5歳・7歳の息子を持つママライター、永野栄里子です。
「寝る子は育つ」ということわざがありますが、子どもの睡眠不足はさまざまな影響を及ぼす可能性があるため、じゅうぶんな睡眠時間を確保する必要があります。小学生の場合、理想的な寝る時間はどのくらいなのでしょうか?
今回は、小学生の睡眠時間に関するさまざまな情報をお届けします。布団に入って寝る時間や、保護者が注意したいポイントもまとめていますので、子どもの眠りについて家族で考えるきっかけになれば幸いです。
小学生の睡眠時間はどれくらい?理想の睡眠時間は?
まずは小学生が日々何時間寝ればよいのかという目安と、実際の睡眠時間を見てみましょう。
平均睡眠時間は8時間半程度
学研教育総合研究所の「小学生白書30年史(1989~2019年)」によると、2019年の小学生の平均睡眠時間は8時間57分でした。
1989年の平均睡眠時間は9時間28分だったので、この30年で小学生の平均睡眠時間は30分ほど短くなっていることがわかります。
また、ベネッセのコラムでは、内閣府の「平成27年度版子供・若者白書」(現在は削除済み)から、小学生(10歳以上)の睡眠時間は8時間41分であると記載しており、前述の学研総合研究所の調査よりも短い結果でした。
さまざまなデータを見てみると、低学年のほうが睡眠時間が長く、学年が上がるにつれて睡眠時間が減る傾向にあることもわかっています。
理想的な睡眠時間は9~12時間
日本の小学生の睡眠時間は8時間半から9時間弱ですが、小学生の理想的な睡眠時間はどれくらいなのでしょうか。
アメリカの国立睡眠財団によると、6~13歳の子どもの睡眠時間は9~11時間必要です。また、イギリスの国民健康サービスは、6~12歳の子どもに推奨する睡眠時間を、9~12時間としています。
睡眠障害などにも対応する、岐阜県の阪野クリニックのコラムでも、睡眠専門医が9時間の睡眠時間を確保することを推奨しているので、小学生最低でも9時間は睡眠時間をとれるようなリズムを作るとよいでしょう。
最低でも8時間の睡眠が推奨されている
前述のアメリカの国立睡眠財団は、9~11時間の睡眠時間を理想としながらも、最短睡眠時間は7~8時間という見解も示しています。
昨今は共働き世帯の増加や習い事などで、忙しい毎日を送る大人も子どもも少なくありません。学校に行く日は起床時間を大きく変えることができないため、就寝時間を早めることでしか睡眠時間を確保できませんが、寝る時間が遅くなってしまうこともあります。
9時間睡眠を実現するのが難しい場合も、小学生は平均して8時間以上は寝られるようにしましょう。
小学生白書30年史 https://www.gakken.jp/kyouikusouken/whitepaper/30history/chapter2/08.html
どのくらいの睡眠時間が理想であるか知りたい方へ https://banno-clinic.biz/elementary-school-children-sleep/
National Sleep Foundation https://www.thensf.org/how-many-hours-of-sleep-do-you-really-need/
NHS https://www.babycentre.co.uk/a7682/establishing-good-sleep-habits-12-to-18-months
小学生が寝る時間は何時?
