたか。今冬は暖かい室内で読書を楽しみませんか? 次回もお楽しみに。