福岡市を拠点にするアイドルグループ「MAGICAL SPEC」(マジカルスペック、以下マジスペ)が2月25日にDRUM LOGOS(ドラムロゴス 福岡市中央区)で2周年記念ライブ「SECOND MSGICAL SPEC」を開催しました。結成以来、グループの顔、センターとしてグループを引っ張ってきたSORA(藤松宙愛)さんの卒業ライブも兼ねたグループのマイルストーンとなるライブ。これからのマジスペはどうなるのかにも関心が集まります。当日の様子に加え2月21日付の西日本新聞夕刊(佐賀、長崎、熊本、大分4県は22日付朝刊)に掲載したSORAさんのインタビュー記事からあふれた内容や関係者への書面インタビューを含めレポートします。
「アイドル藤松宙愛」有終の美
オープニングSEにのせた各メンバーの切れのあるダンスに続き「Sparkling」でスタートしたライブは、観客の声出しが解禁されたこともあり会場のボルテージが一気に上昇。メンバーカラーのペンライトやサイリウムの光が非日常の空間を出現させました。ステージ後方に組まれた階段状のセットや凝った照明による派手な演出は、メンバーのパフォーマンスを引き立て、メンバーもそれに呼応するかのように躍動、熱がこもったパフォーマンスを見せてくれました。
本編終了後、SORAさんがワインレッドのドレス姿でステージに登場。自らが作詞をした「HAPPY SMILE」をソロで切々と歌い上げ、卒業セレモニーがスタート。関係者などの祝福を受けた後、「マジスペに残していく、6人の最後の思い出」として新曲「ねぇ。」をメンバーとともに感情豊かに披露しました。
アンコールで再びステージに戻った6人は「HAPPY SMILE」(スペシャルバージョン)を熱唱。SORAさんがセンターを務めたマジスペと「アイドル藤松宙愛」の最後を締めくくりました。1人ステージに残ったSORAさんが「6年間たくさん支えてくれてありがとう」と告げステージを去るとイメージ映像に続き、新たなオープニングSEにのせて2期生のANNAさんを加えた新衣装姿の新体制6人がステージに登場。新曲「こんきゃっとねーしょん」を披露し3年目が始動しました。全国7カ所計9公演のマジスペ初のツアー「こんぐらっちゅねーしょん」も発表。「この6人で駆け抜けていきます」とリーダーKOTONEさんが力強く宣言し、全16曲約130分のライブを締めくくりました。
魅せた1年の成長
今回のライブで印象的だったのは各メンバーの自信にあふれたパフォーマンスです。1周年記念ライブでは「一生懸命さ」が前面に出ているのが好印象でしたが、裏を返せば余裕はなかったとも言えます。今回は歌唱やフォーメーション、表情の作り方などに長足の進歩を見せ、どこか「安心感」さえありました。
リーダーのKOTONEさんは「この1年で成長したのはパフォーマンス力と団結力です。1曲1曲の表現や振りを意識しながら練習してきました。精神面も強くなったと思っています」と答えてくれました。
その成長を引っ張ってきたのはセンターのSORAさんでした。これまでの取材でもSORAさんが時に厳しくメンバーに奮起を促す姿がありました。
「メンバーはみんな優しくていい子なのですが、当初は『SORAさんがいるから大丈夫』と私頼みの空気もありました。撮影のため私がライブを欠席した時に『次(のライブ)はSORAさんが戻ってくるから今回はまあいいか』と思ってほしくはなかったのです。だから『私もいつ(グループから)いなくなるか分からないんだからね』とあえて危機感をあおっていました」
そう取材に答えたSORAさんは「もっと闘争心をむき出して『上のステージ』を目指してほしい。新しい6人はそれができるはずです」とエールを贈りました。
アイドルとして満点
マジスペにとってSORAさんはどんな存在だったのでしょうか。
サウンドプロデューサーの村カワ基成さんは「マジスペの楽曲にとって必要不可欠でした。メンバーは6人とも個性のある歌声ですが、素直でまっすぐなSORAさんの声があってバランスが取れていたと思います」と評価したうえで、「誰もが『美少女』と言うであろうルックスと、愛されることを躊躇しない強さを持っている、アイドルとして満点の存在」と振り返りました。
リーダーのKOTONEさんは女性エンターテインメントユニット「トキヲイキル」から約6年、SORAさんと共に走り続け、2人にはユニット曲「君は最高!」もあります。「常に先頭を走ってマジスペを引っ張ってもらいました」と振り返ります。
ではSORAさんにとってのマジスペは?
