春は、別れと出会いの季節。数年前、わが家の6歳になる娘も3年間通った幼稚園を卒園しました。娘の卒園式が近づくほどに寂しさが募り、自分でも意外なほど、幼稚園最後のお弁当に、気合が入ってしまったのですが…。さて、どうなったのでしょう。
幼稚園最後のお弁当
3月のある日、娘が幼稚園から帰ってくると
「お弁当は、あと5回なんだって!」と言いました。娘の通う幼稚園では、週2回の給食とお弁当の日があります。入園当初は、たった2回のお弁当が負担で、全日給食の幼稚園や保育園が、どれだけうらやましかったことか。何をお弁当に入れたらいいのか見当もつかず、朝5時に起きて、1時間もかけて小さなお弁当をこしらえていました。
最初は試行錯誤で苦痛だったお弁当の日も、だんだんと慣れていくうちに、上手に手を抜くコツも覚えました。朝からおかずを全部作らなくても、前日の夕飯をお弁当用にアレンジしたり、作り置きを活用したりすれば、朝はお弁当箱に詰めるだけで時間がかからないことも分かってきました。
3年間、お弁当を作り続けるうちに、冷めてもおいしいおかずを作れるようになり、1時間かかっていたお弁当作りは、15~20分に短縮できるようになっていきました。そんな幼稚園のお弁当作りが、もうすぐ終わってしまうなんて…。小学生になると、全日給食になるので、娘のためにお弁当を作るのは、年数回に激減することでしょう。
途端に寂しくなって、
「これからのお弁当は、娘ちゃんの食べたいものを入れよう! 何が食べたい?」とリクエストを聞くことにしました。 ウズラの卵を入れたハンバーグかな? わが家のオリジナルの冷めてもおいしい唐揚げ? ホワイトソースから手作りしたグラタンも絶賛だったよね。
これまでお弁当に入れて、
「おいしかったぁ!」と完食してくれたメニューが走馬灯のように浮かびます。ところが、娘は少し考え込んで、パッと笑顔になってこう言ったのです。
娘のリクエストとは?!
「占いが書いてあるカップ入りのグラタン! 隣の席の〇〇ちゃんが食べてたの、私もたべたーい!」
なんと娘がリクエストしてきたのは、冷凍食品だったのです。3年間、なるべく手作りのお弁当にこだわってきて、冷凍食品を使ったのは、たった2回だけ。それも体調不良の時期で、台所に立つことが出来ず、冷凍食品の唐揚げを詰めたのですが、「手抜きしてしまった~!」と罪悪感に襲われて、その後は使っていませんでした。
まさかラスト5回のお弁当で、冷凍食品をリクエストされるとは思わず、
「えー!! ママの作った料理より、占いカップのほうがいいの?」と本音が出てしまいました。すると娘は、すまなさそうにこう言ったのです。
「ママのお弁当、おいしいよー! でも〇〇ちゃんが、食べ終わった後に占いが出てくるカップを見て、みんなで盛り上がったの。私も見せっこしたいな~」
幼稚園最後のお弁当と意気込むあまり、お弁当を食べる娘自身が、食べたいと言っているものを全否定してしまうところでした。手作りにこだわっていたのは、私の好みであって、娘が冷凍食品を食べたいと言うのなら、それでもいいじゃないかと思えたのです。
そこで、幼稚園最後のお弁当の日は、娘の大好物のフルーツサンドと、リクエストされた冷凍食品の占いカップ入りのグラタンにすることにしました。
そして後日談ですが、幼稚園最後のお弁当の朝、気合いを入れてお弁当を作ったものの、起きてきた娘が開口一番
「気持ち悪い…」とダウンしたのです。結局、その日は幼稚園を休む羽目になりました。
「最後のお弁当だったのにー」とガックリしたものの、昼頃には体調が回復し、娘が
「おなかすいた。お弁当を食べたい」と言うので、おうちでお弁当を食べることに。
「わぁフルーツサンド大好き♪ このグラタン食べてみたかったの。モグモグモグ…占いは…『好きな人と話が合います』だって~!」
幼稚園最後のお弁当を、お友達と一緒に食べることはかないませんでしたが、ニコニコ笑いながら、お弁当を食べる娘の姿を、目の前で見ることができたのでした。
(ファンファン福岡一般ライター)