私たち人間の身体にとって必要なミネラルのひとつである鉄分。子どもの成長と健康を支えるためにも必要な栄養です。この記事では、2児の管理栄養士が子どもにとっての鉄分の必要性や摂取目安、豊富に含まれている食材や食べ方について解説します。
鉄分の重要性について
鉄分は人間の身体にとって非常に重要なミネラル。小学生にとっても、成長と健康を支えるために鉄分を適切に摂取することはとても大切になってきます。ここからは鉄の重要性や、はたらきについて詳しく解説していきます。
ヘモグロビンの生成に必要
まず、鉄は赤血球の主要な成分であるヘモグロビンの生成に必要です。ヘモグロビンは、酸素を身体中の細胞に運ぶ役割を持ち、これによってエネルギー産生や細胞の正常な機能が保たれます。小学生は成長期にあり、身体全体が活発に成長しているため、十分な酸素を供給するためには鉄分が不可欠です。
免疫システムにも重要
また、鉄は免疫システムの健康にも寄与します。鉄分が不足してしまうと、免疫システムの機能が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性も。そのため学校などの集団生活を送る小学生にとって、鉄分をしっかり摂って免疫力を維持することは特に重要です。
学習能力にも影響
鉄分は子どもの学習能力や行動にも影響を及ぼすといわれています。鉄分が欠乏してしまうと、注意力の低下や学習障害のリスクを高めることにつながるのです。
過剰摂取には要注意
鉄分の摂取には、バランスが必要。過剰な鉄分は鉄過剰症を引き起こし、肝臓や心臓などに悪影響を及ぼすことがあります。鉄分の摂取量は、適切量を守るようにしましょう。
摂取の目安
小学生の鉄分の推奨量は、日本人の摂取基準2020によると年齢や性別によって異なることがわかります。
年齢 | 男性 | 女性(月経なし) | 女性(月経あり) |
---|---|---|---|
6~7歳 | 6.5 | 6.5 | – |
8~9歳 | 8.5 | 8.0 | – |
10~11歳 | 10.0 | 9.5 | 13.5 |
表から、1食あたりだいたい2〜4㎎の鉄分を摂取していれば、1日の推奨量を満たすことができるといえます。
また、月経がはじまるころにはそうでない時よりも多くの鉄分が必要です。保護者がきちんと把握しておくことで鉄分の不足は防げます。そのためにも子どもとの日々のコミュニケーションも大切であるといえるでしょう。
鉄分の種類について
鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。ここからはヘム鉄、非ヘム鉄についてそれぞれ解説していきます。
ヘム鉄
ヘム鉄は動物性食品に含まれる鉄のこと。特に肉、魚、鶏肉などの赤身肉や内臓に豊富です。ヘム鉄の最大の特徴は、体内での吸収率が非常に高いこと。ヘム鉄は、ヘモグロビンとミオグロビンというタンパク質に結合しているため、消化過程でこれらのタンパク質から効率的に吸収されます。その吸収率は、非ヘム鉄の3倍以上といわれており、特に鉄分補給が必要な場合には重要な鉄分源です。
非ヘム鉄
非ヘム鉄は、植物性食品に含まれる鉄の形態です。穀物、豆類、野菜では特に緑黄色野菜に多く含まれています。非ヘム鉄は体内での吸収率が低く、その吸収を助けるためにはビタミンCなど他の栄養素と一緒に摂取することで効率的に吸収されやすくなるのが特徴です。たとえば、豆類や全粒穀物、緑黄色野菜に含まれる鉄分を摂取する際に、オレンジやトマト、ブロッコリーなどビタミンCが豊富な食品を組み合わせることが推奨されます。
2つのバランスが鍵!
