小学5年生の頃、院内感染で罹った「髄膜炎」。待っていたのは、背骨が抜き取られるような恐怖感の「腰椎穿刺(ようついせんし)」でした。
顔面神経麻痺で入院
忘れもしない小学5年生の秋。私は、「顔面神経麻痺」という病気を患い、1カ月ほど入院することになりました。病気のイメージが沸きにくいかもしれませんが、ある日突然右半分の顔の感覚がなくなり動かなくなりました。針を刺しても何も感じず、ストローでジュースを飲もうとすると全部口の端からこぼれてしまうという体験は、私を混乱させました。
しかも、私の場合は原因不明。何らかの細菌やウイルスが神経を破壊するらしいのですが詳しくはわかっていないそうです。
禁断のテレビルームで感染したのは…
医者からは
「部屋から出ないでね」と言われていましたが、能天気な私は顔が動かないだけで他はいたって元気なので、よく病棟内を散歩していました。看護師さんに会うと怒られてしまうので、午前中の忙しい時間に目を盗んで出かけるのが定番でした。
お気に入りは、小児病棟内に唯一テレビがある通称「テレビルーム」で小さな子たちと遊ぶこと。歌のお姉さんのようにわらべ歌を歌ってあげていました。病気やケガでお母さんたちに会えない彼・彼女たちはいつも寂しそうでした。しかし、それが間違いだったのです。後から知るのですが、私は「ステロイド剤」を処方されていて、免疫力が低下していたのです。そして、どこかで「髄膜炎」に感染してしまったのです。
背骨を抜き取られる?! 恐怖の腰椎穿刺
ある日熱を出した私は、はじめて「首が凝る」という感覚を覚え、何気なくお医者さんにそのことを伝えました。すると、彼は顔色を変え念入りに私の肩から首を触り、慌てた様子で、髄膜炎の検査のための「腰椎穿刺」の準備をしました。
この検査、読んで字のごとく腰椎、いわゆる腰骨に注射を打つのです! エビのように丸くなった姿勢で後ろから【麻酔の注射】→【髄液採取の注射】と2本の注射を打ちます。1本目は骨に極細い針を刺すのですが、これが痛いのなんの。
「麻酔がこんなに痛いって本末転倒じゃない?!」って今だったら突っ込みたくなってしまうような痛さでした。そして、2本目が何とも言えない感覚で、麻酔のおかげで痛みはないのですが
「背骨が抜き取られる!」と叫びたくなるようなものすごい吸引力を感じるのです。看護師さんは、
「大丈夫よ~」と慰めてはくれますが、何をやっているのか見えないので不安で仕方がありませんでした。
次の日からは痛みとの闘い
検査当日は、その後の痛みはなかったのですが、次の日からは麻酔が切れたのでしょう、頭痛と腰の激痛に襲われました。特に腰の痛みがひどかったのですが、「病気じゃないから」という理由で痛み止めも出してもらえず(もしかすると病棟内を散歩した戒めだったのかもしれません)、3日間45度以上腰が伸ばせなくなり、トイレに行くのも一苦労でした。4日目以降、徐々に腰が立つようになってきて「お医者さんの言うことは守ろう」と身に染みてわかったのは言うまでもありません。
その後、髄膜炎は薬ですぐに治り、顔面神経麻痺は完治はせずとも改善し、リハビリで様子を見ていくという形で落ち着きました。入院生活はもちろん楽しいものではありませんでしたが、あの時に両親が毎日お見舞いに来てくれたことはいい思い出です。兄弟の多かった私にとって両親を独り占めできた唯一のひと時でした。
まぁ、二度と腰椎穿刺は嫌ですが…。
(ファンファン福岡公式ライター/Hoshi.ma.k.a東京ビッグブッダ)