娘がある日、幼稚園でクラスの友だちから手紙をもらって帰ってきました。「お返事を書きたい」と言うので、折り紙の裏に鉛筆で書かせて翌日持っていかせることに。すると翌日また違う友だちから何通か手紙をもらって帰ってきます。
見ると、きちんとした便箋や封筒。年少組でまだ字が書けない子が多く(もちろんわが子も書けませんでした)、手紙で文書のやりとりをするというよりは”手紙を交換すること”を楽しんでいるのだと思ったのですが、中を見ると子どものミミズ文字に親が代筆してメッセージが添えられていました。中には親の文字で「お返事まっています」と書いてあるものもあったのです。 わが子が友だちから手紙をもらってくるということは初めての経験だったので、「子どもの手紙って親も一緒に書くんだ!!」とビックリしました。もしかして子どもの手紙交換って親同士のコミュニケーションの第一歩なの? であれば返事は必ず書かなければいけない! 折り紙の裏なんかじゃダメだ! そう変に気負ってしまい、娘と便箋と封筒を購入しに行きました。
それからも何人かの友だちと手紙交換は続きます。娘がミミズ文字を書いたあとに、私が何と書いてあるのか代筆する形にしました。ただ、娘がおかしなことを言うと「これ、この子のお母さんも見るんだよね」と変に考え「こういうのはどう?」など口出ししてしまいます。もはや誰から誰への手紙なのか分からなくなってきました。 そのうちに娘が「もう疲れた!」と一言。今思えば、友だちへの手紙を母親に添削されるのですから面白くないのは当然です。しかし必死になってしまっていた私は、誰のためにやってるの! と押しつけがましく思ってしまい、1人で手紙を仕上げました。 手紙の返事を書かず娘の交友関係に何かあったらどうしようという変な心配と、自分自身、他のお母さんから「返事をくれなかった」なんて思われたらどうしようという不安がありました。
手紙を交換するようになってから数日たったある日。参観日があったため幼稚園へ向かいました。 親子ペアでグループを作って待機をしていたところ、手紙のやりとりをしているAちゃん親子が隣に。「いつもお手紙ありがとうございます」と声を掛けると「こちらこそ、いつもありがとうございます。Aがいつも楽しそうにお返事書いているんですよ」とAちゃんママ。 するとAちゃんが「Aちゃんね、もう手紙書くの嫌だって言ってるのにママが書かないとダメ!って言うからママと一緒に書いているんだよ」と衝撃の一言を口にしたのです(笑)! Aちゃんママは「違うでしょ!!」と焦っていましたが、私が「実はうちも…」と言うと、Aちゃんママは驚きながらもどこかホッとした表情でした。「どこも同じですね」と2人で笑い話になりました。 それからAちゃんママと私は子どもの手紙に手を出すことは止めました。すると次第に親が関与しない子どもたちだけの手紙交換に戻り、少しずつブームは去っていったのです。きっと始めに代筆をしたママは「この字だと相手の子が読めないな」と親切に手を加えたのだと思います。もちろん代筆をすることは悪いことではありませんし、「親が書かなければいけないんだ」と勘違いをした私が悪かったのですが、子どもたちは字が読めなくても“手紙を交換すること”を楽しんでいるのだと感じました。 この4月から娘は年中組へ進級しました。クラス替えで新しい友だちができ、再び手紙交換ブームが訪れています。もちろん今回は親は加わらずに子どもたちだけの手紙交換。中を見せてもらうと、去年はひらがなを書くのが難しかった友だちが、覚えたての字を一生懸命書いてくれていて、温かい気持ちになりました。今後も子どもたちの手紙交換を見守っていきたいと思います。 (ファンファン福岡一般ライター)