私は産まれてきたわが子を当時可愛いと思えませんでした。自己嫌悪と「でも母親って最初はみんなこんなものかもしれない」と言い聞かせてきたのですが、次第に芽生える違和感に心が追いつかなくなっていったのです。
わが子に会えた!
ほぼ予定日通りに安産で産まれたわが子。初めての自然分娩は想像を絶する痛みでした。この痛みを乗り越えたらやっとわが子に会える、早く会いたい! なんて思う余裕はなく、考えていたことは「早く終われ!!」のみでした。
「おめでとうございます!」の声とともに産声が上がりました。やった、やっと終わった。
赤ちゃんを連れてきてもらうと、そこには小さなおじいさんがいました。おじいさんやん…。と突っ込む余裕もなく、そのあとは泥のように眠りました。
ここでの感情はわが子に会えたというより「本当に人間が入っていた。人ってすごい!」でした。
翌日、助産師さんから母乳指導を受けます。手こずりながらいろんな体勢にしてみましたが、わが子は上手に吸えませんでした。隣には穏やかな表情で赤ちゃんを抱き、スキンシップをとりながら授乳するお母さんが座っています。
そのお母さんと自分のギャップに「人それぞれ」と感じる余裕はなく、複雑な気持ちに泣きそうになりました。
「あ、ほら吸えた吸えた! とっても上手よ」助産師さんのフォローもあってようやくわが子は母乳を飲み始めました。
「最初はみんなこんなものよ。お母さんの母乳が一番なんだからね」お母さんの母乳が一番。当たり前の言葉なのに、なぜか私の胸にズーンと重くのしかかる言葉でした。一生懸命吸いつくわが子を見ても可愛いと感じることはなく、まず先にきた感情は「違和感」でした。
授乳を喜んでするというより、決められた業務をこなす仕事のような、その仕事によって長い間縛られているような気持ちでした。でも自分の子どもなのにそう考えてしまうのは、あまりにも無責任だよね……と自分の心に蓋をしたのです。
止まらない涙
翌日、義父母がお見舞いに来てくれました。私も早くわが子を見てもらいたかったので、来てくれるのを楽しみに待っていました。
義母は
「お疲れ様! 大変だったね! うわちっちゃい、かわいい~」と、孫に会えて喜んでいました。しかしわが子は機嫌が悪いのか泣き止まず、だっこするとプーンとウンチの臭いがします。
おむつを替えるため、義父母には外で待っててもらうことに。たかがおむつ替えですが予想よりウンチがたくさん出ていて、暴れて泣きじゃくるわが子をなんとか押さえますが上手くいきません。手についたり、おしりふきを落としたり散々でした。焦る私に合わせるようにわが子の泣き声もだんだんと大きくなっていきます。
ただのおむつ替えなのに絶望的な気持ちになり、涙が止まらなくなってしまいました。義父母はおむつ替えの時の私の焦った表情を察知したのか「ゆっくり休んでね」というラインメッセージを残してそのまま帰っていきました。
まずは感情を受け入れて自分を守ること
義父母の訪問の翌日、夫に
「私、たぶん母性ないみたい…」と、電話で打ち明けました。ぽつっと言葉にした瞬間すこし心が楽になったのがわかりました。
この気持ちを一時の感情だと思っていたこと。
産むのを決意したのは自分なのに無責任だと思ったこと。
気持ちをごまかすほど辛いこと。
私がこんな気持ちでいることでわが子も辛いこと。
気持ちを整理しながら夫に伝えると、いつもと変わらないトーンで
「うーん、俺も母性とかはよくわからないよ。もし母乳がきついならミルクにしたっていい。これから2人で知っていけばよくない?」と言われ、一気に心が軽くなったのを覚えています。
いま思い返すとマタニティブルーも相当入っていたと思います。自分の心を否定しないで吐き出すのは、大事だなと感じました。
当時のわが子はもうすぐ小学生になります。母性があるのかは今もよくわかりませんが、わが子のすこしポッコリしてるお腹を見ると可愛いなあ… と感じます。
同じように母性が湧いているのかわからなくて悩んでいる人は、まず何でもいいので気持ちを吐き出してみてください。
最初は上手く伝えられなくても言葉に出すことで段々心が整理されてきます。ゆっくり自分の本音と向き合ってみてくださいね。
(ファンファン福岡公式ライター/萌井もい)