「子どもの癇癪が激しすぎる」「学校でも感情的に暴れてしまうことがる」など、小学生の子どもの癇癪について悩んでいる人も多いのではないでしょうか。いつかは落ち着くと思って乗り切っていた癇癪問題も、小学生まで続くと親も不安になりますよね。今回は、小学生の癇癪について、原因や対処法を考えてみました。
子どもの癇癪とは?
そもそも「癇癪」とはどのようなことを指すのでしょうか。広辞苑で引くと癇癪は“神経過敏で怒りやすい性質。また、怒り出すこと。”と掲載されています。しかし、怒りやすい子やすぐにイライラする子は短気な性格として捉えられており、癇癪はまたちょっと違ったイメージがありますよね。
癇癪はもっと怒りやパニックの状態が長く続き、暴れるなど動作も加わることが多いようです。
幼児期と児童期の癇癪の違い
一般的に癇癪は、幼児期の1歳~2歳頃にみえ始め、6歳前後で落ち着くことが多くあります。小学生の癇癪は幼児期のものと少々異なり、原因や癇癪の様子にも違いがあります。
幼児期の癇癪
1歳くらいに始める癇癪は、子どもが自己主張をし始めることで起こるものです。まだうまく言葉がでないことで、思ったことを伝えらえないもどかしさから泣いてしまったり、イヤイヤと話を聞かずに床に伏せる姿なども見られます。
お腹がすいた・眠いなどの生理的な欲求や、疲れた・お腹がいたい・抱っこしてほしいなどの身体的な欲求が原因となり、ぐずったり癇癪を起こす子も。
癇癪を起こした時の行動としては、大声で泣き叫ぶ・手足をばたつかせる・物を投げるなどの行為が多いでしょう。中には、自分の頭を壁や床に打ち付けたり、自分の腕を噛んだりしてしまう自傷行為や、友達のことを噛んだりひっかいてしまう他害が見られることも。
癇癪を起した時は比較的短時間で落ち着く場合が多く、親や保育士・幼稚園の先生などの対応で気分を切り替え次の行動に促しやすいこともあります。
児童期の癇癪
小学生に見られる癇癪は、言葉が出ないというわけではなく、自分の感情をコントロールできない時や思い通りにならない時、友達とのトラブルで納得いかない時などに多く現れます。
家での癇癪時は、親や兄弟に当たることも多く、力が強くなり体が大きく成長した小学生なのでお互いにケガをしてしまう危険も。物に当たってしまう子は、教科書や本、ゲーム機を投げたり、壁を殴ったりして怒りやとまどいの感情を表しています。
学校で癇癪を起す際には、周りが騒がしいことも刺激となり、なかなか感情を切り替えられない・落ち着かない様子で癇癪が長引くこともあります。友達に手を出してしまったり、学校の備品を壊してしまったなどのトラブルに発展してしまうことも。
学年が上がるごとに、癇癪が目立ってしまい子ども自身が浮いてしまうという心配もあるでしょう。ギャングエイジと呼ばれる小学3、4年生くらいは子ども達が小集団をつくり友達との関係をより濃くして社会性や協調性を身に着けていきますので癇癪が原因でトラブルにもなりやすいようです。
あまりに癇癪が強い子だと、仲間外れにされたりクラスメイトとうまく関係が気づけなくなってしまうという悩みもでてきますね。
癇癪の原因は発達障害?
小学生になって、癇癪がより強くなったり、なかなか落ち着かないなどの場合は軽度の発達障害が原因で起こっている可能性もあります。
ただ、癇癪=発達障害というわけではありません。発達障害は生まれつきの特性の一つ。癇癪はその特性の中にも含まれますが、個人の性格や育った環境が要因となり現れる場合もあるため、うちの子は発達障害なのかと決めつける必要はありません。
しかし、何かしらの発達障害を持っていた場合は療育などの対応で子ども自身が安心して過ごせるようになったり、落ち着くことも多いです。心配な場合は小児科や専門機関に相談したり、発達検査をしてみるのもおすすめです。
発達障害が原因による癇癪
子どもの発達障害といっても、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・LD(学習障害)など種類はさまざま。同じ発達障害の子でも一人一人個性がありこだわりや特徴も千差万別。ただ、この発達障害の中でも癇癪の要因になりやすいのがASDのお子さんです。
ASDには、言語発達の遅れや相手の気持ちを理解できないなどの特性があります。うまく気持ちを伝えられないこと、相手の気持ちをイメージできないことから一方通行なやり取りになってしまい、思い通りにいかない時に癇癪が起こりやすいようです。
また、こだわりの強さも癇癪の要因に。日々の生活や遊びなど自分の中でルーティーンが決まっていることが多く、それを崩されることを激しく嫌う特徴が。小学校生活を送るうえで、周りと合わせなくてはいけない時間が増え、より癇癪が目立っている場合もあるでしょう。
子どもの中には癇癪をコミュニケーションの手段として使っているという場合も。それが習慣化すると癇癪が長引いたりなかなか治らない状態になり悪循環になってしまします。
癇癪への対処方法
小学生の子どもの癇癪を親子で乗り越えるには正しく落ち着いた対応が必要になっていきます。親ができる対処法をいくつかご紹介します。
癇癪が起こる前の状況を確認
まずは、お子さんがどんなタイミングで、どんな状況だと癇癪が起こりやすいのか、癇癪を起す前の状況を確認してみましょう。
例えば、周囲が騒がしい時になりやすい子・宿題をしているとき・特定の授業の時などなにか共通する場面があるかもしれません。
集中している時に誰かに邪魔をされたことで起きる癇癪なら、一人で集中できるような場所を確保してげる。ルールのある遊びや運動の際に癇癪を起しやすいなら、前もってその子にルールを説明してあげるなどの対策もできるでしょう。癇癪が起きる前に防げることがあれば試してみるのがよいですね。
