助産院で、アットホームなお産! なんて浮かれていたら、陣痛中に助産師は「なんかあったら呼んで〜!」と不在に。出産直前にお風呂に入り、畳で出産!? とカオスな展開。お産のイメージが覆され、何もかもが意外だった話です。
助産院を選んだ理由
私は助産院で出産しました。と言うと
「なんで?」
「怖くなかったの?」と質問されることが多いのですが、理由はズバリ「自分の望むお産がしたかった」からです。
医師が常駐していないため、医療の介入がない助産院。陣痛促進剤を投与されることも、赤ちゃんが出やすいように会陰を切られることもなく、分娩台もありません。陣痛を乗り越え自然に産まれる時を待ち、体勢も自分で決めて産みます。そのことを知った時に、私は恐怖よりも「いいな。挑戦したい!」という謎のやる気で満ちあふれ、妊娠が分かってからもその意志が変わる事はありませんでした。
いよいよ助産院で出産!
大口を叩いた私でしたが、妊娠後期にはすっかり怖気付き、本当にこの和室で産むのか… 畳の上で陣痛に耐えるのか… と不安は大きくなるばかりでした。
そしていざ迎えた出産当日。
「陣痛が来て病院に行ったのに、家に帰された」と病院出産した先輩ママから聞いていたので、ビクビクしながら助産院に電話すると
「来なよ〜」といつも通りゆるい返答。職場から慌ててきた夫が到着すると
「パパも来たし、2人でゆっくり過ごしてね〜。なんかあったら言って!」と助産師さんはニコッと笑いながら2階にいき、夫と呆気に取られてしまいました。
「本当にいなくなっちゃったね」と言う間にも陣痛は強くなり、楽な体勢を模索しながら夫と一緒に陣痛に耐えました。いよいよ、痛みが尋常じゃなくなり助産師さんを呼ぶと
「おっ! 順調~。今何がしたい?」と聞いてくれました。考えるよりも先に
「お風呂に入りたいです…」と言葉が出たことに自分でも驚きながらも、急遽お風呂に入ることに。
陣痛がスーッと楽になり
「これから産むんだっけ?」と思うほどリラックスしたムードで私、夫、助産師の3人でニコニコしながら話していました。しかし
「あ! 多分生まれる!!!」と直感で感じた私が叫び、お風呂から出てびしょびしょのまま廊下を走り
「走っちゃだめ!」と助産師が追いかけ、その後を濡れた床を拭きながら夫が追いかける、とシュールな急展開。
びしょびしょのまま畳に倒れ掛かった私に
「子宮口全開だ! 頑張ろう!」と助産師が声とバスタオルをかけてからはあっという間でした。畳の上、3人だけで娘が生まれる瞬間を穏やかに迎えました。
「自分の力で産む」ということ
陣痛に耐えた時間、痛いのに温かな気持ちに包まれたお風呂場、3人から4人になった瞬間… 助産院だからできた経験ばかりで、どの瞬間も宝物のようでした。本陣痛が来てから7時間と出産も非常にスムーズでした。
ですが、「自分の力で産む」ということが、どういうことかを身をもって痛感したので
「助産院アットホームでいいよ!」と誰にでも勧める事はできません。
痛みが辛くても無痛分娩に切り替えたり、促進剤を打ってもらう事はできないし、痛くない体勢を見つけるのも、産む体勢を決めるのも自分。
「いいな。挑戦したい!」という理由で助産院で産んだ私が言うのもなんですが、医療介入がない分、妊娠中から体力や自己管理能力、覚悟が問われます。素晴らしい経験でしたが、「自分が望むお産ができる」という大きなメリットの裏側も踏まえ、助産院出産を検討する人が増えたらいいなと思っています。
(ファンファン福岡公式ライター / Vanilla)