卒園式では、子どもの成長を共に見守ってくださった先生も涙をにじませることがあります。息子の卒園式もそうでした。そんなとき、1人の男児が「先生を泣かせたの誰!?」と叫びます。今回は、先生のことが大好きな園児が起こしたほっこりトラブルについてお話しします。
先生も感動の涙を流した卒園式
3月某日、息子の通う幼稚園で、卒園式が執り行われました。
年少から通っていた息子もいよいよ卒園。揃いの制服に身を包んだ卒園生が体育館に入場すると、保護者の中にはすでに鼻をすする方もいました。小さかった子どもが成長し、緊張した面持ちで立派に並ぶ姿は胸に迫るものがあり、私も目頭が熱くなります。
卒園式は、開式の言葉で始まり、まずは卒園証書授与です。担任の先生に名前を呼ばれた子どもが園長先生から証書を受け取り、決められた場所に証書を置いておくという流れでした。証書は、式の終了後にクラスへ戻り、改めて担任の先生から渡されます。
息子の担任の先生は若く、クラスを受け持つのは初めての方。子どもたちの様子をよく見ている先生で、顔を合わせるといつも園での様子を教えてくださいました。
証書授与が終わると、卒園生からのお別れの言葉です。園児ひとりひとりに台詞があり、運動会や発表会など園での思い出を言葉にします。
式の最後は、歌の合唱です。目元をぬぐう保護者も多く、担任の先生も目が赤くなっていました。担任の先生は、園児をひきいて退場するときも目元を腫らし、感極まった様子です。
勘違いで大号泣するA君
閉式後、園児はクラスに戻り、先生から最後のお話を聞きます。保護者は体育館を軽く片付け、子どもをクラスに迎えに行くことになっていました。先生からのお話が終わり次第、写真撮影や先生への挨拶をしていいそうです。
他の保護者と一緒に息子の教室へ迎えに行くと、何やらおかしな雰囲気。A君と先生を中心に一悶着起こっていました。
A君は「そつえん おめでとう」と書かれた黒板のそばで大声を上げ泣いています。先生はA君をなだめ、子どもたちは整列して床に座っていました。
A君は、息子と仲よしの元気いっぱいな男の子。鬼ごっこが好きで、いつも園庭を走り回っていました。
先生が保護者たちに気付き
「お父さんお母さん方は室内へどうぞ」と招いてくださったので、クラスに入り、息子のそばに行きます。
「A君どうしたの?」私が尋ねると息子は、困り顔。
「A君が『先生を泣かせたの誰!?』って怒って、俺や○○ちゃんが『先生は感動して泣いてるんだよ』って言ったんだけど…」
「A君は『感動の涙』がわからなくて悲しかったのかな?」
「ううん、先生が『みんなが元気で卒園できたことが嬉しいんだよ』って言ったら、A君泣いちゃったの」
A君は嗚咽まじりに
「先生と会えないの嫌だー!」と叫んでいました。なるほど、先生の涙の理由を理解したA君は、明日から先生に会えないことを実感し、号泣してしまったのでしょう。先生はA君をなだめ、A君のお母さんは先生に頭を下げます。
先生や園児の神対応でいい思い出に
A君のお母さんは、先生に迷惑をかけてしまったことをしきりに謝っていました。しかし先生は
「A君の正義感の強いところにいつも助けられていました、ありがとうございます」と、頭を下げ返します。息子は
「あっちに行っていい?」と私に尋ね、A君のところへ駆け寄りました。他の子どもたちもA君のもとへ行き、
「大丈夫だよA!」
「卒園しても遊びに来ていいんだよ!」と、A君を囲んで励ましの言葉をかけます。先生や園児の対応で場はなごみ、見ていた私たちまで温かい気持ちになりました。
小学校に入ってからのA君は、長所を伸ばし、友達のピンチに手を差し伸べる子に育ちました。
息子の話によれば、友達同士の喧嘩が始まると、
「ちょっとストップ!」とA君が間に入って止める場面が多々あるそうです。そんな正義感の強いエピソードを聞くと、卒園式の出来事を思い出します。
親としては、子どもそれぞれが持つ「正義感」「明るさ」「思いやり」といった長所を伸ばし、健やかに育ってほしいと願うのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/芦谷)