音楽系の大学入試に挑戦した私が、実技試験のエピソードを紹介します。私は学生のころ、ピアノの先生を目指していました。私が受験した音楽科は、1次試験は当時のセンター試験、2次試験はピアノや声楽などの実技試験のみでした。入試に向けて準備したことや入試本番のことを振り返ってみます。
実技試験に向けての準備を始める
ピアノと声楽の試験では、1曲ずつ暗譜で演奏します。ピアノは、ベートーヴェンの曲を弾くことにしました。 声楽は、イタリア歌曲を歌います。私は、高2の3学期から声楽を習い始めました。子どものころから歌が下手だったのですが、習い始めると徐々に上達することができました。 そして、先生がイタリア語の発音を教えてくれるので、簡単なイタリア歌曲も歌えるようになりました。ピアノも声楽も、数か月間、同じ曲をひたすら練習して準備します。
もう1つの実技、新曲視唱とは?
もう1つ、実技試験では新曲視唱がありました。新曲視唱とは、初見で短いメロディをドレミで歌うことです。 初見と言っても最初に数十秒間、黙って楽譜を見る時間が与えられます。自分の心の中で歌い、どんな曲なのかを把握します。そして歌い始めます。 新曲視唱のための楽譜が販売されているので、声楽のレッスンや自宅で練習して準備しました。
試験当日、他の受験生たちの演奏は聴かない!
いよいよ入試本番。最初はピアノの試験でした。数人ずつ部屋に入り、部屋の隅で座って待ちます。当然、前の受験生たちの演奏が聴こえてきて、どうしても気になってしまいます。 ですが、他人の演奏を聴いてはいけないのです。「私より上手だ…」などと考えると、焦ってしまうからです。自分の頭の中で、自分がこれから弾く曲のことを考えて集中力を高めます。 ついに私の順番になり、演奏を始めます。指が震えるほど緊張していたので、いくつかミスをしましたが、弾き終えてほっとしました。
予想外の不思議なメロディに戸惑う…
次は新曲視唱です。一人ずつ部屋に入り、楽譜を見る時間が始まりましたが、楽譜を見た私はぎょっとしました。 今まで練習してきたような、単純なメロディではないのです。明るい曲なのか、暗い曲なのかさえも判断できません。頭の中が混乱したまま、なんとか歌い終えました…。
気を緩めずに、最後の声楽試験へ
最後は声楽の試験でした。ピアノと同じように、数人ずつ部屋の隅で待ちます。 ピアノに比べると、なぜか私は人前で歌う時はあまり緊張せず、普段通りに歌えます。それでも気を緩めると歌詞を間違えたりするので、集中して順番を待ちます。 無事に歌い終えて、どっと疲れた身体でバスに揺られて帰りました。
音楽系の大学入試を終えて、結果は…
音楽系の大学入試を終え、数週間後に合格発表を見に行くと、私は自分の受験番号を見つけることができました。時間をかけて準備をしたので、嬉し涙が溢れた瞬間でした。 入学後も毎日のピアノ練習は大変でしたが、大学祭などで同級生たちと一緒に連弾したり、合唱したりする機会も多く、好きなことを勉強できる喜びを感じながら楽しい学生生活を送りました。 卒業前に手を痛めたことで、ピアノの先生になることはできませんでしたが、夢に向かって努力し続けた大学生活は、私にとって大切な人生経験となりました。 (ファンファン福岡公式ライター/南ゆりえ)