私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。今回は以前にアップしたその捌(はち)「はやく来い」の後日譚です。下記リンクから合わせて読んでみてください。
夏のある日、ずっと寝付いていた親戚の儀助さんの訃報が届いた。
周りの誰もが「もう長くはないだろう」と思っていたので驚きはなかった。
十二、三歳だった祖母は母親とお通夜に出かけた。
「この度はご愁傷さまでございます。ご回復を祈っておりましたのに、残念でなりません」と祖母の母がお悔やみを述べたが、喪主である奥さんの様子がおかしい。
悲しみではなく、驚愕の表情で固まっている。
違和感を感じながらも焼香を済ませ、いとまを告げようとしたとき、弔問客の話が耳に入ってきた。
「病気で亡くなったんじゃない?」
「海で見つかったんだ、停めてあった舟の下から。溺死だと」
「儀助さんは寝たきりだったろう?」
「動けなかったはずなんだが、この家から海まで浜に足跡が残っていたらしい。それですぐに見つかったんだ」
「やっぱりなにかに呼ばれたんだ! 海に連れて行かれたんだ!」
祖母は思った。
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