私は短期大学卒業後、幼稚園の先生として働いていました。働いて3年。次の夢に向かうため、幼稚園を退職することを決意。卒園児を受け持っていた私が子ども達に自身の退職の話をする日がきました。
泣き虫先生が卒園を伝えた日
私は、運動会で勝っては泣き、お遊戯会で子ども達の頑張りを見ては泣き… 子ども達に
「先生また泣いてる~」保護者に
「先生また泣いちゃったんだって?」そんなことを言われる泣き虫先生でした。
そんな私が子ども達に
「今日は大事なお話があるの」と退職の話をする日がきました。
「3月にみんなは幼稚園を卒園してそれぞれの学校に行くよね。先生も幼稚園を卒園することになりました」
「え~?」急な話に“ハテナ”が沢山の子ども達。私はやはり感極まって涙が溢れてしまいました。そんな私の姿をみて
「また先生泣いてる~!」なんて言う子がいたりもしましたが、年長さんになると空気を読めたり、ことの重大さに気付くことが出来、すぐに真面目に話を聞いてくれました。
「みんなが小学生になって幼稚園に遊びに来てくれても、先生も卒園しちゃってるから幼稚園にいないの。ごめんね。でも先生はみんながお兄さんお姉さんになっていくことを心の中でずっと応援しているからね」そんな話をしました。その時私に向けられた子ども達の真っ直ぐな瞳は今でもしっかり覚えています。
子ども達からの手紙は宝物
次の日、いつもより沢山の子が私に手紙を書いてきてくれました。似顔絵を描いてくれる子、ありがとうや大好きを沢山伝えてくれる子、折り紙を折ってくれる子…。その中でも特に思い出に残っている2通を紹介します。
1つ目は、私のことを初恋と思ってくれている男の子からの手紙です。
その子は字を書くのが苦手だったのですが、私とお手紙交換がしたくて、毎日自分の名前を書いてお手紙として持ってきてくれました。でもこの日だけは特別なお手紙だったのです。そこには「だいすき」の四文字が書かれていました。
覚えたての字で何度も何度も書き直した跡があったお手紙。登園してすぐ、照れて真っ赤な顔で私のところにきて
「今日はね、いつもと違うんだよ!」そう言って手渡すと恥ずかしそうに逃げていってしまいました。もちろん、私も大好きの気持ちを沢山込めてお返事をしました。
2つ目は、ある女の子からのお手紙です。
「せんせいありがと
せんせいありがとう
せんせいなかないで◯◯がようちえんにいるかだ(ら)
せんせいほんとうにありがとうね
せんせいのきもちわかるよ
かなしいのわかるよ
◯◯より」
ご両親は若いながらしっかり子育てされていたようで、長女のこの子は素直でとても優しい女の子でした。何かの文を手本にしたわけでもなく、この子の素直な感情を書いてくれたお手紙。この詩人のような素敵な文章にとても感動しました。
「とっても感動したよ」と伝えると
「うん!」あっさりしたお返事。この子にとっては、この優しい感情が特別ではなく当たり前なんだな、と感じたのを覚えています。
思い出深い子ども達
卒園式当日。やはり涙をこらえきれず、子ども達、保護者と一緒に涙涙の卒園式となりました。
今まで子ども達がくれたお手紙は、どれも本当に嬉しく、宝箱に大切にとってあります。こんな素直な子ども達と触れ合えた時間は私の数少ない自慢のひとつです。
あっという間に年月は過ぎ、当時の卒園児も今年成人式を迎えたとのこと。今も素直な心を忘れず、真っ直ぐな大人に成長してくれていることを影ながら願っている泣き虫先生でした。
(ファンファン福岡公式ライター / ちょこまま)