「部活未亡人」という造語を、ご存じでしょうか? 旦那が教職で、授業のない放課後や週末も、部活に拘束されることで、めったに休日がとれず、自宅のことは妻にまかせっきり。
まるで旦那に先立たれてしまったかのように、ワンオペで育児に奮闘する妻を「部活未亡人」というそうです。
働き盛りで多忙な旦那を持つ人であれば、教職でなくとも共感してしまう「部活未亡人」の生活。そんな生活を変えようと立ち上がった女性がいました。
中学教員の旦那を持つ友人は、まさに「部活未亡人」。年配教員に比べると、30代の旦那はまだ若手扱いで、体力もあるため、2つの運動部の顧問を兼任していました。そのため、放課後は部活の練習に付き合い、部活が終わってから、授業や試験の準備をするため、毎日深夜に帰宅。 さらに週末は、2つの部活が交互に試合を組むため、毎週末、試合の付き添いに駆り出されています。
土曜日はほとんど部活で、日曜日に休めるのは月2回ほど。土日連休をとれるのは、二ヶ月に一度という有様でした。 こうした生活は、旦那が20代で教員になってはじまり、デートの予定が部活でつぶれてしまうことも、何度もあったのです。
結婚前、彼女はそんな生活に不満を感じていましたが、
「彼は、生徒のために仕事を頑張っているんだから、私も応援しなくちゃ…」と我慢していたそう。
結婚後、二人の子どもに恵まれ、ワンオペで育児と家事に奮闘し、産休育休が終わって、彼女自身の仕事もはじまった時、平日はもちろん、休日まで不在の旦那に対し、徐々に不満が蓄積していきました。 彼女の願いは、夜は家族揃って夕飯を食べ、週末は家族でお出かけする些細なもの。
ですが、部活に忙殺される旦那は、生徒のフォローに追われ、自分の子供にほとんど関わっていないのでした。 数年前の夏のこと。彼女は、旦那の仕事スケジュールを見て愕然としました。 旦那の夏休みは、お盆休みの3日間だけ。その他の土日は、部活の合宿や試合、練習で埋め尽くされていたのです。
「運動部の顧問を掛け持ちするなんて聞いたことない!家族がいるんだから、部活の顧問を頼まれたからといって、安請け合いしないで」と訴える妻。
「部活とはいえ仕事だろ。生徒のためによかれと思って引き受けているんだし、教員として当然のことだ!」と妻の言葉に聞く耳をもたない旦那。 何度も話し合う内に、部活は夫婦の間でタブーの話題になっていきました。
そしてその秋、旦那の職場が主催する、家族同伴のバーベキュー大会が開かれることになりました。
このバーベキュー大会は恒例でしたが、彼女はまだ参加したことがなく、旦那の同僚やその家族にも会ったことがありませんでした。 彼女は、内心「他の部活未亡人に会えるかも…?!」と思って出かけたところ、彼女と同じように、旦那が部活に専念するあまり、家族をないがしろにしていると怒る妻が、4〜5人いたのです。
バーベキュー大会で初めて顔を合わせたとは思えないほど、盛り上がった「部活未亡人」の妻達は、その場の勢いで「部活未亡人の会」を結成し、生活を変えるため、学校側に働きかけることにしました。
部活で休日が潰れたら、何時から何時まで部活だったのかをメモ。 勤務時間外にどれだけ部活に時間を費やしているのか、「部活未亡人の会」のメンバーは旦那のスケジュールを詳細に記していきました。
旦那の学校では、休日に部活に付き合うと、1日数千円の部活手当がつきますが、勤務時間で部活手当の金額を割ると、最低賃金の時給を大幅に割り込むほど、激安だということも分かりました。
そして、翌年のはじめに、「部活未亡人の会」のメンバーと学校側の話し合いが始まることに。 結果は、「部活未亡人の会」の大勝利!
旦那の学校では、年齢や独身既婚関わらず、運動部の兼任顧問はなくなりました。 活動が盛んな運動部の顧問は、1つの部活のみを専念。部活を兼任する場合でも、放課後のみ活動している運動部と、活動がそれほど盛んでない文化系の部活を担当するように、変更されたのです。
その後、彼女の旦那も、運動部1つの顧問になりました。二ヶ月に一度だった休日は、週1回に改善。 家族の時間が増えたと、彼女は嬉しそうに教えてくれました。
(ファンファン福岡一般ライター)