われ先にと他人を顧みない大人たち。小学校行事でのマナー違反を見ているのは、PTA役員だけじゃありません。先生や子どもたち、他の保護者も見ています。
PTA室は情報の集積所
PTAの役員をして2年目。最初はママ友から「どうしても」と頼まれて嫌々ながら協力していました。でも、今ではやっていてよかったと思っています。なぜなら、このPTA室には小学校で必要な話が全て集まってくるから。ママたちの情報網もさることながら、先生たちから様々な話が漏れ聞こえてきます…。
運動会の裏側は、ルール無用の場外戦
私が、運動会の警備で不法駐車を防ぐ役割に振り分けられた時のことです。正直「楽な仕事でよかった。来賓の人が来たら門を開けて通せばいいだけ」と思っていました。ただ、実際は…。次から次に現れる不届き者に対処する大変な役割でした。
祖父母含め家族総出の7人でやってきた派手な強面一家。停められないことを告げると、運転席の父が言いました。
「いいじゃん、おばさん! 一人ぐらいわかりゃしねーって」話してもわかってくれず、ぞろぞろと降りてくる始末。教頭先生を呼んで、駐車だけは断念してもらいました。
次に現れたのは、市長を名乗る不届きもの。黒塗りのセンチュリーで現れたスーツ姿の男性に騙されそうになりましたが、来賓リストに名前はありません。
「校長先生に確認します」と伝えると、ダンディーさは崩さずに
「忙しいだろうからいいよ」と逃げていきました。
ふらっと来た「忘れたお弁当を届けにきた校長の妻」という上品な初老の女性には困りました。校長先生に電話をしても「知らぬ、存ぜぬ」で、何もしてくれません。仕方なくお弁当を預かると
「よろしくね」とすんなり帰っていきました。
他にも、大きなドーベルマン2匹を連れて入ろうとする地域の人や、観客席で宴会を始めてしまうお母さん、目を疑いたくなるほど大きなレンズのカメラを持った怪しげな若者など。びっくりするほどトラブル続きでした。
種明かしは、終了後の片付け中に
「お疲れ様でした!」片付け中に元気に挨拶してきたのは、息子の担任のT先生。すると、もう6年も勤務している先生から種明かしがありました。
強面一家は、長男が3年生。家庭訪問に行った際に家がゴミ屋敷状態で、要支援家庭だということでした。市長を語る男性は、毎年市内どこかの運動会に現れるそう。過去に市長として厚遇してしまい味をしめたのだろうけど、もう市内中の学校が知っているとのこと。「校長の妻」に関しては、この先生も明言は避けましたが、「色々あります」と一言いただきました。
わが息子の反応に安心
家に帰ってきた息子が、いの一番に私に話したのは
「お母さんお疲れ様」びっくりしているとこんな話をしてくれました。
「あの怖い顔のお父さんと戦うなんて、お母さん強いね! ルールは守らないといけないと思う。可哀想なのは、Yくん(息子)なんだよ。『お父さんはおかしい』っていつも言ってる」
「校長先生の“愛人”も来てたでしょ? あの人よく学校に来てるんだよ。校長先生、いつも困ってる。6年生が『別れてるのに諦めないらしい』って言ってた」と息子がサラッと話すのには驚きました。「愛人」をどういうふうに理解しているのかわかりませんが…。
子どもの行事を見に行っているつもりでも、もしかしたら私たちの方が子どもに見られているのかもしれません。私の戦う姿、他の子どもにどう見られているかしら? と気になります。
(ファンファン福岡公式ライター/Hoshi.ma.k.a東京ビッグブッダ)