女性が多い職場では、誕生日プレゼントを贈りあう習慣があるかもしれません。私が勤めていた保育所は、職員全員が女性だったこともあり、誕生日には1人1人にプレゼントを贈っていました。楽しいイベントではありましたが、ある先輩の誕生日だけは憂鬱で…。
先輩の誕生日がやってきた
私が20代の頃働いていた保育所では、誕生日に1人ずつプレゼントを贈る習慣がありました。同僚の誕生日にはプレゼントを選び、自分の時はプレゼントを受け取る、楽しいイベントです。ある1人の先輩の誕生日以外は…。
7つ年上にちょっと面倒な先輩がいました。先輩は気分屋で、機嫌がいい時とそうでない時の対応が異なる性格。機嫌を損ねないよう同僚は常に気を遣っていました。そんな先輩の誕生日は最も憂鬱な時期です。
「今年はなにを贈る?」
「予算はいくらにしようか」
職員同士で中身がかぶらないように、予算は5千円で金額にも差がないように… 事前に相談します。
なぜこんなにも気を遣わなければならないのか。その理由は、先輩が誕生日プレゼントを毎年ひとつずつ評価するからです。
「あれは安物すぎる」
「こっちのブランドがよかった」
「色が気に入らない」
さすがに本人に直接は言いませんが、それでも人からもらったプレゼントをそんな風に言うなんて、先輩の神経が信じられませんでした。
でも適当な物を贈るわけにはいきません。自分の誕生日にはプレゼントを頂くので、きちんとお返しをする必要があったのです。
居心地が悪いプレゼント評価会
先輩の誕生日が過ぎたある日、恒例のプレゼント評価会がある日だと覚悟を決めて休憩室に入りました。
「こっちはデザインが気に入らなかったわ」私が席につく頃には、先輩は他の職員を相手に写真を見せながら評価会を始めていました。
「これは去年ももらったから、やめてほしかった」
「サイズが小さいから交換してもらった」延々と続く評価を聞きながら、自分が贈ったものはどう思われているのか気になっていたその時、先輩が私の肩を叩きました。
「今年のプレゼント、一番気に入ったわ!」先輩が興奮気味に言う意味を、その場にいた全員が知っていました。
「あんな高いものをありがとう!」
「いえ、気に入ってもらえてよかったです…」私の苦笑いには気付かず、先輩は上機嫌で休憩室を出ていきました。
顔をあげると同僚たちから、どっと笑いが起きました。
「今年はあなたのプレゼントが一番高額だったのね、おめでとう勇者!」驚くことに先輩は毎年、受け取ったプレゼントの値段を調べあげ、一番高額だった物に『気に入った』の称号を与えて同僚に自慢していたのです。
この年、称号が与えられたのは私が贈ったネックレス でした。実はプレゼント選びに時間がとれず、アクセサリー売り場で見つけた一万円ほどの限定商品を、予算オーバーと分かっていながら思いきって買っただけでした。
そのことを同僚に説明すると、ますます大笑いです。
「馬鹿ね、そんなにお金をかけてもったいない!」
プレゼントで大切なのは?
一緒に笑ってくれる同僚がいるから、ちょっと面倒な先輩の誕生日もおもしろおかしくやり過ごすことが出来ました。ちなみに『気に入った』の称号をもらったところで、先輩から私への誕生日プレゼントが豪華になる、なんてことはありませんでした。
友人同士でも誕生日プレゼントの贈り合いは楽しいイベントのひとつですね。でも金額をひとつずつ調べるなんて、やめておいた方が良い。そう思いながらも、ついつい気になるポイントなのかもしれません。
(ファンファン福岡公式ライター / ましまろ)