私が小さい頃、明治生まれの祖母は、ちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつ紹介していきます。
「ガサガサ、ゴトゴト」
雨が続いていたある日、床の下から音がした。
何だろうと思った祖母は、勇敢にも縁の下に入って行った。
そこは、十歳にならない祖母には広く暗い不思議な空間だった。
目が慣れてくると、たしかに何かがいる。
「ザッ!」近づくと犬のようなものが逃げて行った。
それから数日後、また音が聞こえた。
今度は潜らず、入口に芋を置いて待った。
五分、十分…出てきた!
それはたいそう痩せた子狸だった。
可哀想に思った祖母は自分が食べるつもりだった分の芋まで与え
「人に見られると獲られるから、早くお帰り!」と話しかけた。
すると食べるのをやめ、祖母の顔を見ながら子狸が口を開いた。
「デモ…アメ」
祖母には確かにそう聞こえた。
狸は雨が嫌いで、雨の日は巣から出ない習性があるそうだ。
祖母が十八歳でお嫁に行くまで、雨が降るとたびたび狸はやって来たという。
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