福岡の書店員さん、君の推薦する本が読みたい【第32回福岡キミスイ本】

 福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。32回目は積文館グループ本社、「積文館書店」(福岡市南区)商品グループBOOKチーム主任の松本愛さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の9冊を紹介します。

目次

舞台は福岡の島? 心理描写に共感できる癒やし系小説

「彼女が天使でなくなる日」 寺地はるな著

出典:http://fanfunfukuoka.aumo.jp

―こんにちは! 松本さんは2019年以来2回目の登場です。今回はどんな本を?  こんにちは! 2020年9月に出版された「彼女が天使でなくなる日」(寺地はるな著、角川春樹事務所、1,760円、税込み)を紹介します。九州北部にある島を舞台に登場人物の心理や感情を描いた長編小説です。

―どんな内容ですか。  舞台は人口300人の小さな“星母(ほしも)島”。主人公は、その島で遠い親戚に育てられた千尋です。千尋は一度は島を出ますが、島に戻り託児所兼民宿を営むようになります。  島で話題のパワースポット「母子岩」を求めて訪れる人たちと触れ合いながら、千尋は自らの過去と今を見つめていきます。  作者の寺地はるな先生は1977年、佐賀県唐津市生まれ。2014年「ビオレタ」でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。舞台となる島のモデルは明らかにされていませんが、福岡のイメージもあるのかなと思います。

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―この本の好きなところは。  基本的に先生の作品が好きで、心理描写に思わず「分かるー!」とうなってしまいます。彼氏の麦生(むぎお)を思う千尋のモノローグが好きです。  「麦生はたしかにやさしい。そのやさしさをあたりまえに享受しないようにと、千尋はいつも気をつける。いつか自分のそばからいなくなるかもしれない、という意味では誰もかれも一緒で、だから執着してはいけない。慣れてはいけない。いなくなる可能性はある。父がそうであったように」(同書より抜粋)  人って居心地のいい関係を求め、それを失うことが怖いから素直になれない。そうしみじみ感じました。泣ける章もありますが、全体的にほっこりして、最後には幸せを感じますよ。大切な人との関係性に悩む人に読んでもらいたいです。

出典:http://fanfunfukuoka.aumo.jp

寺地さんの文章表現に興味が湧きました。ありがとうございました! ところで、絵本大賞のポスターに目が留まりました。  毎年恒例の「積文館グループ絵本大賞」に選ばれた「ねこはるすばん」(町田尚子作、ほるぷ出版、1,650円)です。猫の絵がとにかくかわいくて! 留守番中にいろんなことをした猫の最後の表情にぜひ注目を。

 続けて話題の9冊を紹介します。

「母」【中央公論新社】

青木さやか/著 1,540円(税込み)

出典:中央公論新社

 「母が嫌いだった。わたしの脳内は母の固定観念で支配され、わたしはわたしが嫌いだった」。母との確執、ギャンブル、水商売、結婚、出産…。“100%依存症女”が、人との出会いから、こじれた人生をほどいていきます。生きることの意味を追い求めるヒューマンストーリー。

「名画で読み解く プロイセン王家12の物語」【光文社】

中野京子/著 1,078円(税込み)

出典:光文社

 ドイツ文学者の著者の代表作で、累計30万部を誇る「名画で読み解く」シリーズの最新刊です。これまでハプスブルク家やイギリス王家などの歴史を、絵画を通じてひもときました。今回はドイツ。19世紀、プロイセンのホーエンツォレルン家が群雄割拠の時代を経てヨーロッパの勢力図を塗り替えた激動の217年間をたどります。

「インナーマッスルに効く『体芯力』全身体操」【青春出版社】

鈴木亮司/著 1,430円(税込み)

出典:青春出版社

 コロナ禍で運動不足に陥ったり、疲れやすくなったりする人が急増中とか。本書では、1 日10 分「曲げる」「ひねる」「伸ばす」という簡単な動作のみで体中のインナーマッスル「体芯力」を効率的に鍛えることができるという体操を紹介します。スマートフォンやパソコンで見られる解説動画付きなので、動きを確認しながら取り組めます!

「オートミール米化ダイエットレシピ」【学研】

これぞう/著 1,430円(税込み)

出典:学研

 糖質少なめで食物繊維が豊富! 腸活にもいいスーパーフードであるオートミール。それを米のように調理し、主食に置き換える「オートミール米化」。これにより、チャーハンやおにぎりなどのさまざまな料理を創出し、自ら食べ続けて40kgのダイエットに成功した、これぞう氏の新作・定番人気レシピを紹介!

「藤井聡太論 将棋の未来」【講談社】

谷川浩司/著 990円(税込み)

出典:講談社

 AIの登場以降、大きく変貌する将棋界。そこに現れた天才・藤井聡太。14歳2カ月という史上最年少のプロデビュー後に、「衝撃の29連勝」「史上最年少でのタイトル獲得」。次々と記録を塗り替えていく彼のすごさとは? その謎を史上最年少名人位獲得の記録を持つ著者が、自らの経験を交えながらさまざまな角度から解き明かします。

「もっとやせる!キレイになる!ベジたんサラダ50」【小学館】

Atsushi/著 1,485円(税込み)

出典:小学館

 “スープ貴公子”としておなじみの、ライフスタイルプロデューサー、野菜ソムリエAtsushiの新作レシピ本はサラダ。低糖質・高たんぱく質、食物繊維たっぷりで、食材の栄養素や酵素がとれるので、腸活しながら美ダイエットできます、と本書。サラダはもはや前菜にあらず! これだけでおなかも心もいっぱいになる“主役サラダ”を紹介。

「ぼくは朝日」【潮出版社】

朝倉かすみ/著 880円(税込み)

出典:潮出版社

 荻原浩氏絶賛! 小学4年生の朝日は父と姉・夕日の3人で暮らしています。母は朝日を産んだときに天国にとられてしまいました。同級生の富樫くんや近所のカズ坊さん、町の人との交流によって少しずつ大人を理解していく朝日は、ある日、心を痛めた夕日の前で場違いな発言をしてしまい―。笑いあり涙ありの感動小説!

「晴れた日にかなしみの一つ」【双葉社】

上原隆/著 715円(税込み)

出典:双葉社

 息子をひき逃げ事故で亡くした父親、希望退職を迫られた会社員が胸にしのばせるお守り、アルコール依存症の母親を許せなかった息子の後悔…。あなたの隣にいるかもしれない、普通の人々が心の中に持つドラマ。人は苦難に陥った時、何を心のつえとして立ち上がるのでしょうか。人生がいとおしくなるノンフィクション・コラム20編。

「小さい農業で暮らすコツ」【農文協】

新藤洋一/著 2,200円(税込み)

出典:農文協

 エコ作家として執筆活動をする著者が、できることからムリせずに実践する自給生活の知恵と技。農地1反ほどで養鶏(150羽)、米・麦・野菜の栽培でおいしい食生活、薪(まき)ストーブ、ソーラーパネル、太陽熱温水器で“排出物の出ない”生活を実現。厳しい経済生活を強いられる時代に、“小さなお金”で豊かに暮らす方法を図解しています。

 いかがでしたか。雨の時期、本を片手にゆっくり過ごしてみませんか。次回もお楽しみに。

福岡の書店員さん、君の推薦する本を読みたい【福岡キミスイ本 第31回】

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