皆さんのご実家は都会でしょうか、田舎でしょうか? どちらも良し悪しありますが、今回は都会出身の母親が義実家の田舎独特の洗礼を受け、耐えきれず別居となってしまったお話をさせていただきます。
都会育ちで楽しく過ごしてきた母
私の母親は都会の小中学校で過ごしたため、田舎の独特な近所付き合いには無知でした。対して父親は、田舎生まれ田舎育ちで、都会のことは無知なうえ田舎にはないきらびやかな雰囲気に抵抗感があったそうです。
元々両親は結婚後アパートに住んでいましたが、私を含め兄弟3人が生まれ、賃貸では手狭で生活が苦しく、父方の実家で祖父母と一緒に暮らすようになったそうです。それまで母はストレスなく楽しく過ごしていましたが、義実家での田舎生活により衝撃を受けることになります。
祖父母との同居生活が始まると…
3兄弟の末っ子だった私が生まれてすぐ実家に入り、同居生活がスタート。当初は父方の祖父母もウェルカムな状態のため、私たち兄弟は楽しく毎日を過ごしていました。しかし、実は母は多くのストレスを感じていたようです。
まず直面した問題は、定番の嫁姑問題でした。
生活していく中で次第に「料理の品数が少ない」「味付けが濃い」などで母と祖母の衝突が多くなります。しかし、2世帯住宅のため、衝突が起きてもずっと顔を合わせなくてもよく… 次の日にはいつも通りの生活に、と長引かなかったことが一つの救いでした。
次の問題は田舎独特の距離感でした。
父が育った田舎は、良くも悪くも近所付き合いが多いです。私たち子どもは、気にせず近所のおじさんやおばさんと話をしますが、元々引っ込み思案でもあった都会育ちの母は、必要な会話以外はしないように… と抵抗感丸出しでした。しかし、田舎のご近所さんは気にせず家の中へ入ってきます。極端な話、鍵が開いていれば入っても良いという意識です。
家主が食事中でも、
「話すことがあるから上がるよー」と言いながら勝手に家の中へ入ってきます。さらには、入浴中、就寝前に来ることもしばしば。そんな状況に、母はとことん嫌気がさしていました。
私も大人になった今では異常だと感じます。そして、母が別居を決意する決定的なことが起こりました。
限界を感じた母の決断
ある朝、私が中学校へ通学しようとする前に夫婦喧嘩が起きました。寝起きの私の前で、母と父が珍しく口論をしています。
実は、昨日はご近所さんらが朝から夜までひっきりなしに家を訪れ、一日中相手をしなければならなかったうえ、祖父母からは料理の味付けを指摘されるなど母にとっては特に最悪な一日であったよう…。そのストレスが爆発し口論に至ったようです。
口論が終わってすぐ、母はとても悲しげな表情で
「ごめんね… もう一緒にいられないかもしれない」と言い残し外に出ていきました。私は状況がよく分からないまま学校に行きました。
しかし、その後家に帰ると、いつも家にいる母はいません。翌日、その翌日と母は帰ってこず、食事も祖母が作る日が続きました。一番下の弟である私自身に察せられないように、兄弟や父、祖父母はいつも通りの会話をしていましたが、明らかに違う悲しげな雰囲気を感じ「そうか、これが別居か…」と、私は子どもながら気づき悲しみを覚えました。
結果として母は、嫁姑問題はもとよりプライベートのない毎日に嫌気がさしたうえ、母の愚痴を聞き流すばかりの父との喧嘩により別居を決断したようです。そして、10年以上経った今も母と父の別居は続いています。
もし、私に家族ができて家族の暮らしを選ぶとしたら、少なくとも近所との距離感が近すぎるところは選択しないでしょう。皆さんも、住む場所は家族間での十分な話し合いののち、決断することをお勧めします。
(ファンファン福岡公式ライター/中山達也)