年に一度の誕生日。プレゼントは値段ではなく気持ちの問題だと思っていても、恋人から何がもらえるのかな? とワクワクする方も多いのではないでしょうか。今回は、誕生日をきっかけに彼への愛が冷めたエピソードをお話しします。
金欠の彼氏
当時私は専門学校1年生。東京でひとり暮らしをしていました。同い年の彼は音楽の専門学校生。学校へは私の家が近いのでよく泊まりに来ていました。
私の誕生日を1カ月後に控えた8月のある日、とても申し訳なさそうな表情をした彼が言いました。
「最近バイトに行けなくてお金がないんだ。プレゼント、今年はなくていい?」少し残念に思いましたが、日ごろ忙しそうにしている彼の様子を見ていたので仕方ないと納得。
「いいよ! いつも忙しいもんね。気にしないで!」と笑顔で伝えました。
申し訳なさそうに謝る姿を見て、私はプレゼントなんて気持ちの問題だし、一緒にいてくれるだけで十分! と思っていました。
ベッドの上に置いてあったもの
それからしばらく経ち、誕生日が1週間後に迫ったある日。学校から帰った私は、目が点になりました。
ベッドの上にアダルトDVDが置いてあるのです。
彼は普段から整理整頓ができるタイプ。うっかり置き忘れていたようで、可愛い物が多い私の部屋ではとても浮いて見えました。恐る恐る手に取ってみると、レンタルショップのケースではありません。傷一つなく、新品のようでした。
男性は持っていても仕方ない。でも私の家に持ち込み、出しっぱなしにするのはデリカシーがないと怒りを覚えました。
しばらくして学校から帰ってきた彼に言いました。
「これ、ベッドの上にあったんだけど」
「あ…」彼の目が泳ぎ、慌て始めます。
「買ったの?」
「うん…」
「いつ?」
「昨日」
「昨日!?」プレゼントは気持ち。一緒にいてくれるだけで十分。自分から催促するものでもない…! そう思っていましたが、思わず
「プレゼントは買うお金がないと言って、アダルトDVDを買うお金はあるの!?」と怒ってしまいました。
レンタルならまだしも購入するの!? と信じられない気持ちでいっぱいです。彼は謝りながら
「大丈夫。プレゼントもちゃんと用意するから!」と言うので、ショックではありましたが、そんな彼の言葉を信じることにしました。
結局誕生日プレゼントは…
誕生日当日。いつも通りの夕飯を食べ終わったあと、彼はパソコンとマイクを用意しました。何が始まるんだろう? 期待と不安が入り混じったまま待っていると…
「俺からのプレゼント『ナツコへ』いつも迷惑かけてごめん♪ こんな俺と付き合ってくれてサンキュー♪」プレゼントは自作のラブソングでした。しかも彼、音痴なんです。
「君と出会ったのは高校生のとき~ 懐かしい~」
「いつも俺は君の味方、君は俺の味方さ~」曲は素敵でしたが、音程がとれていない歌声とセンスのない歌詞に、引きつった笑顔を向けるのが精一杯。5分ほどの時間が長く感じました。
「頑張って君を守るつもり~ でも俺のことも頼む~」なんとも頼りない終わり方で幕を閉じたラブソング。歌い切った彼はとても満足気。
私は必死に感想を考えました。
「すごく、素敵な“曲”だったよ…」なんとか絞り出した誉め言葉です。
「あ、曲は作曲ソフトに入ってたサンプル曲なんだ!」
唯一褒めるポイントだった曲は、彼が作ったものではなかったのです。アダルトDVDの購入をごまかすために、急遽用意されたようなプレゼント感が否めません。彼にとって私の誕生日はDVD以下だったんだな… と、気持ちがスッと冷めていくのを感じました。
それからは、ふとしたときに「この人は彼女のプレゼントより自分のアダルトDVDを買う男」と思ってしまったり、センスのないラブソングの歌詞が頭に残ってしまっていたりと、彼を生理的に受け付けなくなってしまいました…。
思い切って彼に
「別れたい」と伝えたところ、彼は取り乱し
「結婚しよう! 愛してる!」と言い出す始末。話が通じず自分に酔っている彼の姿を見て、私の“別れたい気持ち”は更に加速し、長い話し合いの末にお別れしました。
みなさんも一年に一度の大切な誕生日が、苦い思い出にならないようにお気をつけくださいね。
(ファンファン福岡公式ライター/さとう なつこ)