幼稚園年長の息子と、親子遠足で動物園に行った時のことです。そこには観覧車がありました。乗りたそうなそぶりを見せる息子。しかし怖がりなこともあってなかなか一歩が踏み出せません。何とか乗った初の観覧車はちょっと笑える思い出となりました。
乗るの? 乗らないの?
息子が年長の頃、こども園の親子遠足で動物園に行った時のことです。動物園にはメリーゴーランドや観覧車など、遊戯施設が併設されていました。遠足は自由行動で、私、夫、息子、娘の4人で園内散策を楽しんでいました。動物を見ることにも飽きてきた頃、ちょうど遊戯コーナーに辿り着いたのです。
夫は、娘に手を引かれてメリーゴーランドに向かいました。息子は観覧車を見つめていたので
「乗りたいの?」と声をかけます。すると複雑そうな顔。息子は高い所が苦手で、今まで観覧車に乗ったことはありません。
いつもなら
「乗らない」と言ってすぐどこかに行ってしまうのですが、今回は少し違う様子です。息子の視線の先には同じ園の子たちが、家族と一緒に観覧車に乗り込んでいました。挑戦したいけど怖いのかな? と思い
「乗ってみよっか」と息子に提案します。
「でも落ちたら?」不安から息子の足はなかなか動きません。
「お母さんも乗ったことあるから大丈夫だよ!」
「たまたま大丈夫だったのかも」
「じゃあ乗らない?」
「えっと…」はっきりしない息子に、私もだんだんイライラしてきてしまいました。
「乗らないならもう行くよ」と言った時、観覧車に乗り終えた同じ園の子が
「息子くん、楽しかったよ! 乗りなよ」と言ってくれたのです。その言葉を聞くや否や、息子は
「お母さん乗ろう!」と私の手を引っ張りました。
初めての観覧車!
観覧車に乗り込み、私と息子は向かい合って座りました。緊張でカチコチに固まっている息子に外を見る余裕はありません。さっき私の手を引っ張った強さはどこへやら、今にも泣きそうな顔をしています。
「だんだん高くなってきたよ」笑顔の私とは正反対で
「それどころじゃない!」と息子は怒ったように言います。気を紛らわそうとスマホを向けて写真を撮ってみますが、息子は怯えた顔でこちらを見るばかりです。
何とか楽しんで欲しいと思い、外の景色を見ながら話しかけることに。
「あそこはサイがいたんじゃない?」観覧車からは園内がよく見渡せます。やっと息子はそろりそろりと視線を窓の外に向けました。
「あれ入り口のとこだよね!」外を見始めた息子は喋り出しました。
「あそこにいるのお友達かも」
「お弁当食べたのはあそこじゃない?」と言葉がするする出てきます。その顔からはいつの間にか恐怖が消えていました。
ついに頂上! 息子の表情は?
観覧車は安全だと認識したのでしょう。観覧車が頂上に到達する頃には、笑いながら外を見る余裕っぷり。 なんと笑顔でピースした写真を撮ることができました! 観覧車から降りた息子は
「もう1回乗ろう!」と言うので私は思わず吹き出しました。
時間の都合もあって再度乗れませんでしたが、観覧車はすっかり息子の好きな乗り物になったようです。
今でも写真を見返しては笑いがこみあげてきます。そこには泣きそうな息子の顔が、みるみる笑顔になる瞬間がおさめられています。
あの時、お友達の後押しもあり、観覧車に乗るという経験ができて本当によかったです。踏み出す勇気を与えるのも親の務めなんだなと改めて感じた一件となりました。これからも少しずつ背中を押しながら成長を見守りたいと思います。
(ファンファン福岡公式ライター / Sao)