SORAさんは当初、グループに加わるつもりはなかったといいます。「歌うのも踊るのも好きでしたが、ライブ活動で(俳優として)オーディションに参加する機会が減ることが嫌だった」SORAさんは結局、プロデューサーの熱意に押される形で参加を承諾したそうです。それからは「最後のアイドル活動と決めたからこそマジスペに全身全霊を傾けました」とし、「『HAPPY SMILE』を作詞したのはそんな自分の思いを形にするためでした」と答えました。そして気がつけば「等身大の素の自分でいられる『かけがえのない場所』になりました。それはこれからも変わらないと思います」。
マジスペにとってもSORAさんにとっても、お互いが必要不可欠な存在だったことがうかがえます。
「ここが新たなスタートライン」
それでもお互いに別れを決断し受け入れました。
「上り調子のマジスペの一員としてみんなと一緒に頂点に駆け上りたい。でも俳優としてのチャンスを逃したくはない。そのジレンマで体調を崩すほどでした」と卒業を決断する前の心境を話してくれたSORAさん。
「いま上京しなくちゃだめだ」とある日、パッとひらめき決意が固まったそうです。
卒業を発表して以来、「ファンの皆さんから熱くて、温かい言葉を沢山もらった」SORAさん。「『あの子知っている! ライブに行っていた!』と喜んでもらえる一流の俳優になります。ずっと『自慢の推し』で居続けるように頑張りますのでこれからも見守ってください」。
卒業するSORAさんへ向けて、ライブ中にメンバーそれぞれが思いを口にしました。最年長でボーカルの柱も担うMIHARUさんが語った「SORAさんを追い越せていない悔しさ、(SORAさんが)いなくなってマジスペがどうなってしまうのだろうと(不安に)思ってしまう(自分に対する)悔しさがあります。(ファンは)私たちにはもっともっと期待できるよ、マジスペは進化していくよ、と活動を通じて伝えていきたい」という思いはメンバー共通なのかもしれません。
リーダーのKOTONEさんは女性エンターテインメントユニット「トキヲイキル」から約6年間SORAさんと共に歩いてきました。セレモニーではSORAさんを感極まった様子で抱擁する場面も。「相方的な存在の宙愛ちゃんが次のステップへ進む姿を見送れる嬉しさと寂しさの中で、『これからのマジスペは任せて』という気持ちでした」と振り返ります。MCでも「(SORAさんがいなくなることで)乗り越えていかなきゃいけない壁がたくさん待ち構えている。でもファンの皆さんともっと素敵な景色を見たい」と力強く語りました。
新たな魅力発揮の予感
大沼智哉プロデューサーは「しばらくはセンターを置かない」としています。裏を返せば「次期センター獲得競争」が始まったということです。
不安と期待が入り交じりますが、マジスペは新たな形を見せてくれるはずです。新衣装はこれまでのサイバー感が強いデザインから、従来のイメージを残しながらもストリートのテイストも感じさせるものに変わりました。新曲「こんきゃっと~」は今までよりも「かわいらしさ」を強調しています。メンバーを見ればMIHARUさん、MOMOMIさん、RINKAさんは育成グループから培ってきたパフォーマンスに磨きをかけています。唯一、芸能未経験でグループに参加したHIMARIさんも今や堂々としたステージングと豊かな表情で多くの観客を魅了しています。何より、個性豊かなグループを陰日向にしっかりと束ね守ってきたKOTONEさんの存在は大きな安心材料です。お披露目ですでに確かなパフォーマンスを見せた新メンバーのANNAさんは3月10日、「IDORISE!! FESTIVAL 2023 前夜祭」(東京)で正式デビューしました。
新型コロナウイルス禍の最中に誕生し苦闘を続けたマジスペは、SORAさんの強い意思とカリスマ性をメインエンジンとして上昇軌道に乗りました。SORAさんが卒業し、これからどんな星になるのかは、今までの魅力を継承しながらも新体制が新たな輝きをどれだけ加えられるかにかかっています。
すでにSORAさんは東京での舞台と映画の出演が発表され、新たな挑戦を始めています。
マジスペと藤松宙愛さんという福岡発の二つの星が、まばゆい光を放つ「特別な新星」となる日が今から待ち遠しくて仕方ありません。
マジスペのファーストツアーは3月18日(土)にDRUM SON(福岡市)を皮切りに6月18日(日)のBEAT STATION(同)まで全国7カ所9公演。
3年目、「第2期」のマジスペの船出に注目です。
詳しくは公式サイトで確認を。