小学生の睡眠時間は「何時間寝るか」だけでなく「何時に寝るか」も重要です。続いて、小学生の就寝時間について解説します。
平均就寝時間は21時42分
学研総合研究所「小学生白書Web版」の2022年9月の調査によると、小学生の平均就寝時刻は21時42分でした。
同調査によると起床時刻の平均は6時36分で、起床時刻と就寝時刻から割り出せる平均睡眠時間は8時間54分。「寝る時間」が完全就寝なのか布団に入る時間かは定かではありませんが、やはり理想的な睡眠時間といわれる9時間に、多くの小学生が届いていないことがわかります。
学年が上がるにつれ就寝時間は遅くなる
起床時間は学年による差があまりない一方で、就寝時間は学年が上がるにつれて遅くなる傾向にあります。前項の表を見ると、小学1年生(平均就寝時刻21時17分)と小学6年生(22時12分)では、1時間近くも就寝時間が異なります。
学年が上がると体力がついてきて夜遅くまで起きていられることはもちろん、学研総合研究所は習い事の時間が遅くなることや通信機器の使用率が上がることも、この結果に関係しているのではないかと分析しています。
8年前の調査よりも早い結果に
2014年「小学生白書Web版」の調査では、当時の小学生の平均就寝時刻は21時49分でした。
全体では2022年のほうが7分早く、学年別に見ても小学2年生を除いて2022年のほうが平均就寝時刻が早まっています。コロナ禍なども影響している可能性がありますが、子どもの成長と睡眠の関係性について考える保護者が増加しているのも、就寝時刻が早まる要因ではないでしょうか
21時半までに寝るのが理想
前述の通り、小学生の平均起床時間は6時36分です(2022年「小学生白書Web版」より)。6時半過ぎに起きる子どもが9時間睡眠を実現するためには、21時半までに寝るのが理想だといえます。
可能であれば21時半には完全に眠れるよう、21時を目標に布団に入るとよいでしょう。家庭の事情や習い事で難しい場合も、22時には完全就寝できると、8時間以上の睡眠時間を確保できます。
小学生白書Web版2014年9月調査 https://www.gakken.jp/kyouikusouken/whitepaper/201409/chapter4/02.html
小学生白書Web版2022年9月調査 https://www.gakken.jp/kyouikusouken/whitepaper/202209/chapter4/02.html
小学生の睡眠時間が短いとどうなる?
睡眠時間が短いと、大人でも日中頭がぼーっとしたり頭痛がしたり、穏やかな気持ちになれなかったりと、心身に不調を来します。小学生は9~11時間と大人よりも長い睡眠時間が推奨されていますが、睡眠時間が短いとどのような問題が起こるのでしょうか。
イライラ
北海道大学大学院教育学研究院は、小学生の睡眠習慣がメンタルヘルスと体力に及ぼす影響について「睡眠不足の子どもは、睡眠不足を感じていない子どもと比較して急に怒ったり泣いたり、カっとしたりしやすい」と発表しています。睡眠時間が短いと感情のコントロールが難しくなり、イライラしたりネガティブになったりしやすくなるため、注意が必要です。
低身長
身長を伸ばすために必要な成長ホルモンの分泌には、深い眠りが欠かせません。睡眠時間が短いと睡眠の質も低下し、成長ホルモンの分泌を妨げ、身長が伸びにくくなるともいわれています。
成長ホルモンは身長だけでなく、筋肉量の増加やダメージを受けた組織の回復にも働く重要なものです。睡眠不足は子どもの身体全体への悪影響につながる可能性があることも、忘れないようにしましょう。
肥満
運動中だけでなく、就寝中も脂肪は分解されているため、睡眠時間が短いと夜間の脂肪分解が減り、肥満になりやすくなるかもしれません。また、睡眠不足は交感神経の活動を強め、インスリンの働きが悪くなるため、血糖値が上昇します。
小学生の睡眠不足は肥満のリスクだけでなく、将来高血圧や糖尿病の可能性と高める要因になり得るため危険です。
学力低下
山陽小野田市の調査によると、学力が最も高かったのは20~21時に就寝している小学生で、寝る時間が1時間遅くなるごとに、学力は徐々に低下していくといいます。
睡眠には身体や心、頭を休めるだけでなく、記憶の定着という重要な役割もあります。記憶の定着は深い眠りである「ノンレム睡眠」のあいだに行われますが、通信機器などを夜遅くまで操作したりすると寝つきが悪くなり、「ノンレム睡眠」に入りにくくなり、浅い眠りで記憶の整理や固定が不十分となることも。
また、生活リズムの乱れも深い眠りに入りにくくなるため、記憶の定着を妨げ、学力低下につながるのです。
小学生における睡眠習慣の違いがメンタルヘルスと体力に及ぼす影響について https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/62514
