箸を正しく使いこなせない、食事中に立ち歩く、口を開けてくちゃくちゃしながら食べるなど、子どもの食事中のマナーについて、保護者や学校の先生が何度注意しても改善しない…なんてことはありませんか? 食事中のマナーは単に振る舞いとして必要になるだけでなく、社会性を身につけたりコミュニケーションのツールとなる大切なもの。今回は子どもの食事中のマナーについて、どう教育していくべきなのかを2人の娘を育児している管理栄養士が解説します。是非参考にしてみてくださいね。
なぜ守れない? 食事中のあれこれ
子どもが食事中のマナーを守れない理由は多岐にわたりますが、原因として発達段階や環境、教育の方法などが関係しています。これらに配慮しつつ、ポジティブな方法でマナーを教えることが大切です。
ここでは、子どもが食事中のマナーを守れない理由について詳しく解説していきます。
発達段階
幼児は自己制御が未熟なため、長時間静坐すること自体が困難です。その集中力は、年齢プラス1分ともいわれています。そのため、根本的に食事中にじっとしていることが難しいのです。また、小さい子どもにとっては食器や食具を使うことや食べる速度を調節したり、咀嚼をきちんをするということは、まだ発達していない運動技能を要求されるため、食事のマナーを守ることができないことがあります。
目安として3歳になるころまではマナーをしつけても、理解することが容易ではないため、無理に教えようとするのはやめましょう。3歳のころまでは、食べることの楽しさを教えることが大切です。
環境の影響
家庭や学校など、周囲の環境も子どものマナーに影響を与えます。マナーの守られていない環境で育つと、子どもはそれを正しいと認識し、模倣としてしまう恐れも。逆に、マナーを重んじる環境では、良好な食事マナーが自然と身につくことが期待できます。
そのためにはまずは大人が手本として食事マナーを身に着けることが何よりも重要です。親が模範となり、一緒に練習することで子どもは楽しく学ぶことができます。
教育の方法
食事のマナーの指導方法が、子どもにとって理解しやすく、実践しやすいものでなければ、マナーを身につけることが困難です。例えば、マナーを強制するだけでなく、なぜその行動が必要なのかを説明し、子どもが自発的に学びたくなるような環境を提供することが重要です。
食事のマナーは、社会生活においても大切なスキルのひとつ。日々の食事の中で、大人としてできることをひとつずつ実践していくようにしましょう。
個人差
また、子どもには個性があり、何に対しても興味を持ちやすい子、集中しにくい子などさまざま。興味や注意が食事のマナー以外のことに向かってしまうと、マナーを守ることが後回しになりがちです。子どもに合わせて親が根気よく向き合う必要があります。
基本的な食事のマナー
食事のマナーは、単に「きちんとした振る舞い」をすること以上の意味を持ちます。それは社会性や他者への配慮、感謝の気持ちを示すための行動として、子どもたちの人格形成にも影響を及ぼすでしょう。
また、食事のマナーは家庭内外でのコミュニケーションの基本であり、子どもが他者との関わりの中で快適に過ごすための一環です。ここからは、基本的な食事中のマナーについて解説します。
始めと終わりの挨拶
始めと終わりの挨拶は、命をいただく感謝、食事を提供してくれる人への感謝と尊敬の表現です。食事の前に「いただきます」と表し、食べ終わった後には「ごちそうさまでした」と再び伝えます。
これは、共食する人々とのコミュニケーションや絆を強化し、食事の楽しみを高める役割も果たします。
正しい姿勢を保つ
食事中は背筋を伸ばし、適切な姿勢を保ちます。背筋を伸ばした美しい姿勢は、食事をする際の礼儀正しさを示し、他人に対して敬意を表すために必要です。また、社会的な場面での印象を良くし、良い第一印象を与えることにもつながります。他にも適切な姿勢は消化を助け、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できるのです。
特に子どもにとっては、食事中の正しい姿勢を身につけることが、将来的に良い食習慣を形成する基盤にもなるため、正しい姿勢を保つことを、親も子どもと一緒に意識するといいでしょう。
食具の正しい使用
食事中の食具の正しい取り扱いは、マナーと安全の面で重要です。そして、食事の場をより快適なものにします。マナー面では、食事のスムーズさを保ち、他人への配慮を表し、安全面では怪我を防ぎ、安全に食事を楽しむために不可欠です。
食具の適切な扱いは、特に公共の場やフォーマルな食事の場において、他者とのコミュニケーションや社会的な印象に影響を与えるため、重視するべきといえるでしょう。子どもの頃からこれらのスキルを身につけることは、将来の社会生活において役立つ重要な習慣となります。
口を閉じて噛む
口を閉じて咀嚼することは、マナー面と健康面で大切です。マナー面では、口を閉じて食べることは礼儀正しい行動とされ、周囲の人に対する配慮を示します。音を立てずに食べることは、特に公共の場やフォーマルな食事の際には重要なエチケットとなるためしっかり教えることが必要でしょう。
健康面では、口を閉じて咀嚼することで、食べ物が適切に細かくなり、消化が促進されます。また、口を開けて食べると空気を飲み込むことが多くなり、消化不良や胃腸の不快感を引き起こす可能性も。子どもの頃から口を閉じて食べる習慣を身につけることは、将来的に良い食習慣を形成する基盤となります。
食事中の適切な会話
食事中の適切な会話は、コミュニケーションと雰囲気作りに大きな役割を果たします。良い会話は、食事の楽しさを高め、食卓を暖かく和やかなものにする重要な役目といえるでしょう。共食する方との絆を深め、相互理解を促進してくれます。
また、食事の場での会話は、社交スキルを養い、特に子どもにとっては様々な社会的状況で適切に振る舞う方法を学ぶ絶好の機会。話題選びやリスペクトを持った話の聞き方、発言のタイミングなど、食事中の会話は、ただ楽しむだけでなく、礼儀やコミュニケーションスキルを身につける重要な場です。
したがって、食事中の会話は、単なる雑談を超えて、人々の関係性を育むための重要な要素となります。
食事マナー教育のアプローチ方法
小学生にとって、食事中のマナーは家庭内での行動規範から始まり、学校や公共の場での行動にも影響を与える重要な社会的スキルの一つです。この時期の子どもたちは好奇心旺盛で学習能力も高く、新しいルールや習慣を身につけるのに最適な時期と言えます。
ここでは、小学生が食事中のマナーを自然に身につけるためのアプローチ方法を解説していきます。
身近な例を示す
小学生は、視覚的な学習が効果的です。親が模範を示すことが最も重要で、食事のマナーを自然に身につけるための手本を提供します。親が正しい箸の使い方やナプキンの使い方を実践することで、子どもはそれを見て学びます。
習慣を積み重ねる
習慣は、日々の積み重ねによって形成されます。毎日の食事で一貫したマナーを守ることを奨励し、徐々にそれを自然な行動として身につけさせることが大切です。例えば、毎回の食事でナプキンを膝の上に置く、食べ終わった食器の置き方を規則正しくするなどの行動を一貫して行うことが大切です。
ロールプレイを利用する
実際に食事の場面を模擬したロールプレイを通じて、楽しみながらマナーを学ぶことができます。子どもたちにレストランでの食事シーンを演じさせることで、実際の状況を想定したマナーを教えます。
まとめ
子どもに食事のマナーを教えるには、まずは大人が身につけて手本となることが大事であることがわかりました。実際のアプローチ方法も参考に、正しい食事のマナーを教えましょう。