今から5年前のことです。オープンしたばかりのショッピングモールに、私と夫、それに5歳の息子と2歳の娘の4人で出掛けました。自宅から車で片道3時間もかかりますが、到着すると、とにかく広くて新しい巨大ショッピングモールに一同大興奮。しかし、そんな大人でも迷いそうな環境で、息子が迷子になってしまいました。
家族で巨大ショッピングモールへ!
地上8階、地下2階建てのそのショッピングモールは、どこを歩いても人でいっぱい。こんな所で迷子になったら大変です。夫は娘を抱っこし、私は息子の手を握って歩きました。
まず私が行きたかった洋服店に向かうと、オープンセールをしていました。私は買い物熱が一気に高まり、一心不乱に服を探しました。
夫や子どもが
「そろそろいいのでは?」
「お母さん、まだ?」と退屈そうにしていても、お構いなし。子どもたちには
「あとで、おもちゃ屋に連れて行ってあげるから!」と言い聞かせて、私のショップ巡りは続きました。
およそ2時間後、ようやくおもちゃ屋へ。私の買い物に付き合わせたおわびに、1個ずつ好きなおもちゃを買ってあげることにしました。
娘が選んだのは、1,000円程度のぬいぐるみ。息子が選んだのは、何と1万円を超えるラジコンカーでした。さすがに高くて買えません。私は
「ごめんね、他に欲しいおもちゃはない?」と聞きました。
すると息子は顔を真っ赤にして、
「これが欲しい!」と主張します。私は安価なラジコンカーを見せて
「これもかっこいいよ」と言ってみましたが、全く眼中にないといった様子です。
時計を見ると、午後1時過ぎ。夫が
「とりあえず、昼ごはんにしよう!」と娘のぬいぐるみだけ購入し、フードコートへ向かいました。
一瞬で息子がいなくなり…
長時間歩いて、家族全員疲労困憊(こんぱい)でしたが、息子は大好きなオムライスを食べ、すっかり機嫌を直していました。
その様子を見て、私は
「息子のおもちゃは、何もここで買わなくてもいいかな」と考えました。そして寝てしまった娘をおんぶして、夫と一緒に食べ終わった食器を下げに行きました。
席に戻ると、たったちょっとの間しか目を離していないのに、息子の姿がないのです! まだ遠くには行っていないはず! 夫と私は近くのショップを懸命に探し回りましたが、息子は見つかりません。
探すこと15分、迷子の館内放送を頼もうとした時でした。
「迷子のお知らせです。○○からお越しの○○君~」と、息子の名前が呼ばれたのです! その瞬間、私は緊張の糸が切れて涙が出てきました。
息子の行動とは
急いでインフォメーションへ行くと、息子が目を真っ赤にして立っていました。私は思わず
「どこに行っていたのよ!」と怒鳴ってしまいました。すると息子は
「おもちゃ売り場が、どこにあるか分からなかったんだもん」と泣きだしたのです。
どうやら、あのラジコンカーを諦めていなかったようです。それにしても、誰が迷子の館内放送を頼んだのでしょう。不思議に思い
「誰かに連れてきてもらったの?」と聞くと、息子は首を横に振りました。
「ぼくが、お店の人にお願いした」
「えっ!?」と、私も夫も驚きました。こんな場所で迷子になったら、泣くことしかできないと思っていたのに、きちんとお店の人に事情を説明できたことに、私は感心しました。
夫が
「今日は買ってあげるか…」と一言。私も同じ気持ちでした。
帰りの車内、息子は欲しかった高級ラジコンカーをしっかり胸に抱き、終始ご満悦なのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/伊藤優香)