私は、保育士として大規模保育園で働いています。保育園はさまざまな行事があり、子どもも、保育士も日々頑張っています。なかでも力が入るのはお遊戯会。そんなお遊戯会の本番を、翌週に控えたある日。保護者から常識はずれな要望があり…?
お遊戯会 年長組の特別ルールとは
保育園では秋になると運動会があり、それが終わるとすぐに歌、劇、合奏を披露するお遊戯会の練習が始まります。保育士も一年のうちで最も力が入る行事です。
保育士はそのクラスに合った構成を考え、一人ひとりに合った役柄も考えなくてはなりません。限られた時間の中で子ども、保育士も一生懸命、練習に励みます。
本番が近くなると、まず園長先生のチェックが入ります。必要に応じて修正し、リハーサルを迎えます。そして、いよいよ本番へ。子どもはワクワク、保育士はドキドキしながら、体調に気を付けながら過ごします。
私の保育園では、年長組に限って特別なルールがあります。本番のお遊戯会を欠席した場合も、その子のために別日に、全員で本番同様のお遊戯会を行うのです。
これは年長組にとって最後の行事になるため、やむを得ない理由があった場合に限り対応してくれるというものでした。
保護者からありえない要望が
ある日のお迎えのときでした。
「先生~! 来週、旅行に行くのでお遊戯会お休みしますね~」と笑顔で言う保護者が。さらには
「今度の私の休みに、振り替えてもらってもいいですか~?」あまりにも勝手な言葉に唖然としました。その保護者は、当たり前な様子で、終始笑顔です。
正直「ありえない…」と思いましたが、私は
「ちょっと園長先生に確認してみます」 と告げ、職員室に向かいました。
園長の回答は?
園長先生がやってくると、その保護者は
「先生~ 旅行に行きたいのでいいですよね~? 予約がなかなか取れなくて、やっと取れたの~!」と言います。園長先生は少し沈黙しましたが
「わかりました。いいですよ」と答えました。保育園側としてはそう言うしかありません。
「じゃあ、○日にお願いしますね!」と振替日も勝手に決めて、保護者はさっさと帰ってしまいました。保育園の都合も考えず、いつでもいいと思っている保護者に開いた口が塞がりませんでした。
後日、その保護者のためだけのお遊戯会が行われましたが、子ども達はみな、舞台に立てることが嬉しくて楽しそうでした。
その保護者はというと、感謝の言葉もなく当たり前かのように帰って行きました…。
保育士は今やサービス業になっている
保育園としては、体調不良などやむを得ない事情で最後の行事に参加できないのはかわいそうだからという思いから始まった配慮なのですが、勘違いしている保護者がいるようです。
別の日に見せてもらうということは、本番での臨場感を味わえない代わりに貸し切り状態です。場所取りに苦労しなくてもいいし、ビデオ、写真は自由に移動して他人を気にせず撮ることができます。
でも保育園は、ただ何回も本番をやるだけではないのです。保育士の配置、ホールの調整、他のクラスの調整などさまざまな用意があります。
常識がない行動は、本当に迷惑だと思いました。最近、そのような事に限らず、要望があれば次々と訴え、クレームもとても多くなりました。集団生活ですし、保育士の人数は限られています。保育士の立場としては、保護者に節度ある行動をお願いしたいものです。
(ファンファン福岡公式ライター / まむ★やちみ)