子どもがゲーム依存症?家族の接し方で注意したいポイントは

6歳・8歳の息子を持つママライター、永野栄里子です。

ネットを通じたオンラインゲームを中心に、ゲームに依存する子どもの問題は世界中で深刻視されています。もし子どもがゲーム依存症になってしまった場合、家族はどのような対応をすればよいのでしょうか。

今回は、ゲーム依存症の子どもへの家族の接し方を解説します。正しい接し方を理解し、克服に向けた取り組みを考えましょう。

目次

ゲーム依存症とは

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まずは、ゲーム依存症の定義や国内でのゲーム依存症のこどもの割合などを見てみましょう。

WHOの定義

「ゲーム依存」「ネット依存」と聞くと、漠然と「日本での問題」と捉えてしまう人もいるかもしれませんが、世界でもこうした症状は深刻視されています。WHO(世界保健機関)は2019年5月に、「ゲーム障がい」を国際疾病分類とし、次のように定義づけしました。

・ゲーム時間などのコントロールができない
・生活上の関心事や活動より、ゲームを優先する
・何か問題が起きていても、ゲームを続ける
・個人、家族、社会、教育、職業、その他の重要な機能分野において、著しい障害を引き起こしている

これらの状態が12か月以上続く場合を「ゲーム障がい」としていますが、12か月未満の場合も重症であれば「ゲーム障がい」と診断される場合があります。

ゲーム依存症の子どもの割合

2022年に長崎大学の今村明教授らが実施した調査によると、ゲーム依存症に該当する可能性がある小学生は7.3%、中学生は7.5%だったそうです。

調査対象は、長崎県内の小学4年生から高校3年生。ゲーム依存症の傾向にある子どもの平均ゲーム時間は、平日は2時間以下が多いものの、休日は6時間以上という回答が最も多い結果となりました。

同研究によると、ゲーム依存症でない子どもも、新型コロナウイルス流行後はプレイ時間や課金額が増えているようです。

ネット依存にも注意!

ゲーム依存症の子どものなかには、「オンラインゲーム」を過剰に使用するケースも多いです。KDDIの2021年の調査によると、小学生のネット依存率は年々増加しており、2020年には13.7%となっています。また、同年の中学生のネット依存率は18.9%でした。

オンラインゲームはもちろん、SNSや動画視聴など、スマホやパソコン、タブレットなどを見る機会が多い子どもは、ゲーム依存症とともに、ネット依存症にも注意する必要があります。

【ゲーム依存症の家族の接し方】3つの正しい対処方法や脱却方法についてご紹介 https://surala.jp/column/childcare/6771/
長崎大学 https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science284.html
スマホ依存率が増加中…現役高校生にスマホとのつき合い方を直撃インタビュー  https://time-space.kddi.com/au-kddi/20210302/3071

ゲーム依存症の原因と兆候、起こり得る問題

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ゲーム依存症になる原因や、依存の始まりにみられる兆候を知っておくと、子どもの状態から「ゲーム依存症かもしれない」と判断できます。「ゲーム依存症=よくないもの」というイメージはありますが、具体的にどのような問題が起こる可能性があるのでしょうか。

ゲーム依存症の原因

長時間ゲームをしていると、脳内にドーパミンが多量に分泌され、依存が形成されます。これは、ギャンブルやアルコールなど、その他の依存症と同じ原理です。ドーパミンの分泌が過剰になると、前頭前野の機能が低下し、感情のコントロールが難しくなります。

中学生くらいまでの子どもは、前頭前野が発達段階です。そのため、少ない刺激でも依存症になりやすい傾向にあるといわれています。

心理的な問題から、依存を引き起こすケースもあります。家族との関係がよくない、学校が楽しくなく不登校ぎみ、趣味や習い事など没頭できるものがないなど、原因はさまざまですが、現実世界に「居場所がない」と感じる子どももいるでしょう。すると、ゲームの世界に閉じこもってしまう可能性があります。

ゲーム依存症に見られる兆候

ゲーム依存症は突然なるものではなく、以下のような兆候が見られるケースが多いです。

・ゲームをする時間が以前よりも非常に長くなった
・深夜までゲームをしている
・夜更かしが増えたため、朝起きられなくなった
・ゲーム以外のことをしている時間も、ゲームのことが気になっている
・ゲーム以外のことには興味がない
・ゲームに関する注意をすると、感情的になって怒るようになった
・ゲームの使用時間や方法について、うそをつくようになった
・課金額が多い

当てはまるものが多ければ多いほど、ゲーム依存症の傾向が強いといえるでしょう。

ゲーム依存症はどのような問題を引き起こす?

ゲーム依存症になると起こり得る問題には、次のようなものがあります。

・不登校
・学力低下
・睡眠不足
・攻撃的な言動
・視力低下
・腱鞘炎
・運動不足
・人間関係の悪化 など

長時間ゲームを続けることで睡眠不足に陥り、朝起きられずなかなか学校に行けない状態が続けば、不登校になる可能性があります。学校に行っても集中力が低下し、成績が下がるケースは少なくありません。また、外での活動が減ることによる運動不足、長時間画面を見て起こる眼精疲労や視力低下、コントローラー操作での腱鞘炎など、身体への影響も深刻です。

ゲームで脳を刺激されると、感情のコントロールが難しくなることもあります。常にイライラし、ものに当たる、暴言を吐くなど、人間関係に影響するような事態に陥るケースも見られます。

