祖母が語った不思議な話・その肆(よん)「川が呼ぶ」

 私が小さい頃、明治生まれの祖母は、ちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつ紹介していきます。

イラスト:チョコ太郎

 祖母が十三の晩夏、ひどい吹き降りが何日も続いた。
 普段見慣れた川も表情を変え、溢れんばかりの濁流と化していた。

 そんなある日、祖母が父親と二人用事を済ませた帰り道、川に差し掛かると顔見知りの長二さんが立っている。
 「長二さん、川はこんなんなっとるから危ないよ」と思わず口に出た。
 長二さんはそれに答えず、ニコニコしながら川を見ている。

出典:チョコ太郎

 父親も心配になったのか二三、言葉を交わした後、祖母の手を強く引いてその場を離れた。
 二人が何を話したのか祖母はよく聞き取れなかったが、何故か尋ねてはいけないような気がして黙って歩いた。

出典:チョコ太郎

 翌日、長二さんがいなくなったと大騒ぎになった。
 村中総出で探したが、見つからなかった。

 その夜、隣の部屋で父親が「『…が来る…で待っとる』って言うてたもんな」と話すのが聞こえた。
 「川に呼ばれたんだ!」祖母はそう思った。

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