結婚以来、毎年母の日には、義母にお花やお菓子を贈っています。それを横で見ている夫はイベントに無関心な超合理的タイプ。私だって二児の「母」ですが、もちろん夫は気にするはずもなく…
お店で見かけた素敵なふたり
息子が5歳、娘が2歳だった頃。とあるショッピングモールへ家族で出かけました。目的は、お義母さんへの母の日の贈り物選び。
王道はカーネーションと焼き菓子のセットですが、だんだんマンネリ化。そこで目新しいものを求めて、時間をかけてお店を回るのが毎年の恒例です。
その日も、幼子たちを連れて歩き回っていると、おしゃれな花屋が目に留まりました。その店は、色とりどりの生花やアレンジフラワーが美しく咲き誇っています。
店内に入り、商品を見比べていると
「うわあ、きれい」後ろから無邪気な声。振り向くと、私たち家族の後ろに小学校低学年くらいの男の子。その子の横に立つ男性は父親でしょうか。
ふたりは
「こんなのあげたらお母さんきっと喜ぶね」
「お母さんは黄色が好きだよね」などと、きれいなお花を前にお母さんの話で盛り上がっています。なんて素敵な男性たち!
夫よ、なぜ気づかない! 気づけない!?
「お母さんが好きな色を知っていて偉いね。プレゼントはそうやって選ぶんだよ」父親であろう男性は、男の子に優しく話しかけながら、男の子の手を引いて店の奥に進んでいきました。
きちんと子どもに伝えている。贈り物とは、相手を知り、相手を思い、相手の好きなものを想像して選ぶんだよって。
「あのお父さんいいね。わが子にちゃんと大切なことを教えられて素敵よね」
決して意図した当てこすりではなく、思ったままを口に出した私。あっ、しまった。見ず知らずのお父さんと夫を比べるような言い方に聞こえたかな。気を悪くしたかも。そっと夫の横顔をうかがうと、彼はまったく意に介さず大あくびをしていました。
少しは気遣ってほしい、私だって母なんです!
父子の姿をまぶしく見つめていたのは私だけ。夫は、彼らの姿と自分を重ねることもなく、何も気づきません。子どもたちをうながして、一緒にお母さんの好きな花を選ぼう! などと、思いつくようなタイプではないのです。
飾るものより食べられるもの、残るものより消えるもの。夫は常にそう考えるタイプの人。お花に関しても、花束より鉢植え。鉢植えよりブリザーブドフラワー。とにかく、もらって手間のかかるものはバツ。合理的な思考回路の持ち主だと知っていて夫と結婚したとはいえ、間抜けなあくび顔になんだかイラッ。
その後、娘は成長するにつれ
「はい、あげる」と周りのお友達の影響なのか、母の日には手作りのマッサージ券やお菓子をプレゼントしてくれるようになりました。
しかし、息子は母の日はもちろん家族の誕生日などにも無関心な、夫そっくりの性格に育ちました。イベントやサプライズを
「めんどくさ」と言い切る口調は夫2世。
素敵すぎた父子の姿の余韻にひたりながら、義母へのブリザーブドフラワーを選び、店内を退屈そうにぶらつく夫に見せました。
「お義母さん、赤が好きだよね」
「いや、基本的にグレーじゃないの」は? グレー? 続いて夫の腕にじゃれついていた息子が
「おばあちゃんは茶色だよお」
絶句! 花屋で、カラフルな色のお花を目の前にして、なぜふたり揃って義母の服の色を想像する? だめだ、わが家の男たち… 先ほどの素敵だった父子の姿を再び思い出し、心底羨ましく思ったのでした。
(ファン福岡公式ライター/山ナオミ)