福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。54回目は丸善 博多店(福岡市博多区)の徳永圭子さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
徳永さんも寄稿! 全国の書店員18人がつづる“本屋という仕事”
「本屋という仕事」三砂慶明 編
―こんにちは! 今回徳永さんが紹介されるのはどんな本でしょうか。
梅田・蔦屋書店(大阪市北区)の書店員 三砂慶明さんが編集を務めた「本屋という仕事」(2022年6月世界思想社発行、1,870円、税込み)です。全国の書店員18人がさまざまな視点から本屋について書いていて、実は私もその中の一章を書かせていただきました。
―徳永さんはどんなことをテーマに書いたのでしょう?
「本のために働く人」「本屋に本を買いに来る人」「本のために集う人」といった「人」をテーマに書きました。お客様とスタッフの距離感や本を介したコミュニケーションとは何か、本というものを核にして集まってくる人たちの面白さなどについてつづっています。
―本を介したコミュニケーションとは具体的に?
私たちがこの仕事をすることにさまざま経緯があるように、お客様にも私たちからは見えない背景があると思います。本を求めてやってくるということは何か悩みや困っていること、資格を取るなど目標があるのかもしれません。その背景は私たちには見えませんが、そこを汲み取って品ぞろえをしています。これをコミュニケーションと呼ぶのかは分かりませんが、私たちが置いた本をお客様が黙って買っていくのもコミュニケーションと呼ぶのでないかと思っています。心を通わせる無言のコミュニケーションですね。
―この本をおすすめしたい人は?
本好きな人が読むと、本屋の裏側が分かって面白いと思います。活字離れといわれる中でも、あえてこの仕事を選んでいる人たちの考えや思いが何となく感じ取れると思うので。また、働く人の思いや姿勢なども詰まっているので、今の仕事に少し疑問を抱いている人にもおすすめです。
―「丸善 博多店」について教えてください。
当店は九州新幹線開業と同時にオープンしたので、今年で12年になります。取り扱い書籍数は約50万冊。児童書、雑誌、実用書、コミックなどなじみ深い書籍から、教育者・専門職の方の要望に応える専門書まで充実したラインアップとなっています。
―3月には「EHONS HAKATA」がオープンしたとか?
そうなんです!「EHONS」オリジナルグッズをはじめ、絵本のストーリーやキャラクターをモチーフにしたグッズを企画・販売しています。どのアイテムも大人が持って違和感のない作りや色味になっていて、海外観光客にも好評です。ただかわいいだけではなく、品質や使い勝手もいいので、ぜひ一度手に取ってみてもらいたいです。
―ありがとうございました。知られざる“本屋の世界”をのぞいてみたくなる一冊ですね。続いて話題の7冊を紹介します。
「安倍晋三 回顧録」【中央公論新社】
安倍晋三 著、橋本五郎、尾山宏 聞き手、北村滋 監修/1,980円(税込み)
あまりに機敏に触れると、一度は刊行が見送られた36時間の未公開インタビューを全て収録した一冊。日本の憲政史上最長の政権は、いかにして実現されたのか。その手の内のすべてを自ら総括した歴史的資料です。知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされます。
「90歳までに使い切る お金の賢い減らし方」【光文社】
大江英樹 著/924円(税込み)
「お金の本質」をつかんで、人生後半を豊かに生きませんか? お金よりも優先すべき時間、信用、健康、幸福感、あなたの「お金観」を根底から覆します。“老後不安”という「物語」、“貯める・増やす”という「呪縛」から解き放たれるための一冊。光文社新書「定年前、しなくていい5つのこと」が大ヒットした著者の最新刊です。
「小川さゆり、宗教2世」【小学館】
小川さゆり 著/1,650円(税込み)
信者である両親から会見の中止を迫られても屈せず、旧統一教会の解散を訴え続けてきた小川さゆりさん。彼女は0歳の子どもを育てる母親でありながら、懸命にこの手記を書き上げました。熱心な信者だった彼女はなぜ脱会し、どうやって新しい家族を手に入れたのか。全ての人に読んでほしい一冊です。
「『発達障害』と間違われる子どもたち」【青春出版社】
成田奈緒子 著/1,155円(税込み)
近年、急増中の発達障害。文部科学省の数字ではこの13年間で約10倍に増えています。ただ、35年にわたって子どもの脳・育ちに向き合ってきた著者は、増えているのは発達障害の子ではなく「発達障害もどき」ではないかと話します。臨床経験35年以上の小児科医が、増え続ける発達障害児の中にいる「発達障害もどき」について初めてまとめた一冊です。
「藤井弁当 お弁当はワンパターンでいい!」【学研】
藤井恵 著/1,320円(税込み)
25万部突破のお弁当本の大定番! 料理研究家の藤井恵さんが15年間お弁当を作り続けてたどりついた結論は「お弁当はワンパターンでいい」ということ。使うのは卵焼き器ひとつ、おかずは3品で使う食材も3つだけ。毎回同じ手順で作るから毎日ストレスなく続けられる。これからお弁当作りを始めるすべての人におすすめの一冊です。
「ここにあるはずだったんだけど」【双葉社】
佐々木愛 著/1,760円(税込み)
いつまでも小さく育たない胸に、どうしてこんなに悩んでいるのだろう。いくつ年を重ねても、いつも人生に自信を持てない。たかが胸なのに。されど、胸―。生きづらい世の中との隔たりをやわらかく溶かす珠玉の小胸小説。「ブラ男の告白」「EあるいはF」「授乳室荒らしの夢」「胸は育たない」の4編が収録されています。
「ほんとうのサステナビリティってなに? 食と農のSDGs」【農文協】
関根佳恵 編著/2,860円(税込み)
「テーマで探究 世界の食・農林漁業・環境」全3巻の一冊。日本の食卓の姿、農業や飲食の現場での働き方など、食べることや農業に関する「当たり前」を、もう一度問い直します。サステナブルな社会の実現につながるアイデアを、第一線で活躍する研究者たちがデータも交えて丁寧に解説。自ら探究し、考える一冊です。
いかがでしたか。若葉が芽吹くこの季節に、気になる本を手に取ってみては。次回もお楽しみに!