【ゲーム障がいの小学生の症状・特徴】3つの原因や親ができる支援を徹底解説 https://surala.jp/column/psychology/7113/

ゲーム依存症の子どもへの家族の接し方

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「依存症」と聞くと、依存しているものから遠ざければ改善されると思う人も多いですが、ゲーム依存症の子どもを突然ゲームから切り離すのは簡単なことではありません。症状改善には、家族の接し方も大きく影響します。もし子どもがゲーム依存症になってしまったら、家族はどのように対処すればよいのでしょうか。

無理に取り上げるのはNG

「ゲームが自分の居場所だ」と思っている子どもからそれを取り上げてしまうと、ゲームへの執着をさらに強める可能性があります。場合によっては暴力などの大きなトラブルに発展しかねません。

本人と相談しないままにゲームを取り上げたり、ネットを切ってゲームをできなくしたりするのは「絶対NG」だといえます。

正論をふりかざさない

「ゲームのしすぎでこうなっている」「ゲームを辞めないとどうなるか」など、正しい理論で理解して欲しいと思うのは当然だといえます。しかし、正論をふりかざして何度も注意すると、子どもは大きなストレスを抱え、さらにゲームに依存してしまうかもしれません。

「正しいことだから」と一方的に意見を押し付けるのではなく、子どもと会話のなかで改善策を見つけられるような環境をつくることも、家族の接し方のポイントです。「心配しているよ」ということが伝わるよう、言葉がけを工夫しましょう。

コミュニケーションを大切にする

ゲーム依存症の子どもは、「家庭内での居場所」で悩んでいるケースも少なくありません。まずは家庭内に居場所があることを伝えるために、コミュニケーションを大切にしましょう。

日常的な会話が増えれば、ゲーム依存に関しても話し合いがしやすくなります。

子どもの「好き」に興味を持つ

ゲームで遊んでこなかった親世代の場合、そもそも「なんでそんなものが面白いのか」などと否定的になってしまいがちです。しかし、子どもの「好き」に興味を持ち、否定しないことも、接し方で注意したいポイントだといえます。

一緒にゲームをプレイすると、「なぜハマるのか」「どこが楽しいのか」もわかってきます。子どもの気持ちに寄り添うことで、コミュニケーションをより促進できるでしょう。

ゲーム以外の活動をサポートする

学校や習い事、家族や友だちと過ごす時間など、ゲーム以外の活動をサポートするのも、家族の重要な役割の1つです。ゲームに依存する子どもは、現実の生活が充実していないと感じていることも多いので、ゲーム以外のことに興味が持てる、楽しめるような環境づくりも心がけましょう。

ゲーム以外の時間に充実感や満足感が得られれば、ゲームから自然と離れていける可能性も高くなります。

少し遠い未来を想像して行動する

ゲームに依存している状態の我が子を目の前にすると「現状を変えなければ」と焦ってしまうかもしれませんが、少し遠い未来を想像して行動することを意識しましょう。たとえば半年後、1年後に依存状態を抜け出し、学校や家庭内でどうなっていてほしいかを考えると、そのために「いま、何をすればよいか」が少しずつ見えてきます。

子どもとコミュニケーションが円滑にできるようになったら、一緒に先の未来について話すと、子どももより具体性を持って、ゲーム依存症改善のための行動を起こせるのではないでしょうか。

状況に応じて治療機関に連れて行く

深刻なゲーム依存症の場合は、専門の治療機関に連れていくことも視野にいれましょう。治療機関に行けば、1人ひとりの症状や依存度に合った治療方法を提案してもらうこともできます。

ゲーム依存症の支援団体に相談するのも、選択肢の1つです。依存症は本人だけでなく、それを見守りサポートする家族にとっても、深刻な問題だといえます。家族の心もケアしてくれる団体、機関に相談すると、接し方を見直したり、心に少し余裕をもって子どもを見守れる環境を作ったりできるかもしれません。

ゲーム依存症かも?と思ったら家族ができること https://webun.jp/articles/-/478139

ゲーム依存症克服には家族の接し方も大切!依存に陥らないための予防も検討しよう

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ゲーム依存症を克服するためには、家族の接し方が大きなカギとなります。子ども本人や、居場所であるゲームを否定するのではなく、改善のためにどうしていけばよいのかを一緒に考えられる環境を作ることが大切です。

ゲーム依存症になると、症状の改善は簡単ではなくなります。依存症にならないために、ゲーム時間やゲームの使い方について話し合い、年齢に応じた管理を保護者が行うことは、事前の予防として有効です。

わが家でも「見守りSwitch」アプリを活用し、ゲームの頻度や時間は割と厳しく管理しています。小2と年長なので素直に約束を守れるのかもしれませんが…(笑)。ゲームの時間については非常に大きなトラブルになったことはなく、Switchは「毎日頑張ったご褒美」的な立ち位置で、活躍してくれています。

私自身、あまりゲームをするタイプではありませんが、「ゲーム=悪」ではないことを理解しなければという気持ちで、子どもがゲームとうまく付き合える環境作りを日々模索中です。

ゲームが子どもの生活をより豊かにしてくれる存在になるよう、子育て中のママは一緒に頑張りましょう!

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

大学・大学院にて日本語学を専攻し、修了後は日本語学校に非常勤講師として勤務。2018年よりウェブライターに転身し、さまざまなメディアで記事を手がける。2人の子を持つ「ママライター」として、日々育児に仕事に奮闘中。

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