初めての結婚、初めてのお義母さん、そして初めてお義母さんからもらったプレゼント。今でも、誰かにプレゼントをもらうとフラッシュバックするあの光景。初めてお義母さんからもらったプレゼントは思ってもみなかったものでした…。
若いって素晴らしい! 夢に満ち溢れていた結婚生活
私は今からちょうど20年前に結婚しました。若くて、結婚生活に希望と夢を膨らませていた私は、映画やドラマで見たことがあるような、義実家、お義父さん、お義母さん、お義姉ちゃん、義妹、義親戚… というまだ見ぬ義理という世界にある種の憧れを抱いていました。
結婚してまだ間もないある日、お義母さんから「プレゼントしたいものがあるから家に来てほしい」という電話がかかってきました。
お義母さんからの初めての贈り物に胸踊る
「どうしてもプレゼントしたいものがあって! お仕事がお休みの日に食事がてら来てくれる?」電話で楽しそうに話すお義母さんの言葉を聞きながら、既に私は想像の世界へ。
お義母さんが私に何か素敵なものが入った大きなリボンがついた箱を手渡すシーンを思い浮かべながら、行ける日時を告げ、電話を切りました。
新妻のウキウキワクワクは誰にも止められず
「“何か素敵なもの”… その何かってもしかして〇〇家代々伝わる指輪とかだったりして!」と、想像を勝手に膨らませる私。
その日はみんなの都合が合わず、私が主人の実家を1人で訪れました。そして、お義母さんと2人で近況報告などを和やかに話しながら夕食を美味しくいただき、お茶の時間がやってきました。
向こうからきれいな百貨店の紙袋を持ってくるお義母さんの姿を見て、「あ、私のために買って用意してくれたんだ!」と思いました。
「これ、一目ぼれして。気に入ってくれるとうれしいんだけど。でもきっと喜んでくれると思うわ! 開けてみて!」と、キラキラした瞳でお義母さんが私に手渡してくれたプレゼントは、よく知っているサイズの長方形でした。
「ネックレスだ!」と100%確信し、満面の笑みでラッピングの包装紙をはがす私を、これまた満面の笑みで見守るお義母さん。
予想を超えてきた箱の中身
包装紙の次に出現した白いきれいな化粧箱を見て、ネックレスという確信は120%になり、私はワクワクしながらその蓋を取りました。そして、時が止まったのです。
「ネーム入りの夫婦箸なの。で、このお箸置き、かわいいでしょ~! ロックちゃんに似てたから!」と、変わらずハイテンションなお義母さん。
ロックちゃんとは、お義母さんの弟家族が飼っているシーズー犬。お義母さんが“シーズー犬界で1番の美人”と可愛がっていると聞いたことはありましたが、実際に会ったことは1回あるかないかのワンちゃんです。
「ロックちゃん…」
ネックレスをプレゼントされると思って最高潮だったテンションをどうごまかそうかとヒヤヒヤしましたが、お義母さんはその後もお箸とお箸置きを熱く語るのに夢中で、私の動揺にまったく気付くことはなかったのは幸いでした。
達筆の字体で彫られた私と主人の名前入りの漆塗りの高級箸に、ロックちゃんというお義母さんが可愛がっている犬に似たリアルなシーズー犬の陶器のお箸置き…。
この日以来、私は誰からのプレゼントも最後の最後まで気を抜かないと誓いました。当時は、「え?」と思ったプレゼントでしたが、夫婦仲良く、お箸がボロボロになるまで使いました。
あれから20年。私はあの時と変わらず愛らしいお義母さんが大好きです!
(ファンファン福岡公式ライター/原田らむね)