結婚式のお色直しは、通常何回行われるのでしょう。1回? 2回? 私が出席した結婚式では、花嫁が5回もお色直しをしました。花嫁が着替えている間、高砂に取り残される花婿の寂しそうなこと・・・。忘れられない結婚式の話をします。
友人が結婚式で楽しみにしているのは?!
ファッションフリークの友人が、彼氏にプロポーズされた時、一番はじめに頭に浮かんだことは「どんなウェディングドレスを着よう!?」でした。
結婚が決まってから、毎週のようにブライダルショップに足を運び、ウェディングドレスを試着して、約2ヶ月経った頃、彼女から呼びだされました。
「海外インポートから有名デザイナーのドレスまで、100着以上のドレスを着まくって、ようやく候補を10着まで絞ったけれど、そこから選べない!客観的な意見を聞かせて欲しい」
100着・・・
「旦那と一緒に行けばいいじゃない」と言うと、最初は喜んで付き添ってくれた旦那と実母が
「いくらなんでもドレスを選ぶのに時間をかけすぎ! 付き合いきれない」とさじを投げたと言うのです。
結局、彼女に説得されて、ドレスの試着に付き合う羽目になりました。 「長くなりそうだな・・・」と覚悟しながら、ブライダルサロンへ。
その日は、約3時間、取っ替え引っ替え、ドレスを着倒していきました。 彼女の指示で、正面から背後からとドレス姿を写真に撮りながら
「ところで、料理や会場の装花、引き出物は決まったの?」と聞くと、彼女はケロッとした顔で言うのです。
「ちっとも!それは彼氏に任せるよ。私は、ドレス以外、興味ないもの。料理は一番安いのでいいし、お花なんていらない。ぺんぺん草でも飾ればいい」
呆れて
「結婚式は花嫁のファッションショーじゃない」と話しても、ドレスに夢中な彼女は聞く耳なし。
その後、何度かドレスの試着に付き添い、彼女に会うたびに、ドレス姿の写真を見せられて、辟易することが続きました。
「結婚式の準備は大丈夫?」と尋ねても、
「彼氏が、ウェディングプランナーと相談しているから大丈夫でしょ」とイージーモード。本当に彼氏が、招待状の準備から、料理や装花、BGMの決定、引き出物選びまでしたそうです。
ついに結婚式当日
それから約半年後、Aの結婚式の日を迎えました。 「本当に雑草が飾ってあったらどうしよう」と不安になりながら、ホテルの披露宴会場へ向かうと、綺麗にお花で飾られた会場に、美味しい料理。心配は杞憂に終わり、ホッとしていましたが・・・ なんとお色直しが、5回もあったのです!
まずチャペルの挙式に純白のウェディングドレスで登場。さすがに100着以上のドレスから厳選されただけあって、バージンロードを歩く姿は、溜め息がでるほどの美しさでした。
それから披露宴会場に和装で入場。赤地に金刺繍と、花々が散りばめられた豪華な色打ち掛け姿の花嫁に対して、いたって普通の紋付き袴の花婿。花嫁が主役で、花婿は添え物のようでした。
乾杯の挨拶が終わるとすぐに彼女はお色直しで退席し、今度はカラードレスに着替えて、ケーキ入刀。ドレスが変わるたびに、友人の私達は、写真を撮らなければいけないので、大忙しです。余興がはじまると、また彼女は席を外してしまいました。
花婿はかわいそう?!
結婚する二人のための余興なのに、高砂にいるのは花婿だけ。ポツーンと取り残された花婿の横で、ヴァイオリンの演奏やお祝いの歌が披露される様子は、まるで一人ぼっちの結婚式で、寂しすぎる!
そして余興の最中に、ミニ丈のドレスに着替えた花嫁が登場して、場を盛り上げたかと思うと、すぐに退席してしまいました。いよいよゲストの間から
「あれ? また花嫁いないの?」という声が聞こえています。
最後、マーメイドラインのドレスに身を包んだ花嫁が現れ、涙ながらに花嫁から両親への手紙を読んでフィナーレへ。大好きなドレスを5回も着た花嫁は満足そう。
普通の紋付き袴とタキシードしか着せてもらえず、高砂に取り残されていた花婿は、どこか寂しそうな表情をしていました。
「花嫁のドレスは素敵だったけれど・・・ 花婿が一人ぼっちで可哀想だったね」 帰り道、友人達と、苦笑いした結婚式になりました。
(ファンファン福岡一般ライター)