「ギャングエイジ」とは小学3、4年生の子ども達の発達に現れる特徴の一つのこと。親や先生よりも友達との関わりを重要視し、友達からの影響を受けるこの時期は、子どもとの接し方で悩む親も増えてきます。ギャングエイジの特徴やイマドキの子ども達のトラブル例から親の上手な関わり方を元保育士が考えてみました。
ギャングエイジとは?子どもみんなが通る道なの?
「ギャングエイジ」という言葉だけを聞くと、一見怖そうなイメージがありますよね。反抗期の子ども達のことかな?と思う人も多いでしょうが、実はただの反抗期ではなく小学3、4年生の9歳~10歳頃に見られる特徴的な行動をする子ども達のことを指します。
この時期は親や教師よりも友達が第一、複数人のグループを作り集団で行動するようになる姿が多くみられるように。大人からの意見よりも友達を尊重することで、親や教師など身近な大人達へ反抗することも増えてきます。
文部科学省が提示している「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」の中では、ギャングエイジについて“集団の規則を理解して、集団活動に主体的に関与したり、遊びなどでは自分たちで決まりを作り、ルールを守るようになる一方、ギャングエイジとも言われるこの時期は、閉鎖的な子どもの仲間集団 が発生し、付和雷同的な行動が見られる。”と述べられています。(参照:3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題:文部科学省 (mext.go.jp))
ギャングエイジの行動がないのも心配?
ギャングエイジ特有の行動は、成長過程の一つとはいえ、すべての子に当てはまる行動なわけでなく、あるからよい・ないからダメなわけではありません。集団で遊ぶのが苦手な子や一人遊びが好きな子もいるでしょう。友達との関係が希薄だと社会性が身につくのかなど親も違った心配があるかと思いますが、大人の関わり方次第で十分ケアできるようになります。
仲間の意見に流されやすいこの時期、いい方にも悪い方にも進みやすいので親の関わり方が大切になっていきますね。
ギャングエイジの特徴
ギャングエイジ特有の行動にはどんなものがあるのでしょうか。この時期は同性同士で集団グループを形成することが多く、男の子と女の子それぞれの集団によって少し行動に違いも見られます。それぞれの特徴をみていきましょう。
親への反抗は男女共にみられる
男の子・女の子どちらの集団にも見られるのが、親よりも友達の意見を尊重し、友達間でのルールを大事にすること。家での約束事や学校・社会のルールよりも自分たちが作った独自のルールを大事にし、時には親や教師に反発する姿が見られます。
家の中では良い子なのに、外で友達と一緒になると普段守れているはずの約束事を破ってしまったということも。集団になると気が大きくなり、皆やっているからという気持ちが強くなる現れの一つです。
言葉使いや物の使い方も乱暴になることが。友達間で流行っているしゃべり方を教師や大人へも使用してしまい、学校で注意されたり親子喧嘩の原因にもなります。
女の子グループの特徴
女の子同士のグループは、男の子に比べて少人数で形成されることも多く、よりその集団内での絆を大事にする傾向が。さらにグループ内でも気が合う子同士でさらに分裂することもあり、仲間外れやいじめにつながるトラブルも出てきます。
ギャングエイジの年頃は、友達との交換日記や手紙のやり取りなども増え、親や教師には内緒の秘密を共有することでより結束を高めるように。大人が子どものけんかや悩みに気づきにくいというのも特徴です。
自我が芽生えるこの時期は、これまでは幼稚園が一緒だったから、クラスで席が隣だったからなどきっかけで友達と仲良くなっていた女の子ですが、すこしずつ自分と趣味嗜好が似ている子と仲良くなるように。社会性や協調性を身に着けている成長の証でもあります。
男の子グループの特徴
ギャングエイジの時期は、男の子同士のグループの方が周りからみても行動が分かりやすく、問題が起きた際にも親や教師が対応しやすいという特徴があります。いつもの仲間で集まると気が大きくなり、公園やお友達のお家でのルールを守れずハメをはずしてしまい、怒られることもしばしば。
グループ内での格差が出やすいのも男の子の特徴。力関係に敏感になるため、リーダー格の子が主導権を握り気が弱い子へ指示をしたり、人を使って悪さをするという問題も出てきます。
ケンカやトラブルが起きても女の子より後にひかず、次の日にはすぐ仲直りできるパターンも。しかし、いつまでも仲直りできていないときや、だれか特定の子を仲間外れにしている場合などは大人の介入も必要になるでしょう。
令和のギャングエイジのトラブル
「ギャングエイジ」という言葉は、アメリカの社会学者フレデリック・ミルトン・スラッシャーによって提唱されたものです。1927年に「The Gang」という少年集団を研究した代表的な著作を残しています。
それから100年近くたった今も、子どもの発達重要な事項として挙げられおり、保育学科や教育学部などで発達心理学を学ぶ際にも、ギャングエイジは学童期の発達段階のポイントとして取り上げられています。
歴史が長いギャングエイジですが、社会的背景や教育・家庭環境の多様化により、ギャングエイジのトラブル例は年々変化しているのです。
ギャングエイジの遊び場がない?!
一昔前は、小学生は放課後広い公園で集合。いつものグループで集まって、男の子なら、野球やサッカーをしたり、女の子なら公園の遊具や大縄跳びで遊ぶ姿が多くみられました。しかし、近年放課後子ども達が思い切り体を動かして遊ぶ場所が減ってきてしまっています。
公園ではボール遊び禁止の張り紙があったり、近所から騒音の苦情がでたりと子ども達の行き場がない地域も増えているでしょう。
遊び場がないから、友達の家にたまったり、駄菓子屋がないのでコンビニやショッピングモールなどの繁華街で遊ぶ集団もでてきて、それがトラブルや非行問題へつながる恐れを高めています。
SNSを使用したトラブルが急増中!
