明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」終了時に多くの方からいただいた「続きが読みたい」の声にお応えした第2シリーズです。
「祖母が語った不思議な話」も連載開始からもう三年、何度も繰り返し読んでくださる方も増え、たくさんの励ましの声もいただき、正・續編合わせて百五十話を超えることができた。
妙な偶然が考えられない確率で起きる、話の舞台となった場所に確認に行くと奇妙な写真が撮れる…この連載を始めてからこのような出来事もかなり増えた。
今年の夏も“怪を語れば怪至る”を実感することがあったので話そうと思う。
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八月の日曜日、次の話を書こうと構成を考えていた。
暑い暑い夜、かなり遅い時間だったということもあり、そのまま机につっぷして眠ってしまった。
そして夢を見た。
大きくて古いお寺の廊下を歩いている。
何か用があったような気がするが思い出せない。
ただ、「急がなければ」と強く感じ足早に進む。
足元は薄暗くなんだかふわふわしているのが妙に心地よい。
外からはぱらぱらと雨音がきこえる。
庭に目を向けるが誰もいない。
廊下は長く、そのずっと先にちらちらと明かりが瞬いている。
「ここ、昔来たことがある?」そう思いながら進んでいると、横の障子が開き人影が飛び出した。
昔風の格好をした十歳くらいの女の子だった。
着物が鮮やかだなと思った記憶はあるが、なぜかその色は覚えていない。
その子は前に回ると首を振りながら懸命に何かを訴えているが声が聞こえない。
「あお、あめ」
口の動きからはそう言ってるように思えた。
「青…雨?」
聞き返そうと思ったところで目が覚めた。
ひどく寝汗をかいていた。
翌日、話を書きイラストを描いた。
週末にそれが公開されると同時にひどい熱が出た。
這うように病院に行き各種検査を受けたが該当する病気はなく、感染症だろうという診断だった。
数日間過ぎても熱が引かなかったため、再度病院を訪ねた。
「う〜ん、三年前にも同じ症状がありましたね」
カルテを見ながら医師が言う。
熱にうかされた頭に引っかかるものがあった。
「それはいつか正確に分かりますか?」と尋ねるとすぐに十一月二十日という答えが返ってきた。
家に帰り着くなりパソコンを立ち上げ、連載の管理ページを開いた。
三年前と今回…共通点があった。
ぞっとした。
どちらも同じ「ある函」に関する話を書いた直後に体調を崩している。
そして気が付いた。
「あれは、あの夢はおばあちゃんからの警告だ。『あお、あめ』じゃなく『函、駄目』だったんだ!」
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その後、嘘のように熱は引き命拾いした。
が、今悩んでいることが一つある。
…実はあの「函」に関する話はまだあるのだ。
続きを書くか、封印するか…
もしあなただったら、どうしますか?
チョコ太郎より
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