私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
「初めて見た時からなんとなくいやな感じがしたんだよ」祖母はそう話し始めた。
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祖母が七歳の頃、元は宿屋だった叔母の家が改築された。
平屋に二階を造るという、けっこう大規模なものだった。
お披露目に呼ばれた祖母は、新たに造られた二階への階段の踊り場に姿見(鏡)があるのに目をとめた。
それはとても大きく、そして古かった。新しい階段とはちぐはぐで、そこだけが暗く感じた。
祖母は足早にその横を通りすぎようとした。
「?」
姿見の端に黄色い着物ちらっと見えたような気がした。戻ってじっと見たが何も映らない。
二階に上がり宴席の叔母に姿見のことを尋ねると
「改修の時に天井を壊したら立派な鏡があったの。古いけど捨てるのももったいないから飾ったのよ」と嬉しそうだった。
夜も更けお開きとなり皆が階段を降りていると、一人の女性が滑り落ちた。右脚の骨が折れていて大騒ぎになった。
それから半年ほどして祖母が叔母の家に行くと姿見が無い。
「あれから何人も階段で怪我をしてね。それも右脚ばかり…気持ちが悪いから外そうとしたら粉々に割れたのよ。私もそれで切っちゃって」
そう話す叔母の右脚には包帯が巻かれていた。
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