兄弟げんかはよくあるものの、大げんかまで発展することはそれほどありませんでした。ですが、この日のけんかはおさまらず…。怒った5歳の三男がふいに姿を消してしまい、ご近所さんを巻き込んで大騒動になったエピソードです。
けんかのきっかけはホットケーキ
休日の朝は、ホットケーキを焼くことが多いわが家。平日の朝のドタバタとは違い、予定のない日曜日の朝はのんびりできていいものです。この日の朝も、焼きたてのホットケーキで、のんびりと平和に過ごす予定でした。
「いただきまーす」の声が聞こえてから数秒後、
「それぼくの!」と怒る三男。
「早いもん勝ちだから、大きいの食っちゃうもんね」と弟をからかう7歳の次男。
この手のけんかの場合、たいていは三男が泣く泣くゆずって
「お母さんだっこ〜」と言って終わるのですが、この日は違いました。
「ずるい、ぼくのだったのに!」と、決死の覚悟をした表情で兄に向かっていく弟の姿。三男も兄と対等にけんかをするようになったんだな… と、そのやりとりを気長に見ていました。
しかし、弟の反撃が効いたようで、さっきまで笑っていた兄も次第に本気モードへ。しばらくたたきあいが続いた後、泣いて怒った弟がキッチンの扉を思い切り閉めて出ていきました。きっと、となりの部屋にいるとばかり思っていたのですが、数分後、弟のことが気になった様子で隣の部屋を見に行った次男が、
「あれ? 〇〇部屋にいないよ?」と、不安げな顔。
三男の捜索開始
のんびりと平和な朝食は、あっという間に終了しました。
「どこに行っちゃったんだろう?」と、子どもたちと家中を捜したものの、見つかりません。
「もしかしたら外へ行っちゃったんじゃない?」という長男の言葉に、それまでは気長に見ていた私も、一気に不安が押し寄せてきました。夫と子どもたち、同居している祖母も加わり三男を捜しに外へ出ました。
「おーい、〇〇〜」と大きな声で呼んでいると、日曜の朝ということもあり、ガーデニングをしていたお隣の家の旦那さんや、少し離れた家のご夫婦も一緒に捜してくれました。5歳の子どもが行ける範囲は? と考えても、全く思い付かず、焦ってしまい冷静に考えることができません。
「本当にどこへ行っちゃったんだろう…」時間が少しずつ経過する度に、「交通事故… まさか誘拐?」と、不安が大きくなっていきます。
まさかの場所で発見!
そんな矢先、わが家の窓から夫の大きな声が。
「〇〇見つかったよ!!」その声に、思わず大きなため息と例えようのない安堵感。離れた場所で捜してくださっていたご近所の方にもお伝えし、急いで家に戻ると、恥ずかしそうに、モジモジと夫に抱っこされている三男。
「あ〜 無事でよかった!」と、息子にかけ寄りほっぺたにすりすり。順々に家に飛び込んできた兄たちや祖母も
「良かった、本当に良かった!」と歓喜の声。
「それで、どこに居たの?」と聞くと、夫が笑いながら指差したのは… なんと家の押し入れの中。
「ええ〜〜! 家に居たんかーい!」と家族から総ツッコミの嵐。
「だって、ぼくはここに居たのに、みんが外に行っちゃったんだもん」と、小さい声ではにかみながら言う三男に、
「うん、たしかに」と苦笑い。夫は、やっぱり家に息子がいるのではないかと引き返して、息子を捜し出したのでした。
「はい、これ」と、次男がちょっと照れたように差し出したホットケーキを、
「うん」といって受け取った三男の顔は、どこか誇らしげでした。この日から数日間(だけ)兄弟げんかがなくなりました。三男の家出(したと勘違い)騒動の件であらためて、平凡で普通の日常が、いかに幸せであるかを感じた次第でした。
(ファンファン福岡公式ライター/モモ☆タロー)