娘は3歳の時に、夫の妹の結婚式でリングガールを務めたことがあります。たった1人で入場できるのか、大泣きするのではないか… そんな私の心配とは別のハプニングで、会場は笑いに包まれたのです。
リハーサル 上の空の娘
当時3歳の娘は日頃から落ち着きがなく、大人の指示を聞くことが苦手でした。義妹は、いつも娘を可愛がってくれていたので、どんな子か承知で任せてくれたのですが、果たして大事な指輪を持って歩けるのか、私は本当に不安でした。
ついに結婚式当日。挙式の直前に、歩く位置や速度、指輪の入ったケースの持ち方など、会場のスタッフから説明を受けながら、リハーサルが始まります。
出された指示は
「ケースは胸の前で両手に持ち、真ん中をゆっくり歩く」
「一番前まで行ったら、神父にケースを渡す」
「ゆっくりと歩いて2列目の端の席に座る」たったこれだけですが、娘はチャペルの華やかな雰囲気にルンルン気分でろくに聞いていません。
リハーサルは2回行いましたが、娘は
「うん、うん、わかった!」と適当に済ませているように私には見えました。
しかし、ここで泣き出されても困るので、強く𠮟ることもできず…。説明してくれたスタッフの人も、優しく対応してくれましたが、私は「ちゃんと話を聞いて!」と内心不安で仕方ありませんでした。
ついに挙式がはじまる
挙式の時間が迫り、私はチャペルに着席し、娘はドアの向こうでスタンバイ。離れ離れなので、私は会場内の誰よりも緊張していたと思います。
そして迎えた本番。ドアが開き、音楽が流れます。神父に続いて新郎が入場し、少し間を空けて娘の姿が見えました。
「来た!」と私はカメラを構えるのも忘れるほど大興奮。
予想外に、娘は堂々とした振る舞いです。笑顔でゆっくりと歩みを進めているではありませんか! 2人の結婚指輪もしっかりと胸の前で持っています。その時点で私は大号泣でした。
手がかかり、目が離せない娘が、たった1人で任務を遂行している姿に、会場の誰よりも先に涙を流してしまいました。
リングガールが指輪を渡したのは?
一番前まで進み、あとはリングケースを神父に渡しておしまい… その時です! なんと娘は満面の笑みで、新郎に渡そうとしました。差し出されても、新郎は受け取るわけにもいかず、戸惑いながら神父の方へさりげなく誘導。
会場内は一瞬静まったあと、どっと笑いが起こりました。
娘本人はまったく動じる様子はありませんでした。
「やり遂げた!」という満足そうな笑みで指定の2列目の席に戻るかと思いきや、そこでも間違えて最前列に座ろうとするので、慌てて私が連れ戻しました。
娘がもうひと笑い巻き起こしたことで「厳かな雰囲気を壊してしまった」と思い、私はさっきまでの涙がすっかり引っ込んでしまいました。
それでも、直後に花嫁が入場すると、父親から新郎へバトンタッチする場面で、みんなウルウルしていたので本当に良かったです。
娘を信じることも大切
式が終わると、参列者から
「リングガール最高に可愛かった!」
「さすが娘ちゃんだね。裏切らない!」と失敗も含めて褒めてもらえ、私はまた泣きそうに…。
娘も大役を務め上げ
「私が指輪を届けたんだよ!」と得意気でした。
私はそんな姿を見て、やる前から「できないだろう」と決めつけるのはよくないな、これからは色々なことに挑戦させよう、と反省。チャンスを与えてくれた義妹に感謝しました。
義妹の新しい門出と娘の成長に感動し、自分が結婚したときよりも、ずっと忘れられない結婚式になりました。
(ファンファン福岡公式ライター / kaeru)