福岡市公式インスタグラム連動企画「#fukuoka_people」。福岡で魅力的な活動をしているさまざまな方にフォーカスを当て、プロジェクトの内容はもちろん、活動の裏側や熱い思いを伺います。今回は、福岡発のオートクチュールドレスブランド〈Quantize(クォンタイズ)〉のCEO・川野季春さんが登場。先日開催された「福岡アジアデザイナーズショー2020」の中心人物であり、日頃から既存のファッション概念にとらわれない取り組みを行うアグレッシブな女性です。
ファッションを、アートやエンターテインメントとして昇華させたい!
11月20日に行われた福岡市共催の「福岡アジアデザイナーズショー2020」(以下、FADS)は、福岡美術館初のファッションショーとして話題を集め、わずか3日間で観覧チケットが完売! 世界で活躍するコスチュームデザイナー・ARAKI SHIRO氏によるトークショーやファッションショー、厳しい審査に通過した若手デザイナーのファッションショーが行われ、福岡市立美術館が幻想的な異空間と化しました。 FADSを主宰者であり、クォンタイズのCEOを務める川野季春さん。どういう経緯でこのFADSを立ち上げたのでしょうか。 川野:「ARAKI SHIROさんの作品は洋服ではなく、もはやアートですよね。世界レベルの人が福岡を拠点としているのに広く認知されてないことがもったいない…! そんなふつふつとした思いを抱え、当時リニューアルしたばかりの福岡市立美術館へ足を運びました。その時に思ったんです、『ここでファッションショーを開きたい!』と。 ちなみに、ニューヨークやパリの美術館には服飾部門があり、メゾンブランドのアーカイブ展などが開かれています。私もニューヨークに住んでいた頃は、ファッションの展覧会を見るために美術館によく行っていました。けれど日本の美術館はファッションとの繋がりがあまりないので、自らそういった場を設けてみたいという思いが膨らみました」
ファッションショーの舞台で服を魅せることは、自然な流れだった。
もともとクォンタイズ自体、ファッションショーから生まれたブランド。川野さんが大学時代、学園祭の実行委員としてショーを運営する際に、着るための服ではなく、見ることで楽しみを与えるエンターテインメントをコンセプトに立ち上げたブランドなのです。 ブランド名の頭文字に経営理念が込められており、Quality、Unique、Art、New、Try、International、Zeal(熱意)、Entertainmentが掲げられています。まさに今回のFADSは、クォンタイズの指標に当てはまり、やるべきことの集大成だったと川野さんは語ります。 川野:「ショーを企画・運営することは、ブランド立ち上げ前の学生時代からずっとやってきたこと。またクォンタイズも『Fashion is Entertainment』をコンセプトに15年間展開してきたので、FADSを行うことは私の中で真新しい取り組みではなく、これまでの延長といった自然な流れでした」
まさかの展開! 開催日直前でファッションショーの自粛が決定。
本来は今年の3月14日に開催する予定だったFADS。昨夏にイベントのリリースを行い、デザインコンテストの審査や協賛集め、ショーの演出などが着々と進められていた矢先、新型コロナウイルス感染拡大の危機が迫る事態に。他のイベントと同様に、FADSも開催を自粛することになりました。 川野:「こればかりは仕方ないことですよね。でも、私の中で『中止』という選択肢はありませんでした。そもそも単発で終わるイベントではなく、何年も続けていくつもりで立ち上げたので、来年でもいいから絶対に開催しようと思っていました」 延期といっても、振替日の目処を立てられない状況が続き、スポンサーとの契約がすべて白紙となり、ショーの衣装や照明、音楽、キャスティングなどの舞台構成もリセットする羽目に。さらにチケットの返金対応も重なり、苦労の二文字では言い表せないほどの苦境に立たされたそうです。
試練が続く中で見えた光。それはみんなの熱意だった。
FADSの振替日が決まり、改めて開催に向けて取り組む中、試練となったのはやはりコロナウイルスに関する“制限”でした。三密を避けながら開催しなければならないため、会場の収容人数やスタッフの人数を減らす必要があり、ヘアメイクやスタイリストの段取りが大きく変わったことで怒涛の舞台裏だったとか。 「与えられた条件の中でどう最大限に取り組むか。ギリギリのラインまで妥協せずにこだわりを貫くためにはどうしたらいいか。そういったことに頭を使う日々でしたね」 そんなめまぐるしい状況下で“人間力”の重要性に気付づき、試練を乗り越える糧になったと言います。 「デザイナー、ヘアメイク、照明、音響、モデルなど、ファッションショーに関わるすべての人がクオリティーを突き詰め、納得がいくまで各自のクリエーションを改良し続けてくれました。“ゲストを感動させるために絶対に妥協しない”という強いプロ意識と、“ショーに参加できて嬉しい”という謙虚な姿勢。どちらにも胸を打たれました。応援してくださる人も含め、さまざまな方の熱い人間力のおかげで、コロナ禍の試練を乗り越えられたと思います」
エンターテインメントの一つとして、楽しみや夢を与えるために。
ファッションショー当日は、観覧者の反応はもちろん、魂が宿った舞台衣装を見て、これまでのさまざまな思いが蘇り、涙が溢れるほど感動したと川野さんは語ります。観覧者の親子から「ショーを見て、娘がモデルになりたいと言っています」との声が寄せられ、若い世代に夢や刺激を与えられたことも川野さんの喜びになったとか。 「福岡には才能に溢れたデザイナーやクリエイターがたくさんいます。ショーの中でデザインコンテストを開いたのは、そういった人材を発掘し、作品を発表する場を設け、福岡で飛躍する何かのきっかけになればという思いがありました。高感度な若い子や業界の大人たちを巻き込みながら、福岡の感度を盛り上げるショーに育てていきたいです!」 最後に、クォンタイズとしての展望についても伺いました。 「アートやエンターテインメントは生活必需品ではありませんが、人生を豊かに過ごすための大事なエッセンスです。歌舞伎や舞台と同じような感覚で、服を見ることで楽しめるエンターテインメントを今後もたくさん展開していきたいと思っています」
FADSについて、「この先も福岡を代表するファッションイベントとしてみんなで盛り上げていきたい」と語る川野さん。またクォンタイズのCEOとして高感度なファッションを展開していくと同時に、若い才能をバックアップしたり、福岡市全体のファッション&クリエイティブの感度を底上げしたり、川野さんの今後の動きも楽しみです。引き続き、ホームページやSNS等で注目しましょう!
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