安全を確保し、時間をとって落ち着かせる
小学生の癇癪は一度起きるとなかなか気分の切り替えができず長引てしまうことも多いです。急いでいるときや、忙しい時には親も焦って適当な相槌や対応になってしまいがちですが、そこはグッとこらえてゆっくりと本人の怒りや興奮がおさまるまで時間をとってあげましょう。
その際は、周囲の安全を確保すること。兄弟や友達などがいる場合は少し離れたところに誘導し、見守ってあげるのがよいかもしれません。
子どもの気持ちに寄り添う
子どもが癇癪をおこしている間は、親が何を言っても聞いていなかったり頭に入っていない場合も。叱りたい気持ちもわかります。が、まずは子どもの気持ちに寄り添って共感したり、うまく表現できない子には、「○○したかったんだね」「○○が嫌だったんだね」などと代弁してあげると気持ちの整理がつきやすくなります。
いけないことはきちんと伝える
友達を叩いてしまったり、先生に暴言を吐いたり、ものを壊してしまった時など、いけないことはしっかりと伝えていくことも大切です。
小さな頃から続く癇癪の場合は、泣けば、暴れれば大人や友達が言うことを聞いてくれたという過去の経験から小学生になっても同じように行動している子もいます。話が理解できている時は、ダメなこと・危険な事は繰り返し伝えましょう。
違うことで気をそらしたり場面転換をする
癇癪をおこしたときに、何か別の物に興味の対象が移るとスパっと切り替えられる子もいます。ちょっとした癇癪の際には、別のものに興味が向くような遊びに誘ったりしてみるのもあり。
となりの部屋や空き教室など場所を移して気分がおさまるのを待つという方法もよいでしょう。
感情の表現の仕方を練習する
小学校中学年・高学年になると自分が周りよりもイライラしてしまいやすい性格だ理解している子、ダメだと分かっていても気がおさまらず癇癪をおこしてしまう子もいます。
そのような子どもには、怒りや不安の感情を数値化して表現してもらったり、何かに例えて話してみると落ち着きやすくなることも。例えばイライラ度合いを%やレベルで聞いてみて、怒り→暴れるという表現方法を変えていけるとよいですね。
対応の仕方を学校と共有する
自宅以外の学校などでも癇癪が見られる場合、自宅で実践してよかった対応法などがあれば担任の先生や学校と共有しましょう。
反対に、学校での対応などで効果が見られたものなどは教えてもらうとよいですね。𠮟り方や大人の対応が矛盾していたりバラバラだとこだわりの強い子などは特に混乱して余計に癇癪を起しやすくなります。学校と家庭で上手く連携できるように相談してみては。
子どもの癇癪につい親もイライラしてしまうことがありますが、怒鳴ったり強い口調で叱るのはNG。抑圧的な行動が子どもの癇癪の原因となり、親の影響で強い口調で癇癪をおこしやすくなる場合もあります。
子どもの癇癪に悩んだら…
小学生の癇癪について、親だけでは解決できない時や発達に心配な時もあるでしょう。そんな時には、無理せず行政のサービスや小児科などに相談してみてください。地方自治体で様々な相談機関があります。
スクールカウンセラーに相談
まずはお子さんが通われている学校のスクールカウンセラーに相談してみるのもよいでしょう。いじめや不登校など子ども自身の悩み相談に乗ってくれるというイメージが強いですが、保護者からの相談も受け付けてくれます。学校配属のカウンセラーなら、教員と保護者との連携をとりやすく学校での情報共有もしやすいという点が。
しかし、スクールカウンセラーの資質や経験は学校ごとに違いが見られたるなどの課題も指摘されてます。(参照:2 スクールカウンセラーについて:文部科学省 (mext.go.jp))
地元の教育相談センターに相談する
都道府県や市区町村には子どもの発達に関する相談窓口が設置されています。対象となるお子さんによって(乳幼児か児童かなど)窓口が異なる場合もあるので、事前にチェックしておくとよいでしょう。
例えば、福島市には「子ども総合総合相談センター」、東京都なら「東京都教育相談センター」が設置されています。福島市の子ども総合相談センターは、電話やLINEで気軽に相談することが可能。東京都の教育相談センターは、電話やメールの他、来所して直接話を聞いてもらえます。
市川市で行っている教育相談室は、予約制の面談で子育て中で生じる様々な悩みに、専門的知識を持つ相談員が面接による相談やカウンセリングを行ってくれます。こちらは場合によって自宅や希望の場所での面談も可能。
参照:福岡市こども総合相談センター えがお館 (fukuoka.lg.jp)/東京都教育相談センター (tokyo.lg.jp)/教育相談について | 市川市公式Webサイト (ichikawa.lg.jp)
発達障害が心配な場合は病院や児童発達センターに
あまりに癇癪が強い場合や、子どもの発達に心配がある場合には、発達障害者支援センター・児童発達支援センターなどの専門機関に相談するのもよいでしょう。発達相談はハードルも高く感じなかなか一歩踏み出せないという親もいるかと思います。そんな時はかかりつけの小児科などに相談してみるのもあり。
児童の療育相談などは実施の場所が限られており、すぐに面談してもらえない場合も多いようです。気になる場合は早めに一度面談の予約や電話相談ができるかなど問い合わせしてみるのをおすすめします。
(参照:発達障害者支援センター・一覧 | 国立障害者リハビリテーションセンター (rehab.go.jp))