息子と遊びに行った、家の近くの小さな公園。そこは遊具の上でお菓子を広げる子どもたちと、おしゃべりに夢中なママ軍団に占領されていました。これは公園の隅でゲームをしていた中学生の男の子の、まっすぐで誠実な対応に、心を奪われたお話です。
近所の公園に遊びに
息子は当時3歳。公園が大好きで毎日いろんな公園へ遊びにいくのが、私たち親子の日課でした。家の周りには小さな公園がいくつかあり、その日は少し足を伸ばし複合遊具のある公園へいくことに。その公園にある、ロケットのような見た目の遊具が息子のお気に入りでした。
着いてみると、その公園が幼稚園バスの停留所の近くということもあり、幼稚園終わりの子どもたちと、お迎えに来たお母さんたちで賑わっていました。
公園に着いた息子は、早速お目当てのロケット型の遊具に向かって走り出しました。
遊具の中に入ろうとすると、中には7~8人ほどの子どもたちがぎっしり座っており、床には広げられたお菓子の数々…。入ろうにも、入れない、そんな状況でした。
息子が中に入ろうとすると、
「はいらないで!」と強く言われ、追い出されてしまいます。他にも入り口はあるものの、3歳の息子にはどれも難しくこの部分を通らないと、どうにもこうにも滑り台や、ゆらゆら揺れる橋にはたどり着けないのです。
しょんぼりした息子を見かねて
「少しだけ詰めて端っこを通らせてもらってもいいかな?」と私が聞いてみるも、
「だめ! あっちにいって!」と押し出されてしまいます。
「ここはみんなの場所だよ」と諭してみるも、声を揃えて
「だめ!」の一点張り。さてどうしようか、と困ってしまいました。
おしゃべりに夢中なママ軍団
この子たちのお母さんたちは一体何をしているのだろう… と目をやると、子どもたちを気遣う様子もなく、輪になっておしゃべりに夢中。子どものことは一切見ていないのです。
私の視線を感じたのかその中のママさん数人と時折目が合うものの、子どもを注意したりすることはなく、まさに我関せず状態でした。
ここでママたちの輪に入って、子どもを注意してほしいと伝えるか… と考えるも、なかなか勇気が出ない私。もしかして、息子も来年同じ幼稚園に通うことになるかもしれない、と思うと、下手にトラブルになりたくない、と言う思いがありました。
諦めて、今日はもう帰ろうか… と息子に声をかけようとしたその時です。公園の隅のベンチで、友人たちとゲームをしていた中学生の青年が颯爽とやってきたのです。
青年は子どもたちに向かって
「おいしそうなお菓子だね。でも、ここはお菓子を食べる場所ではないよ。食べたかったら、ベンチに座って食べよう!」と明るく声をかけたのです。
その突然の声かけに、遊具を占領していた子どもたちはびっくりしてポカーンとしています。すると
「兄ちゃんとどっちが早く行けるか競争しよう!」と青年はお菓子をまとめるのを手伝いながら、子どもたちをベンチに誘導したのです。
様子を見ていた息子に青年は
「遊具で遊んでいいよ!」と声をかけてくれたのです。遊具の中に入れた息子はにっこり。彼のおかげで、息子は遊具で遊ぶことができました。
ママ軍団にピシャリ
その様子を遠くから見ていた1人のママが
「ごめんなさいね〜!」と軽く一言。彼はそのママに目を向けると、
「遊具の上でお菓子を広げさせるのは非常識だと思います。ここはみんなの公園です。子どもをしっかり見てください。まわりに迷惑をかけていますよ。」とピシャリ。
そう言うと青年は颯爽と元いたベンチに戻っていきました。
中学生の青年に真正面から怒られたママたちは、驚き声が出ない様子。後ろにいたママたちも、とてもバツが悪そうでした。
突然現れた青年の見事な神対応に私もびっくり。大人も子どもも関係なく、真正面からしっかりと自分の意見を言う姿に、感銘を受けました。
そしてなによりも自分の体裁を気にして何も言わずに帰ろうとした自分が、とても恥ずかしく感じました。
息子は、お兄さんの姿がとても印象的だったようで、帰り道もずっと
「おにいさんかっこよかったね、スーパーヒーローみたいだったね」と言っていました。私も現実にスーパーヒーローがいるなら、彼しかいないなと感じるような出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/ツナ子丸)