2023年2月のNTTドコモモバイル社会研究所によると、小学生高学年の携帯電話の所持率が37%と過去最高を更新。特にギャングエイジの行動が見られる小学4年生あたりからは、キッズケータイからスマートフォンへ移行する子も多くなり、それに合わせてインターネットやSNSを使い始める子も増えてきています。
中でも特に問題になっているのがLINEを使用したトラブル。グループLINEでの悪口や仲間外れ、特定の子をはずしたグループLINEをさらに作って悪口をいったり、秘密の約束事をするなどの問題が出ています。
家庭内でスマートフォンやタブレットの約束事を決めていても、時間を守らなかったり、設定を勝手に変更して使ってしまったという事例も。
(参照:【子ども】スマホ所有率小学5年生で半数、中学2年生で8割を超える(2023年2月16日) |レポート|NTTドコモ モバイル社会研究所 (moba-ken.jp))
わが子のスマホやゲームの使い方で悩んでいる親も多いでしょう。ギャングエイジのこの時期こそ、きちんと親子間で話し合って正しく安全に使えるよう話したいですね。
ギャングエイジの子どもへの親の関わり方
ギャングエイジの行動がわが子に見られるようになると、成長過程とはいえ親も心配ですよね。反抗的な態度をとられると思わずイラっとしてしまうこともあるでしょう。しかし売り言葉に買い言葉ではより親子関係も悪化してしまいます。冷静に対応できるよう、どのような関わり方をすればよいかあらかじめ知っておくとよいですね。
普段の会話から友達関係を把握しておく
幼稚園・保育園や小学校低学年の内は、子どもの友達関係も親の分かる範囲内におさまっていることが多かったですね。しかし、ギャングエイジの時期になると、もう子どもは自分たちで友達の輪を広げ、友達を自ら選んで作るように。トラブルが発生してから、子どもの交友関係に気づいたという場合も多いようです。
根掘り葉掘り聞かれるのも嫌がるこの時期。ご飯を食べながらでも、一緒にTVを見ながらでも何気ない時に友達の話を聞いてみてください。ここで、注意したいのが子どもが大切にしている友達の悪口を親がいわないこと。否定から入られると、親はわかってくれない!と心を閉ざしてしまう子もいます。
まずはいつも遊んでいる子が同じクラスかな?近くに住んでいるのかな?など基本的な情報はいれておきたいところ。子どもが楽しそうに友達の話をしてくれたら、面白い子だね!などと共感してあげるのも大切です。
子どもの些細な変化を見逃さない
毎日楽しそうにしていた子が、学校に行きたがらない、友達の話をしなくなった時には何か悩んでいるサインかもしれません。
必要以上にものを欲しがったり、「なんでうちはだめなの?」「みんなそうだよ」などの会話がでてくるなどもギャングエイジの行動が現れる前兆かもしれません。
言葉使いや物の扱いが雑になってきたなど表情・言動の変化を見逃さず子どもの様子を変化にすぐ対応できるようにしておきましょう。
感情的に叱らず抑圧しない
子どもが悪いことをしてしまった時や、ルールを守らない時はもちろん親はしっかりと叱らなければなりません。ただ、感情的に怒鳴るなどではなく、どうしてしてしまったのか、それがダメなことだと気づいていたかなど、落ち着いてまずは話を聞いてあげましょう。
とはいえ、親も人間。あまりにもしかることが続くときはイライラしてしまいますよね。そんな時は、親だって嫌な気分になるし、傷付くこともあることを伝えてみては。相手の気持ちを伝えることで、人の気持ちを考えられる子になるでしょう。
時には見守ることも大切
ギャングエイジの行動は大人からみておやっ?と思うことでも、子どもだけで解決できることも多々あります。友達と話し合いをしていくなかで、社会のルールを学び、協調性や社会性を養っていきます。時には成長過程の一つとして見守ってあげましょう。
大人からみて、「おやっ」と思うような流行言葉や話し口調で盛り上がっている場合もありますね。それが人を傷つけるものでないなら友達間の使用は見守ってみるのも一つ。ただ、目上の人や大人と話す際には正しい言葉使いをできる様にきちんと伝えるのも大切です。
あまりに度が過ぎる時や行動がエスカレートしそうな時は親の加入が必要です。学校内での問題などで親だけではどうしようもない場合、学校側に相談するのもあり。
家族間のルールは定期的に確認を
門限の時間や、ゲーム・スマホの使用方法などは各家庭でルールが異なります。友達はいいのになぜうちはだめなのか?なども口癖のように言ってくるのがギャングエイジ。約束事をする際には、ダメな理由やこんな犯罪に巻き込まれる可能性があるなど具体的に子どもが納得するように話してあげてください。
親だけで決めるのではなく、子ども自身の考えも聞きながら我が家のルールを一緒に決めていくのもよいでしょう。
また、子どもの成長にしたがって約束事などは定期的に話し合い必要があれば見直すことも。母親、父親がきちんとルールを共有することで家族間のブレも防止されます。
どんな時でも親は子どもの味方ですね。叱ることがあっても、いつも見守っていること、大切に思っていることをきちんと伝えてあげましょう。
ギャングエイジは大人への階段である
あんな小さくて可愛い赤ちゃんだった子も、ギャングエイジと呼ばれる時期になったとは。成長の速さに驚く一方、親の悩みは増えていくばかり。しかし、今回述べたようにギャングエイジはただの反抗期ではなく子どもが大人への階段を上る大事な過程なのです。
危険な事に直面したり、誰かを傷つけたり傷つけられたりする場合には、その都度しっかりと話をしていけないことはいけないと伝えることも大切。時には優しい目で子ども達の成長をみまもってあげてくださいね。