味の素の魔法 「ラーメン屋のせがれ」第16回

 ラーメン好きのみなさん、こんにちは。と書いたものの、中にはラーメン好きでない方もいらっしゃるかもしれませんが。うちの父親がラーメンに全く興味が無い人であることは以前書きましたっけ。いずれ、そのことにも少し詳しく触れたいと思います。

 さて、今回はズバリ「味の素」の話です。ある意味ラーメンには欠かせない存在であり、かつては多くの家庭の食卓にて、しょうゆやソース以上の存在感を発揮した調味料です。

 子どもの頃、「味の素を食べると頭が良くなる」とか「味の素は、びんの注ぎ口の穴を大きくしたら、かけやすくなって売上げが爆発的に伸びた」みたいな話を家で聞かされました。

 今は、味の素のびんは昔ほど家庭で見かけなくなったように思いますが、わが家には変わらず、ドンと置いてあります。

 みそ汁などに少し入れると格段にうまくなる、というので、ちょいちょい実践してます。たしかに味にうま味が増すような気がします。

 さて、ラーメンです。うちの父親は小さじ2杯、たっぷりと味の素をどんぶりにぶち込んで、そこにたれとスープを注いでました。

 カウンターの中の小さい厨房での作業なので、お客さんからまる見えです。隠すつもりもありません。

 なのに、ネットのグルメサイトにこんな↓投稿が。

 お店のファンと思しき方の愛情あふれる内容に感謝でありますが、「(確認済)」とはいったい。父も母もそんなこと言わないと思いますが。言ったとしたら、ウソだし。

 味の素と関係ありませんが、頭の2行もかなり大げさです。零細なので、仕入れる麺の数も少なく、早めに無くなることもたまにある、という程度の話です。まして、常連だけ相手にしていたら、たちまち潰れて一家離散していました。

 かつては「化学調味料」という呼び方が一般的だった味の素などの調味料。他に「ハイミー」や「いの一番」などあります。上の成分表示を見てもわかるように、「うま味調味料」と表記されるようになっています。

 なのに、「無化調(=化学調味料無し)」という言い方がよくされるのはなぜでしょう。メーカーの方は「違う」と抗議してしかるべきとも思いますが。

 それはさておいて、うちの父は、「味の素を入れんと(うちの)ラーメンの味は完成せん」と断言してました。無農薬や自然食品に詳しい友人を店に連れて行った際、彼が「味の素を入れんやったら、どげんなるとですか?」と聞いただけで、苦い顔をして黙り込んでました。

 が、その後私が「試しに味の素入れんで作ってよ」と言って食べてみたら、そんな味が落ちた気もしなかったんで、その後店閉じるまでずっと、「無化調」で通しました。うちのラーメンはただでさえ塩からいので、それが緩和される効果もありました。

 しかしながら、そんな食べ方をするのは私だけで、店のお客さんは毎回小さじ2杯の味の素とともにラーメンをかき込んでいたわけです。まあ、スープは飲み干さない人がほとんどですが。

 それにしても43年間の営業で消費した味の素はペイペイドーム十個分くらいにはなったかもしれません。店には、九州一味の素を販売するという食品問屋(父談)のカレンダーがいつもかかっていました。消費者向けの食品も製造販売しているので、福岡の人なら誰もが知っている会社です。福岡の大半のラーメン屋さんが、そこから味の素などの食材を仕入れているものと思われます。

 前も書いたように、あんまりラーメンを外食しない私ですが、たまに気になったお店を試しに行きます。で、当地では少ないみそラーメンとしょうゆラーメンで1軒ずつ、スープにまるでコクが感じられないお店がありました。麺とか、チャーシューなどの具材にはかなり注力している様子ですが、肝心のスープがおいしくない。色のついたお湯みたいな感じです。推測ですが、おそらく無化調ではないかと。でも、コクの無さは絶対そのせいではありません。それ以前にちゃんと「だし」が取れてないんだと思います。(多分)無化調にするくらいのこだわりを持つなら、まずしっかりスープに味を付けましょうよ、と言いたくなりました。

 多くのラーメン屋さんが、魔法の調味料の力を信じ、きょうもせっせと投入しています。街はずれに移転しても行列の絶えないあの人気店も「味の素味」を堂々貫いてお客さんを離しません。どなたか勇気のある方、「無化調で作って下さい」とトライしてみて、感想を食べログに上げてみませんか。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

米国の本家と同い年のシニアブロガー。毎晩長いときは30分に及ぶ歯磨きを欠かさない。最近覚えたメルカリへの出品にはまっている。
17年乗った作業用の軽トラックをカッコいいカーキ色の新車に買い替えた。

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