親になると、子どもに「将来いい職業についてもらいたい」「特別なスキルを身につけてほしい」なんて、考えてしまうことがありませんか? 私はある理由から息子に宇宙飛行士を志してほしいと考え、嫌がる息子と攻防を繰り返すという失敗をしてしまったのです。
ママパパ必見! 宇宙飛行士になるために必要な力
きっかけは、5歳半の息子が宇宙に興味をもったこと。中古で買った宇宙図鑑がヒットし、太陽や惑星の特徴を次々と覚えていく息子。興味のあることへの記憶力の高さに感心しつつ、息子の探求心を伸ばそうと、図書館に通い宇宙の本を借りました。
その中の1冊で、”宇宙飛行士になるために必要な力”という記事を発見。どんなことが必要かというと。
1. 自然科学系の大学を卒業
2. 健康な身体
3. 英語力
4. コミュニケーション能力
親が子どもに頑張ってほしいと願うことの、全部が入っていると思いませんか?
「宇宙飛行士を目指せば、勉強も運動も英語も頑張って、コミュ力のある子に育ってくれるかも!」
打算的な理由で、私は息子に将来の夢を宇宙飛行士にしてもらおうと考えたのです。もちろん、本当に宇宙飛行士になれるなんて思っていません。目指す過程で様々なスキルを身につけ、自立した大人になってほしいと願い…。
夢を猛プッシュ! 息子の反応は?
わが家では、寝る前の読み聞かせが日課。息子が宇宙の本を選ぶたび、私は宇宙飛行士のよさについて熱を込めて伝えました。
「宇宙から見た地球ってきれい! この目で見てみたいね。」
「宇宙飛行士になったら、かっこいいロケットに乗れるよ!」
しかし息子は不安げに、
「宇宙なんて1人で行くのは怖いよ」
「一緒に働いている友達と行くから平気。そのために英語を話せたほうがいいね」
「そんなぁ」
息子は宇宙飛行士の話に思いのほか乗り気ではなく、どこか悲しげな様子。こんな会話を繰り返すうち息子が宇宙の本を選ぶ頻度が減っていきました。
息子の夢と涙
わが家にはホームベーカリーがあり、毎朝食パンを焼いています。
ある朝そのパンを食べながら息子が、いいことを思いついたとばかりに瞳を輝かせ、
「僕、大きくなったらパン屋さんになる!」と言いました。今までそんなことを言ったことがなかったので驚き、
「え、どうして?」と聞き返すと、息子は嬉しそうな表情で更に続けます。
「パン屋さんなら、うちで働くことができるでしょ? うちでパン屋さんをひらこう。」
「でも宇宙飛行士のほうが… 」私が眉をひそめた、そのときです。
息子の目からぽろぽろと涙がこぼれはじめました。
「どうしたの! 」慌てて傍に駆けよると、息子は、悲しみをこらえ絞り出すような声で話します。
「ママは、僕と離れ離れになってもいいの? 僕は宇宙になんか行きたくない。ママとパパとずっとこのおうちで暮らしたい。だからパン屋になりたいの」私はぎゅっと強く息子を抱きしめ、
「そうだね」と頭を撫でながら、大切に思う気持ちが伝わるように頬をよせました。
5歳児からすると、宇宙飛行士はずっと宇宙で暮らしているイメージ。宇宙飛行士の話をするたびに、
「ママは僕と離れても平気なんだ」と、息子を辛い気持ちにさせてしまいました。打算的な理由ですすめたことが息子を傷つけ、本当に申し訳なく感じます。
「家族といたいからパン屋になりたい」と話す息子。興味のある宇宙よりも、わが家での暮らしを大事に思う息子に感謝し、いつか旅立つ日まで、その成長を傍で大切に見守りたいと思う出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/かがみ真紀子)