2020年7月末、義父(88歳)が他界しました。新型コロナウイルスがまん延している中、私は小規模な葬儀をするものだと思っていましたが、夫の親族の考えは正反対でした。
入院や手術のたびに「最後のお別れ」を繰り返す義父たち
夫の親族は、親戚付き合いをとても大切にしています。10年ほど前から義父は入院や手術を繰り返していましたが、そのたびに、遠方からでも義父のきょうだいやいとこ、そしてその家族まで駆け付けました。
もちろん義父母も同様です。義父母が遠方の親戚の見舞いに行く時は、夫が仕事を休んで付き添わなくてはならないため、私は「親戚付き合いが深いのも、なかなか大変だな」と思っていました。
義父は
「きょうだいは、みんな高齢だからね。これがきっと最後のお別れになるから」なんて言いながら、何度も「最後のお別れ」を繰り返していました。
そんな義父が7月末に他界しました。その頃は、全国で新型コロナウイルスの感染者が再び増加して、ニュースでも「お盆の帰省は控えてください」と呼び掛けられていました。
そんな状況だったので、私は義父の葬儀は最小限の人数での家族葬になると思っていました。しかし、夫は意外な言葉を口にしたのです。
新型コロナウイルスが怖くないの? 私の決断は…
夫「喪主の妻になるから、いろいろ大変やけど頑張って!」
私「こんな時期なのに、大きな葬儀をするの?!」
私は新型コロナウイルスが流行してからは、スーパーと薬局、ホームセンターくらいにしか行っていませんでした。大好きな映画もショッピングもランチも我慢していました。それはひとえに、持病のある実母に感染させたくないからです。
夫はそんな私の気持ちを分かっていたため、大きな葬儀を開くことに反対したらしいのですが、義母と親戚一同をどうしても説得できなかったと言います。
しかも、参列するのは近くに住む親戚だけではありません。「コロナを怖がって最後のお別れをしないのは、気持ちが収まらない!」と東京にいる親戚一同は、参列だけでなく会食の席まで設けるように夫に言ってきました。
当初感染者が多過ぎて「GoToトラベルキャンペーン」の対象外になった東京から、家族総出でやってくるなんてドン引きです。もしもの事態に備えて何度も「最後のお別れ」をしていたのに、新型コロナウイルスが怖くないのでしょうか。
もちろん、私にだって義父をしのぶ気持ちはあります。新型コロナウイルスさえなかったら、盛大に見送りたかったです。 そんなことを思っていても、うちの家族が「葬儀を欠席する」なんて選択肢はありません。こうなったら、ソーシャルディスタンスを徹底して、「家族を守ろう!」と決意しました。
葬儀当日。私は、慣れない喪服に身を包み、夫の親戚と対峙しました。
高齢の叔父や叔母はすぐにマスクを外して、あちこちに置きます。そして、10歳の娘にベタベタと触りました。
自分が保菌者かもしれないなんて1mmも考えていない行動に、私の顔は引きつる一方。さりげなく娘を連れて立ち去りながら、「マスクをさせていて良かった」と私は心底思いました。
(ファンファン福岡公式ライター/くりこ)