「タクシーチケット? そんなのラッキーに決まってる!」と思いますよね。でも、得したと飛びついたものの、結果的に大損失につながることもあるんです。今回は、会社の上司や同僚とお酒を飲んだ後に起きた、トホホなエピソードをお話しします。
数年ぶりの会社の飲み会
育休明けに異動となり、新しい部署での仕事に慣れることに必死だった私。平日夜はワンオペ育児が待ち構え、飲み会参加なんて夢のまた夢でした。でも復帰から2年が経ち、仕事と子育てのペースが掴めてきた頃、
「久しぶりに飲みに行きませんか?」と会社の同僚からお誘いがありました。
参加メンバーは、かつてお世話になった上司と同僚の計6人。どうしても参加したかった私は、夫に
「ごめん、お願い」と頭を下げて、なんとか了承を得ました。
いよいよ飲み会の日がやってきました。仕事を終えた後、同僚たちと待ち合わせをし、予約している居酒屋へ向かいます。評判のいい店でテンションアップ! 久しぶりの再会に盛り上がり、お酒が進む進む。夫から出発前に
「飲みすぎ注意だからね!」と約束したことは、もうすっかり頭から抜け落ちていました。
なかなか会社ではゆっくり話せないこともあり、仕事の話だけでなく、上司と奥様の馴れ初めや恋バナなど、話題は尽きず、笑いの絶えない時間が続きました。
思わぬプレゼント、魔法のタクシーチケット
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気づけば終電ギリギリ。私は慌てて駅に向かおうとしたとき、役員になった元上司が
「電車じゃ危ないから、これ使いなさい」とタクシーチケットを手渡してくれました。
深夜に20kmの距離をタクシーで帰るとなると、普通は1万円近くかかります。「やった! 交通費浮いた!」と心の中でガッツポーズ。浮かれていた私は、この後訪れる悲劇の予兆など微塵も感じていませんでした…。
ふわふわシートと車酔いの罠
タクシーに乗り込むと、柔らかい座席がふわふわで心地よく、目を閉じたのが間違いでした。お酒の回りと車の振動が相まって、次第に気持ち悪くなってきたのです。
「あとどれくらいで着きますか」と運転手さんに尋ねると、
「うーん、あと20分くらいかな?」と言われました。無理です。さっき食べたばかりの美味しい焼き鳥たちが、胃の中で大暴れしています。
「すみません、気持ち悪くなってしまって」と告げたものの、我慢も限界。袋を取り出そうとした矢先、間に合わずそのまま嘔吐。車内は一瞬で地獄絵図と化し、迷惑そうな運転手さんに
「クリーニング代、3,000円ね」と請求されてタクシーを降ろされました。
ようやく家に着いた私は、ひとまずお風呂場へ直行。そこで初めて目に入ったのは、自分が着ていた嘔吐物まみれのコート。買ったばかりの新品で数万円し、袖にファーがついたノーカラーの黒のコートです。ショップでひと目見て「これだ!」と直感し、迷うことなく購入したお気に入りの一着です。
しかし、そのコートは嘔吐物まみれで見る影もありません。急いで汚れを洗い流したものの、気持ち悪さが限界だったので、そのまま眠りにつきました。
翌日の地獄
翌朝、怒り顔の夫にたたき起こされて、お風呂場に連行されました。
「これ、なに? 臭すぎてシャワーも浴びれない」と言われた先には、異臭を放つコート。
「あれほど、飲み過ぎるなと言ったのに…。当分お酒は禁止ね。」と冷たく言い渡されてしまいました。
結局、コートは匂いが染み付いて生地も傷んでしまい、泣く泣く処分。交通費が浮くどころか、クリーニング代とコート代で大赤字です。あの飲み会の楽しかった記憶が、一瞬で後悔に塗り替えられたのは言うまでもありません。
その後、上司に
「無事帰れた?」と聞かれましたが、
「はい、大丈夫です! タクシーチケットありがとうございました」と笑顔で返答。タクシーでの出来事は内緒です。
あの夜以来、私は「飲んでも飲まれるな」を肝に銘じ、飲み会では節度を持つよう心がけています。お酒は楽しく飲むもの。でも少しでも油断すると、大損失を招くことがあるのだと身をもって学びました。
(ファンファン福岡公式ライター/ぴょんママ)