子どもに母乳をあげることは、とても母性に溢れた行為に思えますよね。私も子どもを産む前は、出産したら普通に母乳をあげるものと信じていました。まさか、自分自身が不快性射乳反射で苦しむ羽目になるとは夢にも思いませんでした。
母乳をあげることが自然?
私は完全母乳を推奨している総合病院で長男を出産しました。総合病院を選んだのは、何があっても対処してもらえそうという安心感が理由で、「完全母乳」という言葉は病院の母親学級で初めて知りました。「子どもが風邪をひきにくくなるなら母乳あげようかな」くらいに思っていました。
長男は41週になっても産まれず、陣痛促進剤を使って出産しました。3日間も陣痛に苦しみましたが無事に出産。産院の方針で、産むとすぐにお乳をあげるよう指導されますが、私は初めてお乳を吸われた時、ひたすらイライラしました。3日間不眠不休だったからイライラするのかと思いましたが、入院中もイライラは募っていきます。
母乳をあげることが不快! そんな自分に自己嫌悪
私が産院生活で最も苦痛だったのは、授乳でした。母乳をあげていると頭がざわざわし、子どもを今すぐ引き剥がしたい感覚になるのです。そして段々と悲しい気持ちになっていき、涙も溢れてきます。
母乳をあげている最中も看護師さんに
「栄養のあるお乳たくさんあげようね!」と鼓舞され、授乳中「私の人生は赤ん坊の餌なのかな?」とすら鬱々と考えていました。
自分の子どもが欲しいと思ったから産んだのに、「母乳を飲むわが子を今すぐ引き剥がしたい!」と思うことは、母親失格じゃないかと自己嫌悪に陥りました。
私は退院後も母乳育児をしていましたが、泣きながら授乳している私の姿を見て、ある日主人が
「母乳やめようよ」と提案してきました。
今も振り返って写真を見返すと、出産後の私の顔は白く、幸が薄そうな顔でした。当時のことを主人に訊いてみると、私はこの時明らかに精神を病んでいる、と感じたそうです。
母乳をやめることを提案された時、私は躊躇しました。母乳をあげていれば子どもに免疫がついて強い子になる、母乳は母親の愛情など、母乳をあげたいという思いを語ればいくらでもあります。そんな私に、主人はきっぱり
「楽しくないことはやめよう! 母乳が不愉快って症状もあるんだって!」と言いました。
私は目から鱗でした。すぐに調べてみると、「不快性射乳反射」は授乳中に苛々や不快感が募るという症状で、まさに私の状態に当てはまるものでした。私が鬱々としていた症状は、生理現象だったのです。頭の中のざわざわや、授乳中の涙もあくまで生理現象の1つだとわかると、ホッとしました。「母親失格ではない」という安心感を得ることができたように思えました。
母乳が嫌な人だっている!「不快性射乳反射」
結局、私は母乳をやめました。
母乳が出るのにあげないなんて母親失格! と自責の念があったため、やめたくても正直やめることができなかったのです。でも生理現象の1つならば、「不愉快だったらやめてもいいかな」と主人のおかげで思い直すことができました。
母乳育児が大切! ということは、未だに育児書や母親学級で言われているようですが、「不快性射乳反射」という生理現象は誰にでも起こりえます。
今では3歳の長男は、風邪をひかない強い子に成長しています。授乳時にどうしてもイライラしてしまうという人は、ぜひ1人で悩まず、生理現象であること、母乳をやめてもいいという選択肢があることを忘れないでくださいね。
(ファンファン福岡公式ライター / ナツメググ)