幼稚園の入園式。ワクワクで登園したのに、周りは不安で泣きじゃくるお友達ばかりで、しだいに雲行きが怪しくなっていった娘。なんとか式をやり過ごし、みんな笑顔でクラス写真を撮るときになって、まさかの時差で大号泣となってしまったのです…。
ワクワクで迎えた入園式
3歳になった娘の入園式の話です。第2子である娘が生まれるまで、私は会社勤めだったので、5歳上のお兄ちゃんは保育園育ち。幼稚園の入園式は、私にとっても初めての経験でした。
3歳までママとべったりだった子が多い幼稚園では、ママから離れるのを嫌がって泣く子が大勢いると聞いていたので、入園前の1年間、私はプレ幼稚園のつもりで幼児教室に娘を通わせていました。
また事あるごとに
「幼稚園が楽しみだね、お友達とブランコや滑り台で遊べるね」と娘に話しかけるようにしていました。
その甲斐あってか、なかなかのしっかり者に成長した娘。入園式に不安はない様子で、私はすっかり安心していました。
どうしてみんな泣いてるの?
ところが、入園式当日。心弾ませて登園すると、想像していたのとはちょっと違う空気が漂っていました。門の前でニコニコと親子写真を撮っていた周りの子どもたちが、教室に入り席に座らされるやいなや
「ママ~」と心配そうな声でぐずりはじめたのです。
最初は自分の席から満面の笑みで私に手を振っていた娘でしたが、教室のあちこちで泣き声が聞こえると、キョロキョロと周囲の様子を伺いはじめました。なんだか思っていたのと違うぞ、と気づいてしまったようです。
眉をひそめ、確認するように私のほうを振り返る娘。
「どうしてみんな泣いているの? ここは楽しい幼稚園じゃないの…?」娘の心の声が聞こえてくるようでした。
「しまったぁ…!」私は平静を装い、作り笑顔で娘に手を振ります。入園式はまだこれから。もう少し頑張ってもらわないといけません。
体育館に移動し入園式が始まると、子どもたちの多くは状況を受け入れ、残る何人かの泣き声だけが響いていました。娘は時折うしろを振り向いて、心配そうに私を探しています。
「大丈夫だよ、頑張れー!」私は心の中で叫びながら、保護者席から手を振ることしかできませんでした。
大号泣の記念撮影
なんとか式をやり過ごし、あとはクラスごとの親子記念撮影を残すのみ。ほっと胸をなでおろしたその時です。聞き覚えのある泣き声が聞こえてきました。見ると娘が顔をくしゃくしゃにして号泣しているではありませんか!
「えっ? どうして今頃?」さっきまで泣いていた子もママの元で笑顔が戻っているのに、思わぬ時差で娘だけが大粒の涙をこぼしているのです。
抱き上げて必死で機嫌をとりますが、泣き止む気配はありません。先生やカメラマンは慣れているのでしょう。
「泣いている子のお母さん、抱いたままでいいから、顔だけこっち向いて!」と言うと、他の子どもたちを椅子に座らせ、親たちをその後ろに立たせて、慌ただしくシャッターを切り始めました。
1年越しの母の作戦が、あっさり失敗に終わった帰り道。すっかり機嫌を直した娘に泣いた訳を聞いてみました。
「だって、みんな泣いているんだもん!」どうもお友達の気持ちを間近に感じて、シンクロしてしまったようです。
後日、幼稚園から届いた記念写真には、困り顔の私に抱かれ1人だけ真っ赤な顔で泣いている娘が写っていました。親がどんなに用意周到に準備しても、子どもの気持ちは制御不能。思い通りにいかない経験を積み重ねて、親も子もたくましくなっていくのかもしれませんね!
(ファンファン福岡公式ライター / 繭子)