生前の記憶を持っている人が稀に存在するという話を聞きますが、物心つく前の子どもにはそういった記憶が残っている場合があるそうです。今回は、息子が3歳のときに話してくれた不思議な胎内記憶についてお話しします。
息子の「生まれる前の記憶」
胎内記憶とは、子どもが持つ、母親のお腹の中にいたときの記憶です。私は育児雑誌で「2~3歳の子どもは、お腹にいた頃の記憶を覚えている場合がある」と読み、「胎内記憶」という言葉を知りました。
当時、息子は3歳になったばかり。不明瞭な発声もありますが、本人は伝えたいことを言葉にでき、こちらの言葉も理解できるため、会話がきちんと成り立ちます。胎内記憶に興味を持った私は、息子に尋ねてみました。
「お腹にいたときのことって覚えてる?」息子は、遊ぶ手を止めて
「おぼえてるよ」と答えます。私は気持ちが高ぶりました。息子に聞いてみたものの、胎内記憶という存在自体が半信半疑だったのです。息子は、身振り手振りをまじえ、教えてくれました。
「真っ暗でね、これくらいせまいところにいたんだよ」小さな手は、サッカーボールくらいの大きさを作っています。私が
「暗いところにいたんだね」と相槌を打つと、
「うん」と頷いた息子の口から未知の話が飛び出しました。
「暗くてこわくて、はやく出たかったの。そしたらママに呼ばれて、うれしかったからたくさん動いたんだ」
話を聞き、私はハッとしました。息子の言葉に、思い当たる節があったのです。
妊娠中に話しかけた言葉
妊娠30週目まで、息子は逆子でした。逆子のままであれば、帝王切開での分娩になります。自然分娩を希望していた私は「頭が下になればいいなあ」という気持ちを込めて、
「いっぱい動いてね」とお腹に呼びかけていました。その他にも
「早く会いたいね」
「あなたの名前は○○っていうんだよ」と、毎日話しかけ、息子に会える日を心待ちにしていました。
32週目の検診時、息子の頭はようやく下になりました。逆子が治って、以降は逆さになっていません。私は希望通り、自然分娩で出産しました。胎児は、24週を過ぎると「暗い・明るい」が分かるようになったり、物事を記憶できるようになったりするそうです。
息子の話にあった「暗い場所」「ママに呼ばれた」「たくさん動いた」という記憶は、納得できる内容です。
胎内記憶をスラスラ話す息子に、作り話をしている感じはありませんでした。そもそも物語を作って話せるほど、息子の言語能力は発達していませんし…。私は、半信半疑だった「胎内記憶」の存在を信じたくなりました。自分の言葉がお腹の中に届き、息子が頑張って動いてくれたから逆子が治ったのではないか。もし本当にそうだったら素敵です。お腹にいるときの息子の頑張りに、心がじわりと温かくなりました。
忘れた記憶と変わらない一面
胎内記憶は、子どもが4~5歳で忘れてしまう場合が多いそうです。
また、何度も聞くと子ども自身が記憶に肉付けをする場合もあるそうなので、1回だけ尋ねてみるのがよいと聞きます。
息子が5歳になった頃、ふと胎内記憶の話を思い出し「お腹の中にいたときのことって覚えてる?」と、尋ねてみました。息子は
「うーん、わからない」と首を傾げます。3歳の頃、スラスラ話していたのが嘘のようです。
「暗い所が怖かったんだって。早く出たくていっぱい動いたらしいよ」私がそう伝えると、息子は
「えー!? ほんとに!?」と驚いていました。息子の場合も、5歳になると胎内記憶を忘れていました。
けれど、成長してもお腹の中にいた頃と同じくらい頑張り屋です。
例えば、「お休みの日は家の床拭きを手伝う」と、お手伝いノルマを息子自身で決め、守っています。
私が
「ありがとう! 助かったよ」と声をかけると、
「また明日も手伝うね!」とやる気をみなぎらせ、頑張ってくれるのです。
お腹の中にいたときも声援を受けて逆子を治してくれた息子ですから、これからも努力を忘れず、いろいろなことにチャレンジして欲しいと思います。
みなさんもぜひ、子どもが話せるようになったら「お腹の中にいたときのことって覚えてる?」と、聞いてみてください。
親子の絆を実感できる貴重な話が飛び出すかもしれません。
(ファンファン福岡公式ライター/芦谷)