義実家は年末年始ともなれば多くの親戚が集まります。嫁である私も毎年手伝いに駆り出されていました。ある年の年末の集まり。当時2歳の娘を連れて行ったところ、親戚が見てくれていたはずの娘の姿がなくなっていて… 今思い出してもゾッとする体験談です。
親戚たちに預けられた娘
娘が生まれる前から手伝いに行っていた年末年始の義実家。娘が1歳のときまではまだ娘をおんぶしたり、すぐ近くで世話をしながら手伝っていました。しかし2歳ともなれば好奇心のままに歩き回る時期です。そんな娘をどう相手しながら手伝いをこなすか頭を悩ませていました。
そしていざ義実家の手伝い。親戚が集まってくると、娘のテンションも上がり切りで
「あっち行こう!」と急に走り出すわ、
「これなに?」と親戚のお財布やたばこを勝手に触るので、
「ダメ!」
「ちょっと待って!」と娘に振り回されっぱなしです。
それを見かねた義母が言いました。
「みんないるんだから大丈夫よ。娘ちゃんはみんなに任せておきなさい」と。確かに娘は親戚たちに可愛がられ、親戚たちも
「可愛いなぁ」
「いま何歳?」
「お話しましょ」とかまってくれています。
危なっかしい娘から目を離すことに抵抗はあったものの、「夫も娘の近くにいるし大丈夫かな」と半ば無理やり納得し、
「すみません、娘をよろしくお願いします」とその場にいた親戚たちに声をかけ、
「みんなで見てるから大丈夫よ」との言葉を信じ、手伝いに専念することにしました。
家に娘がいない!
部屋を行ったり来たりしながら娘の動向を確認しつつ、台所で手伝いをしていました。そして宴会も進み、追加のお酒を持って行ったときです。部屋に入り、さっきまでいたはずの娘の姿を探しますが見当たりません。
嫌な予感に心がザワザワしながら、その場にいた夫に
「娘はどこ?」と聞きますが
「えー? 誰かが見てるでしょ?」と酔っぱらったヘラヘラ顔の夫。慌てて親戚たちに
「娘がどこか知ってますか?」と聞いて回りますが、みんな口を揃えて
「知らない」
「さっきまで○○さんが見てた」との返事です。
自分の家と違って、義実家には仏壇のマッチやたばこなど、2歳児には魅力的かつ危険なものがたくさんあります。台所に戻って義母に
「娘を探してきます!」と伝えて飛び出すも、
「大丈夫よー。きっとそこらへんで遊んでるわよー」とのんきな返事が背中に聞こえましたが無視。どんどん焦りが加速する中、家の中を探しますが見つかりません。
義実家の敷地は広く、実際に住んでいる家の他、蔵、曾祖父が住んでいた古い家、井戸もあります。古い家に入って床が抜けたら? 井戸をのぞき込んで落ちてしまっていたら? 悪い想像は膨らむばかりです。
家の中を探しても見つからず、外に出て
「娘ちゃーん!」と叫びながら必死に探しても見つかりません。悪い想像をかき消すように走り回ること30分。一旦家に戻ろうと玄関を開けると
「あ、ママぁ」と靴を履こうとしている娘の姿がありました。
見つけた! 娘がいた場所は…
30分ぶりに見る娘の姿にその場にへたり込み、
「よかった… どこにいたの?」と聞くと、
「上だよ、ねぇ、娘ちゃんもお外いきたい」との返事。どうやら娘は義実家の2階で遊んでいて、窓の外に私の姿を発見して降りてきたようでした。
2階は義両親の寝室などがあり、上がるのはダメという約束でした。
「上行ったらダメって言ったでしょ」と言うも
「だって行きたかったんだもん」と口をとがらせる娘。「そりゃ誰も見てなかったら行くよな…」とがっくり肩を落としました。
部屋に戻るも、夫を含め誰も娘がいなくなったことを気にしていない様子。台所から出てきた義母には
「ほら、いたじゃない」と不満そうな顔をされ、私はさらにがっくり肩を落としました。「みんなで見ているから大丈夫」が「誰かが見ているだろう」に変わってしまう怖さを痛感した出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/K)