私は数年来、新入社員に基本的な事務仕事を指導しています。先日、入社したての男性を指導した際、彼がとった行動にびっくり仰天しました。
頼りになります! 素晴らしい新入社員の若者たち
長い専業主婦生活を経て仕事復帰した私。勤続10年で、すでに古株社員の位置づけです。
というのも、この職場は仕事の性質上、資格取得などステップアップを目指して独立する人が多いため、短い周期で社員が入れ替わるのです。20~30代前半の、私より確実に若い男女が次々とやって来ます。
明朗快活、控えめ、努力型、天才肌。タイプは違えど皆に共通しているのは、パソコンやスマホなどの情報機器やインターネットに精通している点。さすが若者!
私は毎回、彼らに基本的な仕事を教えつつ、使いづらい勤務表や、あとから探しにくい資料の保管方法など、困りごとを相談します。すると、エクセルでサッと表を作ってくれたり、ネットを駆使して適切に資料をまとめてくれたり。みんな数年後には何かひとつ素晴らしい置き土産を残して去っていきます。心から感謝!
あれ? なぜ手ぶら?
先日、20代後半の男性が入社しました。口数少なくおとなしめ。
「今日は基本的なことをひととおり教えますね」と伝えると、小さい声ながら
「よろしくお願いします」と深く頭を下げる姿は好印象。
まずは複合機の前へ一緒に移動。そのとき、私の隣に立つ彼の様子に何か違和感が…。あっ! ようやくその正体に気づきました。彼は手ぶらだったのです。
これまで指導した新入社員たちは、みんな両手にノートとペンを持ち、メモを取りながら私の話を聞いていました。基本的な内容とはいえ、1度ではなかなか覚えられないことも多いので当然です。
けれど、新しい彼は直立不動の姿勢。頭で覚える主義? 記憶力に自信あり?
とりあえず私はいつも通り説明スタート。
「この複合機はこの仕様だから、まずここを立ち上げて…」その瞬間、直立不動の彼が、突然スラックスのポケットからスマホを取り出しました。そして、画面を何やらサッと操作。
「どうしたの?」私が尋ねると、彼はボソッと
「ボイレコです」その口調は「そうですが、それが何か?」とでも言わんばかりの当然さ。なんと彼は、スマホのボイスレコーダー機能で録音を始めていたのです!
いきなりスマホで録音する行動って…
彼の突然の行動を非常識と感じるのは私だけ? 一言でいいから「録音させてください」と断りを入れてほしかった。それとも私の頭が古い?
その後、彼は神妙な表情でスマホ片手に私の説明を聞いていました。「これのここの部分」など、こそあど言葉の録音をあとで聞いても、果たして理解できるのかしら…
勝手に心配しながら、約2時間の指導は終了しました。
しばらくすると、近くの席から不思議な声が。昔どこかで聞いたことがあるような…。
それは私の声でした。新入社員の彼が、さっそくボイスレコーダーを再生していたのです。
社内にひっそりと流れ続ける私の声。他の社員たちも、
「録音した声をここで流す?!」となんだか微妙な雰囲気。けれど彼はまったく気づく様子もなく、私の声を何度も何度もリピート。
今まで多くの新入社員たちに助けられてきた私ですが、新しい彼の空気読まない行動にはさすがにイラっ。
そしてひと月も経たず、彼は
「資格の勉強に専念します」と退職。集団内で調和するのは苦手であろう彼。資格を武器に、輝く未来をつかんでほしい! 社員一同、同じ思いで彼の後ろ姿を見送ったのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/山ナオミ)