小児期からの生活習慣病予防 http://www.med.u-toyama.ac.jp/healpro/toyamast/toyamast.html
小学生の理想的な睡眠時間は何時間?成績が良い子どもは何時に寝ているの? https://goodsleep.media/contents/sleeping_time_ess/
理想の睡眠時間確保のために保護者が注意したいこと
睡眠時間と子どもの心身の健康は、強いつながりを持っていることがわかりました。できるだけ理想の睡眠時間を実現するために、保護者が注意したいポイントは大きく6点です。
コミュニケーションを欠かさない
小学生が夜遅くまで起きている理由はさまざまですが、なかには不安や悩み事を抱えており、なかなか寝付けないという子どももいます。良質でじゅうぶんな睡眠には、親子でのコミュニケーションを大切にし、安心して眠れるよう誘導することが大切です。
早寝早起きの習慣をつける
寝る時間が遅いと、朝なかなか起きられず「遅寝遅起き」の習慣がついてしまいます。小学生を早く寝かせるには、起床時間を早めに設定することも重要です。早く起きれば早い時間に眠くなり、早寝早起きの習慣が身につくでしょう。
はじめは大変ですが、続けていくと生活リズムが整い、子どもも早起きが苦ではなくなります。
就寝時のルーティンを決める
「これをしたら寝る」というルーティンを決めておくと、入眠しやすくなります。たとえば本を読む、温かい飲み物を飲む、照明を少し暗くしてオルゴールなどの落ち着いた音楽をかけるなどです。寝る前に同じ行動を取り続けていれば、徐々に自然に眠れるようになるでしょう。
寝る前はスマホなどを触らない
ルーティンを決めるのはよいことですが、「動画を見る」「ゲームを30分する」など、子どもが楽しくても通信機器を使う行動は避けたほうが無難です。テレビやスマホ、ゲームなどのブルーライトや視覚から入る情報は脳に刺戟を与え、覚醒してしまう可能性があります。
「ちょっと寝る前に」とネットサーフィンなどをしていたら、どんどん眠れなくなってしまったという経験がある人は少なくないでしょう。子どもはもちろん、大人も寝る前には画面を見ないようにすることをおすすめします。
昼寝をさせない
未就学児などの小さな子どもは日中に受けた刺激を一旦リセットしたり、1日に必要な睡眠時間を確保したりするために、昼寝が欠かせません。しかし、成長につれて徐々に体力もついてくるので、小学生が昼寝をすると夜なかなか眠れなくなる可能性があります。
「昼寝→元気になる→眠れない→夜更かし→寝不足」という負のループに陥らないよう、休日もできるだけ昼寝をさせないのがおすすめです。
週末などの夜更かしにも注意!
週末は早起きをしなくてよいことから、ついつい夜更かしをさせてしまう家庭もあるかもしれません。たしかに、22時、23時に寝ても翌日8時、9時に起きれば理想の睡眠時間はクリアできます。
しかし、体内時計の乱れからせっかく平日にできあがった生活リズムが崩れてしまい、月曜日の朝早起きするのがつらくなることも…。
余談ですが、長男の小学校の入学式でも、先生から「週末に乱れた体内時計を戻すのには1週間かかるといわれているので、週末の夜更かしや寝坊はできるだけ避けてください」というお話がありました。
当時は「保護者も平日は疲れてるんだから、寝坊くらいさせてよ…」と思いましたが、夜更かしをさせなければ平日とあまり変わらない時間に自主的に起きて、親が多少寝坊しても兄弟で遊んでいます(笑)。
おかげでいまのところは、平日の朝に起きられなくてどうにもならない!といったトラブルもないので、可能な限り決まった時間に就寝・起床することをおすすめしたいです。
小学生は何時に寝るべき?寝る時間が遅い理由から想定される影響まで https://wisdom-academy.com/news/column/primary_school_children_bedtime/
子どもの睡眠 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-007.html
睡眠時間や寝る時間は子どもへの影響大!生活リズムを作ってじゅうぶんな睡眠を
小学生の理想の睡眠時間は9~11時間です。6時半頃起きる場合、寝る時間を21時半にすれば9時間睡眠を実現できます。睡眠時間は、子どもの心身の健康に大きく影響します。9時間の睡眠が難しい家庭でも毎日8時間以上は眠れるよう、快眠のための工夫をしましょう。
わが家の息子たちは、20時半から21時には完全就寝しており、朝は6時35分に起きます。安定して9時間以上の睡眠時間を確保できていますが、平日よりも休日のほうが朝シャキッ!と起きるのは不思議です(笑)。
学年が上がるにつれて少しずつ寝る時間は遅くなっていくでしょうが、睡眠の重要性を伝えながら、できるだけ長く寝られるよう親も努力したいと思っています。
お正月をはさむ長期休みは生活リズムも乱れがちですが、決まった時間に寝て起きることを意識し、家族で楽しくすごしましょう!