ヘム鉄は吸収率が高いため鉄分不足を効率的に補うことができますが、肉類などの摂取過多は他の健康リスクを伴う可能性があります。一方、非ヘム鉄は吸収率は低いものの、植物性食品に含まれるため、食物繊維やビタミン、ミネラルなど他の栄養素も一緒に摂取することができます。そのため、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方をバランス良く摂取することが大切です。
気を付けて! 鉄分の吸収を阻害する食品
子どもの鉄分摂取において、最も効率的なのは、鉄分が豊富な食品をバランス良く組み合わせて食べることです。まずはヘム鉄と非ヘム鉄それぞれをバランスよく日々の食事に取り入れてみましょう。
しかし、カルシウムやタンニン、フィチン酸など、鉄分の吸収を阻害する成分を含む食品とは別の時間に摂取することが大切。タンニンはお茶に多く含まれる成分のことで、フィチン酸は豆類に含まれる成分のことです。それぞれ鉄分と一緒に摂取するのは避けるようにしましょう。
鉄分が豊富に含まれている食材や食べ方
では、実際に鉄分が豊富に含まれている食材はどのようなものがあげられるでしょうか。具体的に食材をあげて解説していきます。
貝類
あさりやしじみ、赤貝などの貝類には非ヘム鉄が豊富に含まれています。あさりの缶詰(40g)中に12㎎ほど入っています。(参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂)4人家族だとすると、あさりの缶詰を1缶使って味噌汁をつくることで実質1食あたりの鉄分推奨量を満たせるということになります。しかし、非ヘム鉄は吸収率が低いため、その他の鉄分が豊富な食材も取り入れるようにしましょう。
レバー
レバーには、ヘム鉄が豊富です。鶏、豚、牛のなかでも、豚に特に多く含まれています。部位でいうと肝臓です。臭みや独特の風味で食べにくさのあるレバーですが、血抜きの下処理を丁寧に行うことで食べやすくなったりするので工夫して取り入れると良いでしょう。毎日食べると過剰に摂取してしまう可能性も出てくるため、週に1回程度などの頻度がおすすめ。レバー以外の部位でも、赤身の多いヒレやモモ、かたなどの部位にも鉄分が豊富に含まれているので、レバーが苦手な場合は違う部位で補ってみましょう。
魚類
まいわしやまぐろ、かつお、ぶりといった魚類にもヘム鉄が含まれています。刺身や焼き魚、ムニエルなどさまざまなアレンジがしやすい魚類。日々の食卓に取り入れるといいでしょう。
野菜類
小松菜や枝豆、サラダ菜などの野菜類には、非ヘム鉄が豊富です。100gあたりだと小松菜が2.8㎎、枝豆が2.7㎎、サラダ菜で2.4㎎の鉄分が含まれています。吸収率の低い非ヘム鉄には、ビタミンCを多く含まれている食品と組み合わせて摂りましょう。じゃがいもやピーマン、パプリカなどのビタミンCが多く含まれているため、野菜炒めやサラダ、スープなどにしましょう。
豆類
納豆や厚揚げ、豆乳などの大豆製品、レンズ豆やインゲン豆などの豆類にも非ヘム鉄が豊富に含まれています。大豆製品や豆類は、食事に取り入れやすい食材です。毎食1品でも大豆製品や豆類を意識して取り入れてみてもよいでしょう。
その他
食べ物ではないですが、鉄分の摂取は食品の調理方法にも影響されます。たとえば、鉄鍋です。鉄鍋を使用すると食品に鉄分が移行することがあり、調理する際には鉄分の補給源となることがあります。ひじきは特に移行するといわれています。ひじき煮や炒め物をいつもの食卓のプラス一品にしてみてはいかがでしょうか。
さまざまな食品から鉄分を補おう
鉄分が豊富な食材を選び、ビタミンCを組み合わせて摂取すること、そして鉄分の吸収を妨げる食品や飲料の摂取を避けることが、鉄分の効率的な摂取につながります。子どもの健やかな成長のためにバランスの取れた食事を心がけて、鉄分摂取をしましょう。